→INDEX

■■■ 「古事記」解釈 [2022.8.11] ■■■
[587]シャトルの文字化について
シャトルという用語はいかにも米語的。BOS⇔LGA便というイメージが湧いたり、飛行場のバスを彷彿させられるのは高齢層で、今は宇宙飛行用語だろう。その語源は、機織り作業で膨大な数の経糸に緯糸を通すための用具(左右に飛ばす舟形の木製糸巻)で、言うまでも無く、頻繁に"往復するもの"と云う意味の名詞と化した訳だ。
おそらく、そのような機械ができる以前から、織物作業では類似の工具が古から使われており、その倭語名が<ヒ>だったと思われる。ところが、「古事記」ではこの漢字は使われず、忌服屋の天服織女が陰上を衝いて死んだということで登場してくる
<杼[木+予]
  [元義]機之持緯者
  [呉音]ヂョ
  [漢音]ショ
  [訓]ひ どんぐり
つまり、杼は団栗どんぐりの表記文字にされていることになろう。漢語では、果名(杼栗)かつ木名(橡/栃・歴木/椚)とされているからだ。📖ドングリ時代を想定していたか
それでは、「万葉用字格」はどう記載しているだろうか。
なんと、[略音]ドである。

[略音]について書いたが📖乃をノと読む場合は音とみなすべし、おそらく、読まれたほとんどの方は納得感が得られなかった筈。その程度の説明なのだから。実は、杼の解釈を知っていただくための前段でもあり、それで十分。
さて、この杼だが、常識で考えれば、漢語としてドと読むことはありえまい。従って、ドと読ませる場合、訓の"ど(んぐり)"だろうということになろう。しかし、濁音の訓が古代に果たして存在していたのだろうかと考えると、腑に落ちない面がある。それはともかく、その場合の語義は堅果に関係する筈だ。ところが、「古事記」ではそうはなっていない。
と云うか、「古事記」では、もっぱらドの音素文字として使われており、呉音かと思わせるような用法。とても訓に関係しているようには見えない。
助詞表記としても使われているが、考えてみれば、それは、まさにシャトルとしての左右転換の言葉では。
そして、"飛ぶ"鳥に見立てた名称<ヒ>であり、しかも音便で生まれる濁音表示に用いている。実によく考えられてる。
「古事記」以前に倭語を表記する方法は確立していなかったのだから、こうした用字は太安万侶考案と考えるのが妥当ではなかろうか。

【地文】
 [㊤上天石屋戸]於天之石屋戸伏"氣"
     蹈"登杼呂許志"(踏み轟[とどろ]こし)

 [⑩]各中挾河而對立相挑 故號其地謂伊杼美<今謂伊豆美也>
 [㉑]是物者今日得道之奇物 故 "都摩杼比[つまどひ]"之物
【歌ー〇どり
 [_3]【沼河日売】未開戸(婚姻拒絶)
   和杼理邇阿良米(吾鳥にあらめ)
   那杼理爾阿良牟遠(吾鳥にあらむを)
 [_5]【大国主命】嫡后の嫉妬の抑制
   蘇邇杼理能(鴗鳥の)
 [18]【伊須氣余理比賣】大久米命の目の入墨の珍奇性
   知杼理(千鳥)
 [39]【忍熊王】反逆失敗で入水辞世@琵琶湖
   邇本杼理能(鳩鳥の)
 [43]【天皇】矢河枝比売を迎えた大御饗酒宴での喜びの発露
   美本杼理能(鳰鳥の)
 [67]【仁徳天皇】異母妹 女鳥王に求愛
   賣杼理能(女鳥の)
【歌ー他】
 [_8]【豊玉比売】獻歌 via 弟 玉依毘賣山幸彦への愛
   袁佐閇比迦礼杼(緒さへ光れど)
 [16]【大久米命】地場婚姻推奨
   袁登売杼母(乙女ども)
 [18]【伊須氣余理比賣】大久米命の目の入墨の珍奇性
   那杼佐祁流斗米(何故黥ける利目)
 [28]【倭建命】初夜@所期の地
   阿禮波須禮杼(吾はすれど) 阿礼波意母閇杼(吾は思へど)
 [44]【天皇】皇子に美女を譲り渡した時
   伊耶古杼母(いざ子ども)
 [46]【大雀命】天皇から女を譲り受けて喜んだ
   岐許延斯迦杼母(聞えしかども)
 [52]【宇遅能和紀郎子】反逆者大山守命討伐成功時
   許許呂波母閇杼(心は思へど) ゝ
 [71]【速總別王】愛妻と共に最期を覚悟
   佐賀斯祁杼(険しけど)
 [79]【木梨之輕太子】志良宜歌同母兄妹婚決意
   志多杼比爾(下問ひに)
 [84]【木梨之輕太子】天田振捕囚されても尚つのる同母妹への愛
   加流袁登賣杼母(軽乙女等)
 [87]【軽大郎女】軽皇子の愛が移らぬよう
   阿加斯弖杼富禮(明かして通れ)
【名称】
 [③⑦] [弟]蠅伊呂杼はへいろど
 [⑮] 意富富杼おほほど
 [⑲] 意富本杼おほほど
 [㉑] 袁杼をど比賣
 [㉕㉖] 袁本杼をほど
 [㉙] 泥杼ねど
 [㉙] 須売伊呂杼すめいろど

 (C) 2022 RandDManagement.com  →HOME