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■■■ 「古事記」解釈 [2022.7.23] ■■■
[568]地文・歌に加え、諺の3本建て
「古事記」には諺が4件収録されている。・・・
  故於今諺曰:<雉之頓使>是也 📖櫨の話は避けたかったが
  故諺曰:<不得地 玉作>也 📖諺"不得地玉作"とは
  故諺曰:<堅石 避醉人>也
  故諺曰:<海人乎 因己物而泣>也
諺とは、故事を用いた、ご教訓、風刺(批判)、駄洒落(言葉遊戯)であるが、上記のどれもが他にほとんど用例がなさそうなものばかりなのが面白い。従って、どのような意味なのかは想像の域を出ない。

余計とは思ったが、注をつけておこう。

諺とは、出自が古過ぎたり、世俗的と見なされる言葉なので[民間口頭流伝]、本来的には公的文章に向かないと思うが、漢籍では、"故諺有之曰:「〜」"という形式でよく見かける。(そのためか、日本国史では結構使われているらしい。)・・・

諺として、確定したのは、源為憲:「世俗諺文」1007年(3巻の上のみ残存)辺りのようである。出典が明確な慣用表現として、急速に教養言葉になったと見るのが妥当なところ。
この場合、注意が必要なのは、同じく口伝で慣用的に使われる言葉も同類に見えるが、出典不明語とは峻別できる点。従って、源為憲が公家の子弟用暗記慣用語集として編纂した 「口遊くちずさみ970年は分けて考えた方がよいと思う。(この様な書籍が必要になるのだから、朝廷には、"遊"と呼ばれる専門職集団が編成されていたことになろう。)

思うに、上記4例は、舎人でもある稗田阿礼から聞いたのではあるまいか。
舎人は、身分階位的に遠く離れているにもかかわらず、直近に伺候し、四方山話もすることになるから、この手の言葉が得意でないと務まるものではなかろうと見てのこと。上記例は現代人には訓読みが色々考えられ、意味も微妙なところで安定していないが、舎人にしてみれば単なる常套語。五七調で「お仕事大変でございますな。」を意味していた慣用語と考えてもよいのでは。
コレ、つまらぬ思いつきに感じるだろうが、「古事記」の出自に係る重要なところ。

太安万侶自身は、様々なソースに触れ、色々と知っていたに違いなく、それを取り入れていると考えるのは自然なことだが、それをピックアップして編纂と見なすのは、正しくもあり、正しくもなし、というところだからだ。
序文にソースが記載されている以上、自分勝手に取捨選択しているとは思えないから。にも拘わらず、収録譚はほとんどが脈絡無しで、包括的なストーリーに欠ける。このことは、なんらかの元ネタの事情が反映してこうなっていると考えざるを得ない。

それを踏まえると、"伝承叙事詩"たる「古事記」の核は、宮廷に於ける祭祀で語られたものである可能性が高い。個々にはストーリー性があるが、祭祀相互関係は不透明にならざるを得ないからだ。
諺は、そのような類ではないから不要な筈。
しかし、倭語の文字表記化という観点で考えると、太安万侶は、どうしてもそれを挿入したかったのでは。
想像に過ぎぬが、倭語3種と云うことで。
 地文(散文)は、音楽伴奏付きの語り。
 歌(韻文)は、メロディーを付けて詠み人が謡う。
 諺は、一般会話での知的な慣用表現。

【*】堅石 避醉人(堅磐も酔い人を避く)
  ≒馬鹿者と酒酔いはよけて通せ/除けて通せ酒の酔い
  ≒醉后思仇人 君子避酒客[五言圣賢経的古代格言(重々訂撩A賢文)]


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