→INDEX

■■■ 「古事記」解釈 [2021.5.12] ■■■
[131] 天神系は陸鳥好み
鳥話📖日本海側鳥信仰はかなりの古層の続きで、「古事記」冒頭から眺めてみた。

出雲への降臨迄、鳥になんらかの役割があるようにも思えず、「古事記」全体では鳥が結構登場する状況とはかなり違う印象を与える。

<天地初發>…鳥無

<伊邪那岐+伊邪那美>
【生~名鳥之石楠船~亦名謂天鳥船
火之夜藝速男~を生む直前の大宜都比賣~の前に位置しており、それまでは8神グループなので、付け足し的な感じは否めない。

<建速須佐之男命+天照大御~>…鳥無

 <建速須佐之男命 出雲降臨>
 <大穴牟遲~>鳥…無
 <八千矛神+沼河比賣>
 <大國主~>

<天の岩戸>
天神系にも鳥信仰のイメージは強いが、それは天照大御神再生シーンに劇的に登場するから。
【八百萬~於天安之河原~集集 而
  高御產巢日~之子 思金~令思】
  集 常世長鳴鳥 令鳴而・・・ 📖「常世長鳴鳥」こそ南方信仰そのもの

<国譲り>
経緯はわからぬが、高天原の神が葦原中国を治めることになり、その御遣いとして鳥が派遣される。八千矛神がその特徴ある鳴き声を歌に詠んでいるが、それが上記の庭つ鳥 鶏と、この狭野つ鳥 雉子である。・・・
【天照大御~高御產巢日~ 亦問諸~等
  若日子久不復奏 又遣曷~以問天若日子之淹留所由】
  諸~と思金~が答へて曰く
  「
名は鳴女の派遣が妥当。」・・・

雉譚はさらに続く。
天若日子は出雲勢力の一員になりきってしまい、雉を射殺してしまったため、その返り矢を浴び、葬儀に。天神は喪使として鳥達を起用。"河"雁としているし、鷺も基本は留鳥淡水域の鳥であり、海鳥系は含まれていない。内陸志向の葬儀次第ということになろう。
【諺・・・之頓使】
  ・・・喪屋を作り、
  
河雁を岐佐理持と、
  
を掃持と、
  
翠鳥を御食人と、
  
を碓女と、
  
を泣女と
  それぞれ定めて、八日八晩遊ばれた。


天鳥船~が主とは思えないが、建御雷~が副として、国譲りの使命を帯びて降臨することになる。
天鳥船~ 副 建御雷~ 而 遣】

ここからは、出雲の文化としての鳥の登場となる。
【大國主~言・・・
 「我子八重言代主~ 是可白
  然 爲鳥遊取魚 而 往御大之前 未還來」】
  故、天鳥船の神を派遣。
  八重事代主神を召して問う。

鹿に狩猟ではなく、射鳥釣魚が海での王権を有する貴人の祭祀的な遊びだったのだろうか。

【於出雲國之多藝志之小濱 造天之御舍】
  水戸神の孫 櫛八玉神を膳夫として天御饗を獻じた時
  禱を唱えて櫛八玉神は
と化し、
  海底に入り、底の埴を吐き出し、
  多数の天の八十の平瓮[土器]を作り・・・

鵜飼漁のイメージが採用されており、海人祭祀であることが強調されている。(日本列島の鵜飼は内陸で行われいるにもかかわらず海鵜。中華帝国のように川鵜ではない。)

国譲りが完了すれば、鳥船の出番は不要となるらしい。天浮橋から浮き島へと。
<天孫降臨>…鳥無

高天原から降臨してしまえば、海人勢力を統率することになるから、海鳥が身近な存在となろう。
<海彦山彦>
【海~之女 豐玉毘賣命 自參出白之】
  ・・・海邊の渚に羽を以って葺草として産殿を造った。
【是以名其所産之御子謂
 天津日高日子波限建鵜葺草葺不合命
【弟玉依毘賣 而 獻歌】
  赤瓊は 緒さへ光れど 白瓊の 君が装ひし 尊く有りけり
  比古遲 答歌曰
  
沖津鳥 [加毛]度久[≒着く]島に 我が率寝し 妹は忘れじ 世の事々に
真鴨は落穂好みだが、河川や湖の藻や水草を主食としており海には行くまい。有明海で見られる筑紫鴨は干潟に住む泥生動物を食べるので、食性は色々。"沖"となると、雑食性の海底生物を食べる海鴨ということになろう。そんな鳥をよく知っていると感心させられる。
海~の宮で3年過ごした結果、海佐知毘古/火遠理命/天津日高日子穂穂手見命は海の通になったのであろう。

<東征>
【高木大~之命以覺白之
  天~御子自此於奧方莫使入幸 荒~甚多
  今自天遣八咫烏
  故 其八咫烏引道從其立後應幸行
出雲は黒色は鵜だが、天孫は烏である。

吉野川の"河尻"で出会った、筌[≒簗漁の簀]を作る取魚人が鵜匠らしい。ただ、上流に遡っているのだから、河口部だと話が戻ってしまう。それに、阿陀は五条辺りだし。広い川の下流部では簗漁は向かないが、鵜を使うと解決という話でもしたかったか。鵜の呑み込み漁法ではなく、簗への追い込み漁法ということで。
【僕者國~名謂贄持之子】
  此者阿陀之鵜飼之祖

戦闘の歌はわかりにくいが、あくまでも気分高揚のため謡うのだから、リズムと音感が勝負であろう。📖久米部歌謡こそ和歌原型
【弟宇迦斯之獻大饗者悉賜其御軍 此時歌曰】
  宇陀の高きに [志藝]罠張る
  我が待つや
は障らず
  いすくはし
[伊須久波斯:意味不明] 鯨障る・・・
  ・・・阿々
  しやこしや
[志夜胡志夜:意味不明] 此者嘲咲者也

鵜飼については特別な思いがありそうだ。海鵜漁は南島文化で、大陸由来ではないから、海神を祖としている皇孫としては、親和性が高いということだろうか。
【又撃兄師木弟師木之時御軍暫疲 爾歌曰】
  盾並めて 伊那佐の山の 木の間ゆも
  い行き守らひ 戦へば
  吾はや飢ぬ
  嶋つ鳥
鵜飼[宇加比]が伴 今助けに来ね

 (C) 2021 RandDManagement.com  →HOME