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■■■ 「古事記」解釈 [2022.9.25] ■■■
[632][付録]元伊勢の意味
伊勢神宮斎宮制度は一般には天武天皇代辺りに確立したとされている。(泉皇女[天智代] 大来皇女 田形皇女)📖書誌的事項から想像すると
と言っても、10代天皇ですでに伊勢大神宮拝祭皇女が存在しており、斎宮的巫女による伊勢祭祀は古代から続いていると見て間違いなさそう。📖神宮祭祀の大胆な転換
@[10]代記載部分
 皇女 豊鉏比賣命 拝祭伊勢大神宮
@[11]代記載部分
 天皇 坐鳥取之河上宮 令作横刀壹仟口是奉納石上~宮
 皇女 倭比売命 拝祭伊勢大神宮
@[12]代記載部分
 太子 倭建命 參入伊勢大御神宮拝祭朝廷
@[26]代記載部分
 皇女 佐佐宜郎女 拝伊勢神宮
📖書誌的事項から想像すると 📖拜祭伊勢の経緯について

これだけでは、なんのことやらわからないが、当の神宮には伝承がある。信用性についてはいかんともコメントのつけようがないが、レガリアが天皇の手元を離れたのは間違いないし、突然にして伊勢に安置される必然性もないから、この情報に頼るしかあるまい。(中世神道五部書の一書 神官 渡会行忠[撰]「倭姫命世記」岩波日本思想体系「中世神道論」巻末原文口訳[by 遥音亭主人])
これは一体何なんだとしか言いようがないほど転々と鎮座處転々。

この書によれば、最初は、笠縫邑という地。比定地は数々あり、元伊勢と称することが流行った時代があったのだろう。要するに、誰もわからないということ。もっとも、それは当たり前の話。天皇の元から離れる理由が不明なのだから。

ただそのなかには、気になる場所が含まれている。笠縫駅近辺の多神社[多坐弥志都比古神社]とその2摂社 笠縫神社@秦楽寺(鏡作神社6社の南側)と姫皇子神社(御祭神:天媛日火霊神[=天照日孁大神之若魂])。さらには、三輪山西斜面の大神神社攝社檜原神社(多氏系の可能性もあるのでは)。・・・太安万侶が属す多氏が、この動きに係っていたのではないかということで。その辺りの経緯を知っているので、天武天皇から直々に命を受けることになった可能性もあろうかと。

となると、ここらを考えてしまいがちだが、伊勢神宮についての全体像をつかみ切れない以上、このような発想はおそらく無意味。少し調べればすぐわかるが、伊勢神宮の変遷史は、二転三転どころでない。しかもピンポイントなら、いくらでも情報はあるが、互いにどう繋がっているのかさっぱりわからないので、素人には手出し不可能。・・・
  ・ともかく、伊勢の地選定理由がさっぱりわからない。
    (諸説あるが、説得力不足。)
  ・大陸渡来信仰に支えられていたことがある。
    明らかな道教的流儀の祭祀
    密かな僧侶拝礼・暗黙の仏教徒神官(おそらく極楽往生信仰)

  ・一般公開に踏み切った理由も時期も記載されていない。
    本来、ご神体奉仕行為は天皇のみの筈
    私幣絶対禁忌でありながら、宮への拝礼可能

  ・天皇以外の拝祭が行われた。
    倭建命と即位前の天武天皇
  ・正宮以外に場所的に拡散する所管社が数多く存在する。
    非一枚岩組織(内外宮の熾烈な南北朝対立)
    猿田彦大神(国ッ神)も包含

  ・神域設定のコンセプトが見えてこない。
    橋の存在
    多層の瑞垣

それに、そもそも「古事記」の文脈からすると、「倭姫命世記」とは相いれない印象もある。降臨に当たって、三種の神器を賜り、御鏡を御魂として拝むようにとの詔で終わって、以後、皇孫⇒初代天皇⇒10代天皇が<同殿共床>と言えるのかは実はなんとも。
命じられたのは降臨伴神ではなく、思金神だからだ。しかも伊須受能宮(五十鈴宮)拝祭とある。天津日子番能邇邇藝命の竺紫日向之高千穗降臨とは別途に2柱の神が伊勢に降臨したと記載してあると読めないでもない。ただ、この神は御鏡か、それ以外かはわからないものの、伊勢拝祭を考えれば御鏡しか考えられない。命を受けて従わない訳もないから、太安万侶の見解は別途降臨なのだろう。国史は「倭姫命世記」に従っているだろうが、それとは異なっていることになる。
  詔者
  此之鏡者專爲我御魂 而 如拜吾前伊都岐奉
  次 思金~者取持前事爲政
  此二柱~者 拜祭"佐久久斯侶伊須受能"宮

しかし、レガリアを側に置かない王権は想像できないので、太安万侶の見解はよくわからぬところがある。
と云っても、「倭姫命世記」のレガリア手放しはさらに解せぬから、「倭姫命世記」の各地巡行とは、鏡作部製レガリアを授ける祭祀が各地で挙行されたという話と解釈するより手はなかろう。天皇が、三輪の国ッ神に神権を与えたように映っては大いにこまる訳で。
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 ---神武天皇---  
  ⓪同殿共床

 ---崇神天皇 豊鋤入姫命---
  ①笠縫邑[磯城神籬]@倭
  ②吉佐宮/余社宮@但波
  ③伊豆加志本宮/厳橿之本宮@倭
  ④奈久佐浜宮/名草浜宮@木(紀)
  ⑤名方浜宮@吉備

 ---倭姫命---
  ⑥弥和乃御室嶺上宮/美和之御諸宮@倭(桜井)
  ⑦宇多秋宮/宇太阿貴宮@大和(宇陀)
  ⑧佐々波多宮[佐々波多が門/菟田筏幡]@〃
  ⑨隠市守宮@伊賀
  ⑩穴穂宮@伊賀

 ---垂仁天皇---
  ⑪敢都美恵宮@伊賀
  ⑫日雲宮@淡海 甲賀
  ⑬坂田宮@淡海
  ⑭伊久良河宮@美濃(瑞穂)
  ⑮中嶋宮@尾張
  ⑯桑名野代宮@伊勢(桑名)
  ⑰忍山宮@鈴鹿(亀山)
  ↓@草蔭阿野国
  ⑱阿佐加藤方片樋宮@(伊勢)
  ⑲(安濃藤方片樋宮)@(伊勢)
  ⑳飯野高宮@(伊勢松阪)
  ㉑佐々牟江宮@(伊勢)

 ---伊雑宮 瀧原宮 二見----
  ㉒伊蘇宮
  ㉓n.a.@大河之滝原之国

 ---五十鈴河後の江---
  ㉔矢田宮
  ㉕家田の田上の宮
  ㉖奈尾之根宮

 ---五十鈴河上---
  ●五十鈴宮@神風の伊勢国の百伝ふ度会県


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