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■■■ 「古事記」解釈 [2022.8.22] ■■■
[598]樂遊歌舞の近さ
&「古事記」には<音楽>という用語は使われていない。「萬葉集」も同様ではあるが、"佛前唱歌一首"[巻八#1594]の左注で使用されている。
  右冬十月皇后宮之維摩講
  終日供養大唐高麗等種々<音樂> 尓乃唱此歌詞 弾琴者市原王 忍坂王

このことは仏教行事では<音樂オンガク>と呼ばれていた可能性もありそう。
現代語彙の一般的な音楽の場合は単なる<樂>と表記されていたいうことになろう。問題はその読みである。
例えば、<酒樂之歌>をどう訓じるか。📖枕詞 ささなみの志賀について
[歌40]【神功皇后】天皇勝利凱旋の酒宴
    歌ひつつ醸みけれかも 舞ひつつ醸みけれかも
    この御酒のあやに歌愉し ささ
[囃子詞]
  此者 <酒樂>之歌也
本居宣長訓は宮内省式大殿祭を出典としていて、佐加-本賀比だそうだが、素人からすれば職制用語としか思えず、普通の会話でも使われそうな語彙にそのような言い回しはあり得ないと思う。そうなると、"さけ(/か)-ら(く)"はありそう。
しかし、多くのテキストでの<樂>は、素人からすると唖然とさせられる読みになっている。太安万侶がそのような表記をするものかはなはだ疑問。そんあこともあって、理由のほどは一切調べていないが。・・・
  歌舞うたまひ=楽=あそび

素人からすれば、以下の範囲で考えるのが自然であろう。・・・
<酒>[正訓]酒杯サカヅキ [正訓]ミキ [借訓]酒甞サケナム 酒見附サカミヅキ
    [正音] [借訓]琴酒コトサケ
<樂>[正音]ラカ[略音] [略音]相樂サカラク
  (訓)この-む[ギョウ音系動詞形]
   かな-でる[ガク音系動詞形]
   たのし-む(ぶ)[ラク音系動詞形]
もっとも、<樂>については既に取り上げた。📖"楽"文字の扱い
つらつら思うに、<みき_(の)たのし-び>が一般通用言葉として一番合っていそうに思うが。太安万侶が、わざわざ読みが分かりにくい文字を使うとは思えないからだ。

何由以天宇受賣者 爲<樂>・・・貴神坐故歡喜咲<樂>

[地名]"相樂"》…山代國之相樂

故 到于熊曾建之家見者於其家邊軍圍三重作室以居
 於是言動爲御室<樂> 設備食物
 故 遊行其傍 待其<樂>日 爾臨其<樂>日・・・

《酒樂》…飲酒享楽
⑯⑰㉑
《豐樂》…歲豐熟+民安樂(富饒安樂)
   共にし摘めば 楽しく[多怒斯久]もあるか
⑫㉒
《盛樂》…盛大的楽曲@志自牟之新室<樂>

確かに、歌舞・遊びと宴会的な<樂>とは、切り離せそうにない雰囲気を醸し出していることは間違いないとはいえ、儒教国なら天子が好むからその読みで行こうとなろうが、ようやくにして話語の文字化を試しているような状況の倭国ではそれは無理があろう。

ただ、他の読みが考えられないとも言えない。日本列島にはサンガ・コミュニティが古くから存在していたと思われるが、その社会では噱樂えらぎという語彙があり、上記の歡喜咲樂と同義であるのは間違いない。従って、樂をその言葉と見なすこともおかしなことではない。"宇受女"とは流浪の旅芸人的巫女であると解釈すればの話だが。
一般的には、こうした言葉を避けたいだろうから、代替用語として<うたまひ or あそび>が用いられたということなら、あり得ないとも言い切れない。後世とはいえ、白拍子や歌舞者が社会の超上層部と繋がりを持てるのだから、古代にも類似の風土があっておかしくない訳で。ただ、その痕跡を発見するのは不可能に近いとは思うが。

<遊> 元義は旌旗が目立つ巡行逍遙の姿なのだろう。

塗母乳汁者成麗壯夫 而 出遊行

河雁爲岐佐理持 鷺爲掃持 翠鳥爲御食人 雀爲碓女
 雉爲哭女 如此行定 而 日八日夜八夜

我子八重言代主神是可白然 爲鳥遊取魚 而
 往御大之前未還來

遊行於高佐士野 伊須氣余理比賣在其中

故 率其御子之状者在於尾張之相津二俣榲作二俣小舟 而
 持上來以浮倭之市師池 輕池 率其御子

故 到于熊曾建之家見者於其家邊軍圍三重作室以居
 於是言動爲御室<樂> 設備食物
 故 遊行其傍 待其<樂>日 爾臨其<樂>日・・・

天皇者此日婚八田若郎女 而 晝夜戲遊
 若大后不聞看此事乎
 靜遊幸行 爾 其倉人女聞此語言・・・

目弱王是年七歲 是王當于其時 而
 其殿下 爾 天皇不知其少王殿下
 以 所其殿下目弱王・・・

天皇遊行 到於美和河之時 河邊 有洗衣童女 其容姿甚麗

<儛>
---序文---
~倭天皇・・・列攘賊 聞歌伏仇
御大八洲天皇・・・詠停於都邑

爾 其大前小前宿禰 擧手打膝 訶那傳歌參來

後更亦幸行吉野之時 留其童女之所遇
 於其處立大御呉床 而 坐其御呉床 彈御琴
 令爲其孃子 爾 因其孃子之好

名志自牟之新室<樂> 於是<盛樂> 酒酣 以次第皆
 故 燒火少子二口 居竈傍 令其少子等
 爾 其一少子曰:「汝兄先」 其兄亦曰:「汝弟先
 如此相讓之時 其會人等 咲其相讓之状 爾
 遂兄訖 次弟將時・・・

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