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■■■ 「古事記」解釈 [2022.2.6] ■■■
[401]建内宿祢をことのほか重視している
建内宿禰について、「古事記」を見る限り、謎などなにもなかろう。太安万侶は中央官僚"朝臣"の親分と見ただけで、たまたま長命だったに過ぎまい。📖建内宿禰の長命はママ受け取るべし

氏族としては"内"であるとの歌が収載されているし、・・・
 <[72]【天皇】雁卵の問>📖下巻冒頭16代天皇段所収歌23首検討
 多麻岐波流[たまきはる][≒魂極] [うち]の朝臣 汝こそは 世の長人
  そらみつ 倭の国に 雁卵産と聞くや
その"内"氏は、系譜的に、味師[うまし][≒美]系と[たけし][≒健/猛し]系があると、宿祢号初出の天皇段で明瞭に記載してある訳だし。

両者はテリトリーが違っているのかも。"美味し"派は山城地域で、奈良盆地内の武力勢力を束ねたのが"健し"派に思えるが、前者については何も書いていないのではっきりしない。ともあれ、8代天皇の時代、建系内氏が盆地内の統合をひとまず完成させたということだろう。中央の朝廷の威力が、地方からもわかるようになったと言うことでもあろう。
建内宿禰の母は木国造祖であるから、紀國を本貫地としがちだが、おそらく奈良盆地内に存在している木国勢力を指していると思われる。さらに付け加えれば、9子の名前を見ると、氏族名だけの記載と、特定人物名まで付けている場合があることがわかる。いかにも統一感を欠き、"引用したダケ"方針の記載に映るが、氏族長名しか無い場合もあることを示していると考えるべきだろう。女系が色濃いと、男性の氏族長の名前は地名で呼ばれるに過ぎず、個人名は不明でおかしくないからだ。

・・・建内宿禰の9御子が書き留められているからこそ、国家の体制がおぼろげながら見えてくる訳で、太安万侶流の編纂術が駆使されているといってよかろう。
要するに、倭国統治は2重であり、奈良盆地中央には、土着の勢力と、地方勢力の代表も兼ねる勢力が集まっており、ここでの朝廷差配によって全国支配体制が固まっていく仕組み。この"中央"の地域が次第に拡大していくものの、基本構造は同じであろう。
従って、中央に於ける内乱を阻止する武力体制を敷くことは、最優先課題となる。このなかで利益追求のためにどうヘゲモニーを握るかで、イザコザは絶えない訳だが、朝廷は1つであるから、宿祢組織の運営が円滑に進めば、大局的には安定した社会を樹立することができることになろう。要するに、反朝廷の連合組織を作らせなけれよいのであり、"内"氏族はそのようなマネジメントに長けていたのだろう。

中華帝国とは、水と油のような風土ということでもある。宗族型は、まかり間違えてやり玉にでもあげられたら抹消されかねないから、個々の構成員は一族に迷惑がかからぬように動くことになる。従って、独裁的な組織にならざるを得ない.
一方、倭は、情緒的な祖先尊崇は熱心だが、それによって個々人を組織構成員に編成して、命令服従を絶対化するような仕組みができていない。中華帝国から見れば、全く統制されていないバラバラな社会に映ること間違いなしだが、構成員がまとまろうという点で意思一致していると、合意が形成されて組織的動きができるようになったりする。
宿祢組織こそ、倭の国家運営の特徴ということになろう。

     --- 「古事記」の宿禰登場箇所 ---
❽大倭根子日子國玖琉命/孝元天皇
└┬△[内色許男命の女]伊迦賀色許賣命
比古布都押之信命
└┬△[(尾張連等祖)意富那毘の妹]葛城之高千那毘賣
│〇味師内宿禰(祖:山代内臣)
└┬△ [(木国造祖)宇豆比古の妹]山下影日売
┼┼建内宿禰
┼┼└┬△n.a.
┼┼┼…九子[男七 女二]
┼┼┼├〇波多八代宿禰(祖:波多臣 林臣 波美臣 星川臣 淡海臣 長谷部君)
┼┼┼├〇許勢小柄宿禰(祖:許勢臣 雀部臣 軽部臣)
┼┼┼├〇蘇賀石河宿禰(祖:蘇我臣 川辺臣 田中臣 高向臣 小治田臣 桜井臣 岸田臣)
┼┼┼├〇平群都久宿禰(祖:平群臣 佐和良臣 馬御樴連)
┼┼┼├〇木角宿禰(祖:木臣 都奴臣 坂本臣)
┼┼┼├△久米能摩伊刀比売
┼┼┼├△怒能伊呂比売
┼┼┼├〇葛城長江曽都毘古(祖:玉手臣 的臣 生江臣 阿芸那臣)
┼┼┼└〇若子宿禰(祖:江野財臣)
❾若倭根子日子大毘毘命/開化天皇
└┬△葛城之垂見宿禰之女 鸇比賣
│〇建豐波豆羅和氣王
└┬△意祁都比売命
〇日子坐王
└┬△山代之荏名津比賣/苅幡戸辨
│├〇
│├〇
│└〇志夫美宿禰王(祖:佐佐君)
└┬△袁祁都比売命
┼┼├〇山代 大筒木真若王
┼┼│└┬△丹波能阿治佐波毘売
┼┼│ 〇迦邇米雷王
┼┼│ └┬△高材比売
┼┼│  〇息長宿禰王
┼┼├〇
┼┼└〇
❿〜⓬:無
⓭若帶日子天皇/成務天皇
《建内宿禰》
・大臣就任。大国小国の国造制定。国境制定。大県小県の県主制定。
⓮帯中津日子天皇/仲哀天皇(+息長帯比売命/神功皇后)
・皇后が神がかりになったので、神の言葉を頂戴した。
・天皇に弾琴を要請。
・殯宮での儀式を挙行。沙庭で神の言葉を頂戴した。
・皇后の胎児の性別を答えた神に名を尋ねた。
[皇子]品陀和気命/大鞆和気命
・皇子の禊を設定。伊奢沙和気大神の夢告を皇子に伝達。
・皇子の代理に酒楽歌を謳う。
[太子]大雀命@⓯品陀和気命/大鞆和気命/応神天皇
・太子が髪長比売が麗しと語る。
・太子の要請で天皇が召した髪長比売譲渡を願う。
└┬△髪長比売(日向之諸県の君 牛諸の娘)
⓰大雀命/仁徳天皇
・朝貢の渡来新羅人を活用して百済池を造成。
・雁産卵に係わる歌詠。
└┬△石之日売命(葛城之曽都毘古の娘)…皇后
├⓱大江之伊邪本和気命/履中天皇
│└┬△葛城之曾都毘古之子 葦田宿禰之女
├〇墨江之中津王
├⓲蝮之水歯別命
└⓳男浅津間若子宿禰/允恭天皇
┼┼┼《大前小前宿禰》
⑳〜㉘:無
㉙天国押波流岐広庭天皇/欽明天皇
《宗賀之稻目宿禰大臣》
㉚:無
㉛橘豊日命/用明天皇
《稻目宿禰大臣》
㉜〜㉝:無

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