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■■■ 「古事記」解釈 [2022.7.13] ■■■
[558]仮名ミの用法について(補)
特段の説明無しで「万葉用字格」の<>項を例にあげたが、その部分を補足的加筆しておくことにした。📖「万葉用字格」は頭の整理用文献(補)
「古事記」の"御"は"美"よろ圧倒的に多く見かけるが、これを音素文字にすべきでないのは、数字の"三"同様当たり前。<ミ>読み文字としては以下の赤文字。

 ↓数字は「古事記」仮名番号。📖"阿〜和"全87音素設定
⑲ミ(三の変形)(美) [萬]…美【甲】 @呉音
[㊣音]  [借訓](美砂みさご)
[㊣音]弥/彌 …「古事記」での使用は限定的。
   弥都波みつは能売神@尿の2神 …[㊣訓](鮫流みつち)…蛟
[略音]ミn… (民) [巻十九#4220]毛得奈民延都々[もとな見えつつ]
     <タ>項訓:無記載 [巻一#50]散和久御民毛[騒く御民も]
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[㊣訓][借訓] …「古事記」では常用。もちろん、"美"以上。
  (御母みおも 御命みこと 御陵みはか 御調みつき 御面みおもわ 御佩みはかし 御朝廷みかど)[㊣訓](朝廷みかど)
  (御言みこと 御諸みもろ 御在香みあらか)
[㊣訓](みこと)[勅 詔] [借訓](将見圓山みむろのやま)
[義訓](御覧みます)  (角髪みつら) 
[㊣訓]みこ [巫 誣 覡]
[㊣訓][借訓] …「萬葉集」では"美"同様に多用。
  (ー)
  (見庭みには 見貌石みほとし)

  【目系】[㊣訓][看]  [盲 眼 真 相 目 直 県]  (矚 省)
  【見系】[㊣訓][視] [覚 覓]  [㊣訓](覩) (観)
[㊣訓](監)
瞻の音は"セン"だが、訓は"みる"である。(望瞻其黒日売之船出浮海以)基本的な行為を指す同義言葉があるのに、画数が多いから「萬葉集」には不向きだが、≪漢語≫熟語として収録されている。( [巻四#729]欝瞻乃[うつせみの] )流行語だったのだろうか。
「萬葉集」は、ある意味、多様な文字を使うことで、"物理的"に文化的な広がりを感じさせようとしている所がある。単純に<見>を使うのが伝えやすいが、短い定型句に感興を凝縮させる意図を打ち出したいなら<美>文字を使って完全な音素表記にすることになる。
さらに、"見る"という言葉のニュアンスを伝えるのに適した類縁漢字を使いたいと考える詠み人もいよう。詠み人の姿勢が表記に現れることになる。📖目漢字一瞥
   [巻一#148]國見乎為者[国見をすれば]
   [巻一#27]良人四来三[良き人よく見]
   [巻一#50]食國乎 賣之賜牟登[見したまはむと]
   [巻二#148]目尓者雖視[目には見れども]
   [巻七#1276]監乍将偲[見つつ偲はむ]
   [巻七#1294]看乍偲[見つつ偲はむ]
   [巻八#1508]令覩常念之[見せむと思ひし]

[㊣訓]みなと  →[義訓]みなと
  (水分みくまり 水縹みはなた 水令飲みづか)
[借訓](水河みかは)
[約訓](水沫みなは)
[義訓](水咫衝石みをつくし 始水逝みづゆく)
  [義訓](垣楉みつかき 若月みかつき)  [㊣訓](六月みなづき)
[借訓] 三 三 三 三 三 三
    (三輪)(三行)(三禮)(三犬女)(三名之綿)
  
[略訓]
 -(あ)み… 
 -(う)み…  海   [㊣訓](海松みる) [㊣訓]わた
 -(お)み… 
 み(づ)-… 
 み(つ)-…  …満山末   [㊣訓]
 み(ね)-… 峯
 みなぶち-…  (南淵之)

≪みてぐら≫
   幣帛/[㊣訓]
≪みや≫
   宮
   [㊣訓](みやこ 京兆みさとづかさ みやづかへ)
   [義訓](離宮みや 山上み_ 王都みやこ 遊士みやびの 都宮みあらか 風流みやび)
   [借訓](宮子みやこ)
≪みどりご≫
   [㊣訓](緑児)
   [義訓](小児 若児)

mi [萬]…微【乙】 @呉音
「古事記」の1音素表記文字は以下の赤表示6種に限定しているようで、うち"身"は「萬葉集」同様に、用例は多いが訓的扱い。音=仮名として使っているのはもっぱら"微"。「萬葉集」では"微"は例外的存在の文字。
残りは、限定的用法。音として"味"は使っているものの、ほとんど意味はなさそう。
[㊣音] [巻五#848]伊夜之吉阿何微[いやしき我が身]
 かみ… <[㊣訓]神> 微 雷(鳴)
     <[㊣訓](神)酒 みき
 廻る… 微
 -のみ… 
    [義訓] 微命モロキイノチ [巻五#902]微命母[もろき命も]
[㊣音](未) [巻十八#4125]可未能御代欲里[神の御代より]
[㊣音](尾) [巻五#898]祢能尾志奈可由[音のみし泣かゆ]
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[借訓]
  佐<[㊣音]>那志尓阿波礼[さ身無しにあはれ]
[㊣訓](身潔みそぎ みそぎ 潔祓みそぎ)

  「万葉用字格」の訓項に"實"は収載されていない。
      [巻二#902]實不成樹尓波[実ならぬ木には]
[借訓]()
      [巻九#1671]礒浦箕乎[礒の浦廻を]
      [巻十一#2541]徃箕之里尓[行箕の里]
これは""の代替表記ということになろう。
      [巻二#115]道之阿廻尓[道の隈廻に]
一般用語の蓑は「古事記」では使われていないのは、風体が広がったのが後世なのだろうか。衰イメージを与える文字なので嫌字かも知れぬが。

「萬葉集」では、以下も<mi>。・・・
___轉/転 [巻三#475]廻汭徃轉留[浦廻行き廻る]
  [㊣訓]展轉コイマロビ  [臥いまろび][巻三#475 巻十#2274 巻十三#3326]
___壽/寿 [巻四#785]壽母不有惜[身も惜しからず]
  [㊣訓]イノチ [巻二#147]御壽者長久[みいのちは長く] [巻四#672]壽持[命もて]

○巳 [呉音]ジ [漢音]シ [訓]み へび [戯書]ヘみ
○n.a.「古事記」非使用文字
[㊣訓](みち)
[借訓](敏馬みぬめ)
○errors≠"み"
[㊣訓][巻十一n.a.]"相"目直而≠相見[あひみて]
[義訓][巻六#927]"散動"≠散動而有所見[騒きてあり見ゆ]

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