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■■■ 「古事記」解釈 [2021.8.5] ■■■
[216]"梓"を使った理由がわからぬ
梓樹は中国ではキササゲ/木大角豆を意味する。実は確かに豆的であるが、大陸では材としての利用に目が向いていたので、その手の名称は無いようだ。
樹木としては、桐に似た大樹なので、通称名は水桐。

倭では、自生していなかったから、どのような木かよくわからなかっただろうが(今でも、上梓という版木用語が残っている点から見て、日本移植はかなり後世の可能性が高かろう。)、大陸では王用棺材だったから、ピカ一の樹木を意味するとして、名前だけが伝わったのだろう。

そんな文字を、梓弓として使用した理由は判然としない。
梓は一応は樹木名称として考えることになるが、それも実は定かではなく、わからないことが多い。

ともあれ、梓弓には神霊ありという観念があり、弓のピカ一とされていたのは間違いない。もちろん、倭でしか通用しない。ここらは、えらく錯綜しているのである。📖弓の木

「古事記」には、梓弓、真弓、槻弓の3種が登場する。・・・

   《大山守命反逆譚(葬送歌)@[15]応神
  爾掛出其骨之時 弟王歌曰:
   千早人 宇遅の渡りに 渡り瀬に
   立てる [阿豆佐] [麻]
   い伐らむと 心は思へど
   い獲らむと 心は思へど
   本方は 君を思ひ出
   末方は 妹を思ひ出
   いらなけく 其処に思ひ出
   悲しけく 此処に思ひ出
   い伐らずそ来る 梓弓 真弓

   《軽物語⑪@[19]允恭 📖太安万侶流の歌分類
  隠国の 泊瀬の山の
  大峰には 幡張り立て
  さ小峰には 幡張り立て
  大峰にし
  汝がさだめる 思ひ妻あはれ
  槻弓の 伏る伏りも
  梓弓 立てり立てりも
  後も取り見る 思ひ妻あはれ

両方とも、心に染み入る歌謡になっており、儀式用の呪器としての弓であろう。

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