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■■■ 「古事記」解釈 [2021.8.1] ■■■
[212]榛と波理木の違い
ハンの木については検討したことがある。重複するが、書いておこう。📖古代樹皮染の木

/ハリ=榿/ハン(樺木)の木は湿地・低山の川沿いに棲息することが多い。他の樹木は棲息が難しい環境であるので、広葉樹であるが林を形成する。現代人がほとんど知らない木になっているのは、古代から、開墾対象地にされて伐採されがちだったから。炭材に向くこともあるし。
ただ、猪が住む地であると、山榛の木・毛山榛の木の可能性もある。ともあれ、伐採されていない地だと、大きく太い枝が目立つ木が多い。
大猪に追いかけられた天皇が、榛の木に助けられた話が収載されている。・・・
   《葛城山之山上大猪譚@[21]雄略
  天皇 畏其吼き[宇多岐] 登坐
  爾 歌曰:
    八隅知し 我が大君の 遊ばしし
    猪の 病猪の 吼き畏み 我が逃げ登りし
    在り峰の [波理]の木の枝

麻について書いたが📖丹寸手信仰のもと、衣と言う点で、榛の木ともかかわってくるのである。
(額田王下近江國時<作>歌井戸王即和歌)反歌 [「萬葉集」巻一#19]
  綜麻[=麻糸巻糸玉]形の 林の前の さ野
   衣に付くなす 目につく吾が背
(針を付けたままで鉤穴から出て糸三勾で山に至ったという美和山譚[@崇神記]と掛けているとの見方もあるが、3巻を示唆していない。ただ形は観念によるところ大なので、ありえるかも。)

一般的には、染色剤の木である。
二年壬寅太上天皇幸于参河國時歌(右一首長忌寸奥麻呂) [「萬葉集」巻一#57]
  引間野に にほふ原 入り乱れ
   衣にほはせ 旅のしるしに

【ご注意】
天皇を病猪の攻撃から救ってくれた木であるにもかかわらず、榛とはカバノキ
(樺)系のハシバミ(葉皺実/ヘーゼルナッツAsian hazelの木であり、大陸では6000年前にすでに栽培されていたと見られている。)と解説してある場合が多い。ハンの木もカバノキ系ではあるが、両者は高木と低木の違いがあり、全く異なる。
ここでの問題は、中国語ではハシバミは榛だが、ハンの木は榿木と記載されている点にある。
上記の「万葉集」歌の榛は低木と思われ、藪的な雑木の地を示していそうで、もともとの榛原という意味をよくとらえていると言えよう。これに対して、「古事記」はあくまでも高木としての波理の木。低木の榛と染料利用の視点では、ほぼ同族ということを示しているのかも知れぬ。


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