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■■■ 「古事記」解釈 [2022.4.18] ■■■
[472]文字"八"への気配り
「古事記」では8を特別な数としていることは明らかだが📖古事記の聖数への拘り、文字表記ではどうなのだろうか。「万葉集」では、枕詞の"八隅知之[やすみしし]"は、いかにも意味を伝えるべく文字表記するが、「古事記」は"ハ"は使っていないし。📖志斯は並立の仮名文字
ただ、八上比賣 八千矛~ 八田若郎女 八尋和邇というハイライトがあたる名称に起用しているので、避けている訳では無さそうだ。

ざっと眺めてみよう。・・・

先ずは、特別扱いしている文字から。
<八重>…漢語では千重だろう。訓対応の創作用語では。
【古事記】
押分天之八重"多那"雲而
美智皮之疊敷八重 亦 絁疊八重
將入海時 以菅疊八重 皮疊八重 絁疊八重 敷于波上而
[名]八重事代主神

[__1]【速須佐之男命】作御歌大神初作須賀宮之時
    八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに[夜久毛多都 伊豆毛夜幣賀岐 都麻碁微爾]
    八重垣作る その八重垣を[夜幣賀岐都久流。曾能夜幣賀岐袁]

[108]【志毘臣】@歌垣経緯あからさまな敵対意識
    大王の 心を宥み 臣の子の 八重の柴垣[夜幣能斯婆加岐] 入り立たず有り
[110]【志毘臣】@歌垣経緯さらに強烈な敵愾心表明
    大王の 御子の柴垣 八結締まり[夜布士麻理] 閉り廻し 切れむ柴垣 焼けむ柴垣
【万葉集】
[巻二#167] 天雲之 八重掻別而…天雲の 八重かき別きて
[巻七#1168] 白浪之 八重折之於丹…白波の 八重をるが上
[巻十#1941] 旦霧 八重山越而…朝霧の 八重山越えて
[巻十#1945] 旦霧 八重山越而…朝霧の 八重山越えて
[巻十一#2658] 天雲之 八重雲隠…天雲の 八重雲隠り
[巻十一#2824] 念人 将来跡知者 八重六倉…思ふ人 来むと知りせば 八重葎
[巻十一#2825] 玉敷有 家毛何将為 八重六倉…玉敷ける 家も何せむ 八重葎
[巻十六#3885] 其皮乎 多々弥尓刺 八重疊…その皮を 畳に刺し 八重畳
     吾身一尓 七重花佐久 八重花生跡…我が身一つに 七重花咲く 八重花咲くと

[巻十九#4211] 朝暮尓 満来潮之 八隔浪尓…朝夕に 満ち来る潮の 八重波に
[巻二十#4351] 多妣己呂母 夜倍伎可佐祢弖…旅衣 八重着重ねて
[巻二十#4360] 之良奈美乃 夜敝乎流我宇倍尓…白波の 八重をるが上に
[巻二十#4440] 安之我良乃 夜敝也麻故要弖…足柄の 八重山越え
[巻二十#4448] 安治佐為能 夜敝佐久其等久…あぢさゐの 八重咲くごとく
<八百>
【古事記】
八百萬神
夜布士麻理

[100]【三重の采女】粗相で殺される寸前
   木の根の 根延ふ宮 八百によし[夜本爾余志] 斎の宮
【万葉集】
[巻二#167] 天地之初時 久堅之天河原尓 八百萬 千萬神之神集々座 而…天地の初めの時 ひさかたの天の河原に 八百万 千万神の神集ひ集ひいまして
[巻四#596] 八百日徃…八百日行く
[巻六#1047] 天下所知座跡 八百萬千年矣兼 而…天の下 知らしまさむと 八百万千年を兼ねて
<八尺:やさか>…訓の読み方が今一歩はっきりしない。
 【古事記】
八尺勾璁之五百津之美須麻流之珠/八尺勾之五百津之御須麻流之珠
八尺鏡 <訓八尺云
八阿多
八尺勾璁鏡
[名]八尺入日子命之女

【万葉集】
[巻十三#3276] 吾嗟 八尺之嗟…我が嘆く 八尺の嘆き
[巻十三#3344] 杖不足 八尺乃嘆…杖足らず(枕詞) 八尺の嘆き
[巻十四#3527] 於吉尓須毛 乎加母乃毛己呂 也左可杼利…沖に住も 小鴨のもころ 八尺鳥(枕詞)息づく
<八衢:や-ちまた(路股)
        ≪衢≫=四通八道【語源】四達[呉音]グ[漢音]ク[訓]みち ちまた
【古事記】
將天降之時 居天之八衢 而
【万葉集】
[巻二#125] 蔭履路乃 八衢尓…蔭踏む道の八衢に
[巻六#1027] 橘 本尓道履 八衢尓…橘の本に道踏む八衢に
<八十>
【古事記】
八十神
新良國主 貢進 御調八十一艘
氏姓忤過 而 於味白檮之 言八十禍津日前 居"玖訶"瓮 而 定賜天下之 八十友緒氏姓也
故其赤猪子 仰待天皇之命 既經八十歲
僕者於百不足八十坰手隱而侍 亦僕子等百八十神者

【万葉集】
[巻一#50] 物乃布能 八十氏河尓 玉藻成…もののふの 八十宇治川に 玉藻なす
[巻一#79] 川隈之 八十阿不落 万段…川隈の 八十隈おちず 万たび
[巻二#131] 此道乃 八十隈毎 萬段…この道の 八十隈ごとに 万たび
 :(沢山の用例)

以下、「万葉集」の独自色が伺われる用例。・・・
<山の音素表記:八萬>
【古事記】n.a.
【万葉集】
[巻一#17] 見放武八萬雄…見放けむ山を
<やも:八方 八毛 八面>
【古事記】n.a.
【万葉集】
[巻一#21] 吾戀目八方…我れ恋ひめやも
[巻一#31] 亦母相目八毛…またも逢はめやも
[巻十三#3283] 戀友君二 相目八毛…恋ふとも君に逢はめやも
[巻一#46] 寐毛宿良目八方…寐も寝らめやも
[巻二#160] 入澄不言八面…いるといはずやも
[巻二#195] 亦毛将相八方…またも逢はめやも
 :(沢山の用例)
<9x9=81>【万葉集】大伴家持
[巻八#1495] 足引乃 許乃間立八十一 霍公鳥
<-や>【万葉集】
[巻二#110] 束之間毛 吾忘目八…束の間も 我れ忘れめや
<主格助詞:ハ>【万葉集】
[巻十三#3306] いかにして 恋やむものぞ 天地の 神を祈れど 我れは思ひ増す[吾八思益]

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