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■■■ 「古事記」解釈 [2022.1.4] ■■■
[368]言依の訓読みは"こと-よさ-す"
《言依》の訓は"こと-よさ-す"で、本来は《言寄》と文字表記すべきだろう。
  [こと]-[]さ-す[尊敬の助動詞]…神/天皇が御命令になる。
要するに、特別に重大ということでご命令になったという意味の語彙である。
しかし、多少ニュアンスが違う言い方に気付いたので、文字を替えたりしてみたのでは。読みは同じである。
  寄る[接近]
  依る/拠る/縁る[根拠]
  因る/由る[原因]
  趣く[筋道/狙い]
  選る/択る[選出]
  縒る/撚る[@糸]

何故《言寄》を使わないかといえば、女性に言い寄るという用法があるからだろう。こちらの場合、命令的な言い回しとは言い難いし、神や天皇の行為という訳でもないから、意味が違うと言えないこともないが。

用例については、すでに触れた。・・・
📖命以言依と事依の世界 📖東西を平定した倭建命は反朝廷の雄か

類語についても、触れておこう。・・・

《言向》は"和平"とほぼ対の用法で使われる語彙だから、言葉を掛けた相手を服従させるという意味であるのははっきりしている。従って、"向く"は、"向ける"という意味の使役動詞ということになり、現代語の自動詞的意味は無かったと考えるべきと思う。尚、《事向》なる言葉の代替も有り得ない。

《言挙》だが、こちらは、自分の意志を声に出して言うこととの解釈が自然だろう。するとそれが実現されることになったりする。しかし、いい加減な態度での発言であると、実現どころか、意に反した悪い結果を生むことに。・・・
倭建命が伊吹山で、山神の化身に遭遇。出会ったが、神の使者なので今は殺さずにおこうと言挙げ。とこるが、それは神だった。結果、神の祟りで命を落とすことに。

---【言依】&【事依】---
㊤淤能碁呂嶋
  於是《天神 諸》①命以
  詔伊邪那岐命伊邪那美命二柱神
  「修理固成是多陀用幣流之國」
  賜天沼矛 而
言依賜也 天の沼矛を賜りて、言依し賜ひき。
㊤生子水蛭子・淡嶋
  於是二柱神議云 今吾所生之子不良
  猶宜白天神之御所 即共參上 請天神之命 爾 《天神》之②
命以
  布斗麻邇 爾 ト相 而
  詔 之:
  「因女先言而不良・・・

㊤三貴神分治
  《伊邪那伎命》大歡喜・・・
  即 其御頸珠之玉緒母由良邇 取由良迦志而
  賜 天照大御神 而
  詔 之:
  「汝命者 所知高天原矣」
  
事依 而 賜也 と事依し賜ひき
  故其御頸珠名謂御倉板擧之神
  次 詔 月讀命:
  「汝命者 所知夜之食國矣」
  
事依 と事依しき。
  次 詔 建速須佐之男命:
  「汝命者 所知海原矣」
  
事依 と事依しき。
㊤速須佐之男命欲妣國
  故 伊邪那岐大御神 詔 速須佐之男命:
  「何由以汝 不治所
事依之國
    「何由かも汝は事依し國を治らずて
   而 哭伊佐知流」
㊤欲往妣國以哭
  速須佐之男命答白:
  「僕者無邪心 唯 《[伊邪那岐]大御神》之㊚
命以
   問賜僕之哭伊佐知流之事故・・・

㊤稻羽之裸菟
  先行《八十神》之㊇命以
  誨告:
  「浴海鹽當風伏」

---【言因】,【言依】&【言趣】---
㊤天降-天忍穗耳
  《天照大御神》之命以
  豐葦原之千秋長五百秋之水穗國者 我御子 正勝吾勝勝速日天忍穗耳
  命之所知國
  
言因賜而 と言因し賜ひて
  天降也

㊤天降-神集
  爾 《高御產巢日神 天照大御神》之❶命以
  於天安河之河原 神集八百萬神集 而 思金神 令思 而 詔
  「此葦原中國者 我御子之所知國
言依所賜之國也
  此の葦原中國は、
  我が御子知らしむ所の國と言依し賜へりし國なり。
   故以爲於此國道速振荒振國神等之多在 是使何神 而 將言趣
      ☚趣此の国に道荒振る多くの国ッ神等
㊤天降-天若日子
  問天若日子状者:
  汝所以使葦原中國者
言趣其國之荒振神等之者也
      ☚趣其の国の荒振る神等
  何至于八年 不復奏

