→INDEX ■■■ 「古事記」解釈 [2021.12.5] ■■■ [338]下巻冒頭16代天皇段所収歌23首検討 そして、段の最後に息抜き的な面白話の歌が3+1首となる。 始めから分析的視線で見ていれば気にならないのかも知れぬが、およそ天皇賛美とは程遠い、下世話な話で終始しているように思えてくる段である。天皇の地位が絶対的で無いことが感じられるように編纂されており、男系嫡子が全権を握るという儒教的社会の雰囲気とは天と地ほどの開きがあることを感じさせる箇所と言ってよいだろう。 《上巻》@出雲・八尋和邇…7+2首 📖 《中巻初代天皇段》…13首 📖 《中巻10代天皇段》…1首 📖 《中巻倭建命関連》…15首📖 《中巻15代天皇段》…14首📖 《下巻16代天皇段》…23首 ---⑯大雀命@難波之高津宮/仁徳天皇 <皇后の嫉妬におびえて帰郷した妃を追いかけた>…5首 <皇后不在中の宮での浮気が発覚>…5首 📖枕詞「つぎねふ」考 <激怒し家出した皇后に平謝する一方、愛人とも睦み合う>…4首 <天皇拒否の女が、男と一緒に反逆>…5首 <本邦で雁孵化との吉兆>…3首 📖鴈産卵の戯歌も収載 <超大木製の船を造り、その廃船材で琴を作成>…1首 📖高速船"枯野"の記載遊び 歌の数が多いが、上記のように整理すれば、主題は天皇と皇后・妃の角逐ということになろう。この段は、それに従って構成されていると見ることもできよう。 📖大雀命のどの歌を重視するか・・・ ①【小見出し】天皇名+宮地…大雀命 難波之高津宮📖[16] 難波之高津宮 ②【系譜】婚姻と御子…大后4柱+2柱+庶妹0柱+庶妹0柱 <大后系が天皇位継承3柱> ③【事績】大后皇子に5部制定 ④【事績】大型水系土木事業 ⑤【祭祀】国見 ⑥【"善政"】 (ここから大后"嫉妬"譚) ⑦【K日賣(吉備海部直の娘)】 ⑧【八田若郎女】 大后木國行幸⇒摂津帰還回避⇒山代川遡上⇒ 那良山口(望郷:葛城高宮)⇒筒木韓人(奴理能美)の家"山代筒木宮" 八田部制定 ⑨【女鳥王・速總別王】📖稗田阿礼の爆笑傑作 ⑩【大后 反主人の總別王臣下を処刑】 (突然話題転換) ⑪【鴈産卵譚(遊興@女嶋)】📖 鴈産卵の戯歌も収載 ⑫【高木枯野船譚】 ⑬【クロージング】崩御年齢 干支年月日 御陵名 <継承皇子関係譚> ---⑯大雀命@難波之高津宮/仁徳天皇 [_53]【天皇】皇后を恐れ帰郷した妃への恋慕 沖辺には 小舟連ららく 黒ざやの まさつこ我妹 国へ下らす [_54]【天皇】帰郷した妃を追いかける 押し照るや 難波の前由 出で発ちて 吾が国見れば 阿波島 淤能碁呂島 蒲葵の 島も見ゆ さけつ島見ゆ [_55]【天皇】帰郷した妃と再会し悦楽 山県に 蒔ける青菜も 吉備人と 共にし摘めば 楽しくもあるか [_56]【黒比売】帰都に際し、別れを惜しむ 倭辺に 西風吹き上げて 雲離れ 退き坐りとも 吾忘れめや [_57]【黒比売】帰都時に思いを伝える 倭辺に 行くは誰が夫 隠りづの 下由這へつつ 行くは誰が夫 [_58]【大后】皇后激怒し家出を決意 つぎねふや 山代川を 川上り 吾が上れば 川の辺に 生ひ立てる 烏草樹を 烏草樹の木 其が下に 生ひ立てる 葉広 斎つ真椿 其が花の 照り坐し 其が葉の 広り坐すは 天皇ろかも [_59]【大后】家出皇后帰郷途上時 つぎねふや 山代川を 宮上り吾が上れば 青丹吉 那良を過ぎ 小楯 倭を過ぎ 吾が見が欲し土は 葛城高宮 吾家の辺り [_60]【天皇】家出皇后を追いかける使者を派遣 山代に い及け鳥山 い及けい及け 吾が愛し妻に い及き遇はむかも [_61]【天皇】家出皇后を気遣う 三諸の その高城なる 大猪子が原 大猪子が 腹にある 肝向かふ 心をだにか 相思はず有らむ [_62]【天皇】家出皇后に元の鞘に収まって欲しい、と つぎねふ 山代女の 木鍬持ち 打ちし大根 根白の 白腕 枕かずけばこそ 知らずとも云はめ [_63]【口日売】皇后に天皇の使者に会って欲しい旨懇願 山代の 筒木の宮に もの白す 我兄の君は 涙ぐましも [_64]【天皇】志都歌之歌返家出皇后を迎えに出向く つぎねふ 山代女の 木鍬持ち 打ちし大根 さわさわに 汝が云へせこそ 打ち渡す 弥が栄なす 来入り参来れ [_65]【天皇】妃への愛一途 八田の 一本菅は 子持たず 立ちか荒れなむ あたら菅原 言をこそ 菅原と言はめ あたら清し女 [_66]【八田若郎女】一途に、貞節をまもり抜く、と 八田の 一本菅は 独り居りとも 大君し 宜しと聞こさば 独り居りとも [_67]【仁徳天皇】異母妹 女鳥王に求愛 女鳥の 吾が大王の 織ろす機 誰が料ろかも [_68]【女鳥王】返歌求愛拒絶 高往くや 隼別の 御衣裾が料 [_69]【女鳥王】夫に天皇暗殺を期待 雲雀は 天に駆ける 高往くや 隼別 雀獲らさね [_70]【速總別王】愛妻と共に反逆逃避行 梯立の 倉椅山を 険しみと 磐懸きかねて 吾が手取らすも [_71]【速總別王】愛妻と共に最期を覚悟 梯立の 倉椅山は 険しけど 妹と登れば 険しくも非 [_72]【天皇】雁卵の問 たまきはる 内の朝臣 汝こそは 世の長人 そらみつ 倭の国に 雁卵産と聞くや [_73]【建内宿禰】雁卵問への答 高光る 日の御子 諾こそ 問ひ給へ 真こそに 問ひ給へ 吾こそは 世の長人 そらみつ 倭の国に 雁卵生と 未だ聞かず [_74]【建内宿禰】祝歌片歌雁卵で寿ぎ 汝が御子や 遂によ知らむと 雁は卵産らし [_75]【人々】木船琴 枯野を 塩に焼き 其が余り 琴に作り 掻き弾くや 由良の門の 門中の海石に 触れ立つ 水浸の木の さやさや (C) 2021 RandDManagement.com →HOME |