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■■■ 「古事記」解釈 [2022.1.30] ■■■
[394]檳榔之長穗宮の比定地
「出雲国風土記」はほぼ完本であるにもかかわらず、八俣遠呂智を示唆する話は収載されていない。と言うか、蛇を暗示しそうな話そのものが一切収載されていない。
もともと大蛇は、南/東南アジア〜中国南部が棲息地で、本来的には本朝で語るべき話ではなかろうが、南島の"鰐"に次ぐ、結婚相手トーテム譚ということになる。出雲王朝は古くからインターナショナルな交流があったということを意味していそう。
要するに、出雲は蛇神信仰の核心的地だったと云うのが太安万侶の見立て。
・・・と言うことは、"スガスガし"はその信仰を一掃した嬉しさを表現していることになろうし、その結果、虚空には解き放たれた雲が湧き立って来て、感極まれりと言うことになろう。

その辺りを伝えるために、用意周到にも、別途、蛇譚を挿入している。・・・
 [11]伊久米伊理毘古伊佐知命@磯城之玉垣宮の皇子
 品牟都和氣命は言葉を発せずにいたが、
 太占で祟りとの結果が出て、参拝に。
   到於出雲拜訖大~・・・
   爾 其御子一宿婚肥長比賣…肥河の水霊"ナーガ"
   故 竊伺其美人者
一方、朝廷に関係しそうな大和國内では直截的に男根を暗示する譚ではなく、戸穴を通って山に帰る神という話に留めて、注意深く"蛇"体であるとは記載していない。
おそらく、蛇トーテム部族は、蛮族として殲滅対象にすべしというのが、儒教圏の基本姿勢であることに気付いたためでもあろう。
従って、出雲王朝の系譜記載は重要である。氏族によっては、この系譜に連なっている場合もあろうが、蛇トーテム系であると認定する訳にはいかないから、"スガスガし"をもって出雲王朝始原とする以外に手はなかろう。それに、詔勅からすれば、臣下の祖と皇統譜を結び付けることが「古事記」の命題だから、出雲系氏族祖の割註は不要だし、朝廷祭祀的への取入れも無いとする必要があろう。
このような姿勢で編纂がなされているとすれば、「古事記」が触れていない、非前方後円墳様式・銅鐸・土偶等々は、蛇鰐トーテム時代の遺物と見て間違いなかろう。

ここで終わったのでは尻切れトンボ。
品牟都和氣命と肥長比賣の関係は妻問婚ではないからだ。宮に嫁下してきた様に記載してある箇所が意味深だからだ。
   還上之時 肥河之中
   作K樔橋 仕奉假宮 而 坐
赤色水の肥河中の黒色土の中洲に仮宮を造成する意図はわからぬものの、このお陰で、この地で皇子が、突然、言葉が喋れるようになる。
そして、新たな宮に移る。
   御子者坐檳榔之長穗宮
後世の御製の"檳榔の 島も見ゆ"を思い出させる名称である。📖ビロウを持ち出したのは流石
 檳榔ビンロウ=アレカ椰子(ペナン島椰子)
   /Areca palm or Betel palm/檳榔@中国/Cây Cau@ベトナム

 檳榔 or 枇榔ビロウ・・・汎用語(ビンロウ類縁樹木名)
 蒲葵ホキ/Fan Palm・・・中華的用語
 阿遅摩佐アジマサ・・・古事記時代語+残存言葉@石垣
 硬葉クバ or コバ・・・南島用語
【ご注意】シュロ/棕櫚[日本原産]は木本ではない。よく見かける庭木は唐棕櫚である。📖本州でも育てている南洋の木
常識的には亜熱帯海岸植生の樹木であり、積雪の地に棲息する訳がない。そうなると、特別に移植されて保護されていたか、定期的に運ばれていたことになろう。出雲には、そのような聖地が存在していたことを、この一文が語っていることになる。
つまり、檳榔之長穗宮の比定地は佐太神社があった旧地ということ。
   その神 出雲なる 神在月(旧暦10月)の しるしとて
   龍蛇([金紋]背黒海蛇≒蒲葵@南島)の上がる
    江積津の浜(@七ヶ浦)
 [伝:佐太神社@松江鹿島佐陀宮内/佐太御子社@秋鹿郡/佐陀大社]
   …ニライカナイからも神が集まることになる。
この神社の社殿は3ッに分かれており、その意義は不明である。しかも、現在のご祭神が古代と同じとは限らないのでどのような信仰なのかの推定も難しい。それに、神在月祭祀は他社とは違っている印象を与える点も要注意であろう。尚、社殿の神紋は檳榔(海蛇)の形象という説もある。(正中殿:扇の地紙 北殿:輪違 南殿:二重亀甲)

----出雲参拝者の系譜上の位置----- 📖9代天皇皇子系譜に記載の国造の祖
❾若倭根子日子大毘毘命/開化天皇
└┬△意祁都比売命<丸邇臣先祖 日子国意祁都命の妹>
┼┼
○日子坐王
└┬△山代 荏名津比売/苅幡戸弁
│├┬┐
│○大俣王
│└──┬△n.a.
││├┐
││○曙立王
││↓…祖
││伊勢品遅部君
││伊勢佐那造
││菟上王
││↓…祖
││比売陀君
小俣王
↓…祖
当麻勾君
┼┼志夫美宿祢王
┼┼↓…祖
┼┼佐佐君
└┬△沙本大闇見戸売(春日 建国勝戸売の息女)
│├┬┬┐
│○沙本毘古王
↓…祖
日下部連
甲斐國造
袁邪本王
↓…祖
葛野之別
近淡海 蚊野之別
┼┼△沙本毘売命/佐波遅比売
┼┼└──┬⓫伊久米伊理毘古伊佐知命/垂仁天皇
┼┼┼品牟都和氣命
┼┼┼室毘古王
┼┼┼↓…祖
┼┼┼若狭耳別
└┬△息長水依比売
└┬△袁祁都比売命(近江 御上祝 が斎する天之御影神の息女[妹])

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