→INDEX ■■■ 「古事記」解釈 [2021.6.14] ■■■ [164] インターナショナル視点での嶋生み 現代人にも通用する、コロコロやゴロという音感に訴える表現であり、海人は擬音で心情を伝えることに長けていたことが示されている。 この島は、"国生み"の本貫地であり、心情風景と云えなくもないが、実在の嶋の可能性が高い。別天神5柱や神世七代の世界を美しく豪華に飾るとか、畏怖感を与えるための潤色には全く興味がないのが海人の性情のようだから。 [16]大雀命/仁徳天皇が難波の崎から淡道嶋へと行幸した時の、阿波嶋・淤能碁呂嶋・阿遲摩佐(蒲葵)の嶋を見たとの御製歌があるが、渡航したのだから実際に目にしたのではあるまいか。 この歌でも取り上げられる、"あは"嶋だが、最初に生まれた子の蛭子に次いで生まれた淡嶋であろう。両者ともに"不入子之例"とされている。 ここは初の国生みの事績だから、神々しさが強調されそうなものだが、全く逆。蛭子に至っては、葦船で流してしまい、その後音沙汰無しの扱い。 ・・・「古事記」は伊邪那岐命・伊邪那美命から綿々と続く系統譜の御威光を示すために作成されているという単純なドグマでしか読み取ろうとしない姿勢では、こうした記述の意味は全く読み取れまい。 なんらかの信仰の発露が記載されていると考えるべき記述だ。しかもそれは海人にとっては極めて重要な観念である可能性があろう。 国生みとは、実態的には、嶋生みである。その観点で考えるとなると、ある程度情報が揃っていて参考になりそうなのは南島の伝承譚しかない。(インドネシアはイスラム圏化で、部族政治温存・部族信仰抹消が進んでしまったし、伝承譚研究がアーリア型の系譜分析思想に染まっていそうだから、余り参考にしない方が無難だと思う。) 政祭一致体制の天孫氏琉球王朝には正式な史書羽地朝秀[編纂[:「琉球國中山世鑑」1650年があり、始祖が記載されている。・・・ 天城の女神 阿摩美久が天帝の命を受け降臨したが海原状態だったので、下賜された土石草木で島々を創った。(一番に國頭 邊土ノ安須森。)そして数萬歳経ち、天帝ノ御子男女一組(人種子)を住まわせたとされる。これが琉球の民の起源ということになる。(伝承民話バージョンでは、阿摩美久は女神で、男神と共に降臨し[@浜比嘉, 等々]、子孫を増やすことになる。久高島信仰の原点であろう。) 天帝は中華帝国の観念であるものの、いかにも中華圏外にされたくない状況に直面していた、大洋の島嶼國の史書らしき話である。 名称のアマだが、天ではなく、母という意味で海原のかなたから渡来した祖女神との一般用語と考えるべきだと思う。もともとは、部族毎に独自名称があったが、神名を口にすることは禁忌だっただろうし、言語統一に伴ってすべてが同一神とされたのだろう。(奄美・国頭・沖縄・宮古・八重山・与那国の言語は違いが大きい。) かなり後世に成立した書なので、倭の正史の影響も考えられない訳ではないが、種子島・屋久島が倭の文化の最南端であり、吐噶喇が棲息生物相の境界でもあるから、独自な伝承と見た方がよいのでは。 スンダ〜台湾〜先島〜沖縄〜倭と連なる島嶼域には、それぞれに嶋生み伝説があって当然だからだ。 そうそう、これらの多島域海人社会では、王権構造が大陸とは大きく違っていそうな点についても語っておこう。 島嶼に於ける降臨者と言うのは、海原からの渡来者を意味するが、それは誰が考えても超能力の保持者ということでもある。 従って、海人は渡来者を歓待するだけでなく、新たな男王として迎え入れることに抵抗感は少ない。住民から推挙され、崇められるようになった男王となっておかしくない。だからこそ女系制が続くともいえよう。 大陸人と違い、海人は土地に居つく単純な専業者でない点も忘れるべきでなかろう。王が見込みから外れて能力が低かったり、ケミストリー的に合わないとなれば、王を捨て、自ら他の地域移住することも厭わない筈だから。 "百越"とは、いかにも、一枚岩的信仰を強制される帝国型社会に適応できない人々の地域を意味していそう。島嶼の海人文化を引き継いでいるのと違うか。 ---------------------------------------------- ❶冒頭。クラゲのような"原始の海"的世界に神が顕れる。 造化三神 📖インターナショナル視点での原始の海 その世界の名称は高天原。 海に囲まれた島嶼社会に根ざした観念と言ってよいだろう。 栄養豊富な海辺での水母大量発生のシーンが重なる。 天竺なら さしずめ乳海に当たる。 ❷神々の系譜が独神から対偶神に入り、 神世の最後に登場するのが倭国の創造神。 伊邪那岐命・伊邪那美命 📖インターナショナル視点での神生み 高天原の神々の意向で、矛で国造りをすることに。 矛を入れて引き上げると、 あたかも潮から塩ができるかの如く、 日本列島起源の島が出来てしまう。 島嶼居住の海人の伝承以外に考えられまい。 ❸交わりの最初に生まれた子は蛭子。 葦船に入れ流し去った。海人の葬制なのだろう。 しかし、子として認められていない。 葦と言えば、別天神で"葦牙因萌騰之物"として 唯一性情が示されるのが 宇摩志阿斯訶備比古遅神。 …いかにも河川デルタ域の神。 📖葦でなく阿斯と記載する理由 そして"国生み[=嶋神生み]"で、 日本列島の主要国土を生成する。 ❹ [海神]大綿津見神 ❺ 鳥之石楠船~/天鳥船 ❽ 須佐之男命 ❻ 安曇連祖神 底津綿津見神 中津綿津見神 上津綿津見神 ❼ 墨江之三前大神(住吉神) 底筒之男神 中筒之男神 上筒之男神 ❾ 伊都久三前大神(宗像神) 多紀理毘賣命(胸形之奥津宮) 市寸嶋比賣命(胸形之中津宮) 田寸津比賣命(胸形之邊津宮) ❿天孫降臨後 綿津見大神 (C) 2021 RandDManagement.com →HOME |