㊤天降-天鳥船神副建御雷神
  是以此二神。降到出雲國伊那佐之小濱而・・・
  問其大國主神言:
   《天照大御神 高木神》之❷
命以
   問使之
   汝之宇志波祁流葦原中國者 我御子之所知國
言依
  「汝が宇志波流葦原中國は、
   我が御子の知らす所の國ぞと言依し賜ひき。
   故汝心奈何 故、汝が心は奈何に。」
㊤天降-建御雷神復奏
  故 《建御雷神》 返參上 復奏:
  「
言向和平葦原中國之状」
㊤天降-天忍穗耳命
  爾 《天照大御神 高木神》之❸命以
  詔太子正勝吾勝勝速日天忍穗耳命:
  「今平訖葦原中國之白。故隨
言依賜 降坐而知看」
  「今、葦原中國を平け訖へぬと白せり。
   故、言依し賜ひし隨に、
   降り坐して知らしめせ。」
㊤天降-邇邇藝命
  科詔 日子番能邇邇藝命
   此豐葦原水穗國者 汝將知國
言依
  「此の豐葦原水穗國は、
   汝知らさむ國ぞと言依し賜ふ。
  故隨❹命以
  可天降

㊤天降-天宇受賣神
  爾 日子番能邇邇藝命 將天降之時
  居天之八衢而 上光高天原 下光葦原中國之神 於是有
  故 爾 《天照大御神 高木神》之❺
命以
  詔天宇受賣神:
  「汝者雖有手弱女人・・・

以下、平定関係は再掲。
㊥熊野山之荒神
  故天神御子 問獲其横刀之所由
  高倉下答曰:
  「己夢云
   《天照大神 高木神》 二柱神之❻
命以
   召建御雷神而詔:
   "葦原中國者 伊多玖佐夜藝帝阿理那理 我之御子等 不平坐良志
    其葦原中國者 專汝所
言向之國
    故 汝建御雷神可降"」
  爾答曰:
  「僕雖不降 專有
其國之横刀 可降是刀」
㊥八咫烏
  於是 亦 《高木大神》之❼命以
  覺白之:
  「天神御子 自此於奧方莫使入幸 荒神甚多
   今自天遣八咫烏 故其八咫烏引道 從其立後應幸行」

㊥八十建
  故 爾 《天神御子》之🈗命以
  饗賜八十建

㊥畝火之白檮原宮
  故如此 言向平和荒夫琉神等
  退撥不伏之人等 而 坐畝火之白檮原宮 治天下也

㊥吉備國
  大吉備津日子命 與 若建吉備津日子命 二柱相副而
  於針間氷河之前 居忌瓮而
  針間爲道口以
言向吉備國也
㊥御眞木入日子印惠命/崇神天皇
  又此之御世
  大毘古命者 遣高志道 其子建沼河別命者 遣東方十二道 而
  令
和平其麻都漏波奴人等
㊥大毘古命
  亦斬波布理其軍士故 號其地 謂 波布理曾能
  如此
訖 參上覆奏
  故大毘古命者 隨先命 而 罷行高志國 爾 自東方所遣建沼河別 與 其  父大毘古共
  往遇于相津 故其地謂相津也
  是以 各
和平所遣之國政 而 覆奏
㊥倭建命
 於是 天皇([12]大帶日子淤斯呂和氣天皇/景行天皇)惶其御子之建荒之情 而
 詔之 西方有熊曾建二人 是不伏无禮人等 故 取其人等 而遣・・・
 殺也・・・
 稱御名謂倭建命
 然 而 還上之時
 山神河神 及 穴戸神 皆
言向 而 參上
 即入坐出雲國・・・
 打殺出雲建・・・
 爾天皇 亦頻詔倭建命:
 「
言向和平東方十二道之荒夫琉神 及 摩都樓波奴人等・・・
 「天皇 既所以思吾死乎
  何撃遣西方之惡人等 而 返參上來之間 未經幾時 不賜軍衆
  今更
遣 東方十二道之惡人等・・・
 故到尾張國 入坐
 尾張國造之祖 美夜受比賣之家
 乃雖思將婚 亦 思還上之時將婚 期定而
 幸于東國 悉
言向和平山河荒神 及 不伏人等・・・
 自其入幸
 悉
言向荒夫琉蝦夷等 亦 平和山河荒神等・・・
 自其國越科野國 乃
言向科野之坂神 而 還來尾張國・・・
 :
---【言擧】---
 騰其山之時 白猪逢于山邊 其大如牛
 爾 爲
言擧
 而 詔 是化白猪者 其神之使者 雖今不殺
 還時將殺而 騰坐 於是零大氷雨打惑倭建命
 【此化白猪者 非其神之使者 當其神之正身
 因
言擧見惑也】
 :
 於是化八尋白智鳥・・・
 :
 凡此倭建命
國廻行之時
 久米直之祖 名七拳脛 恆爲膳夫以 從仕奉也。


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