→INDEX ■■■ 「古事記」解釈 [2023.7.5] ■■■ [737] 太安万侶:「漢倭辞典」か゚ ⑨カ(力:加の偏)か(〃) [萬]可…迦 @漢音 ⑩ガ [萬]我…賀 @呉音 もう一歩踏み込んで考えてみたくなった。 太安万侶の" ↓現代官語 か が:175…佐賀美迩迦美(さ噛みに噛み) か が:4…和加佐祁流斗米(我が黥ける利目) か が:1…宇迦迦波久(窺はく) 【"加"類ガ】㵑 伽 駕 【"加"類の他の正音】嘉 架 𪟗 咖 嗧 䪪 㚙 妿 㚳 𡶐 㤎 㧝 拁 枷 毠 泇 㹢 珈 𥑆 痂 瘸 䂟 耞 𧊀 茄 笳 𦙲 袈 跏 鉫 𩶛 鴐 䴥 髪:27(-)か が:8…定白髮部 鹿:17(-)か が:3…酢鹿之諸男 之:1571の が:16…我之御魂 「萬葉集」では、「古事記」では濁音"が"としては用いるつもりのない"可"や"我"文字の方を好んでいるのも、どういうことだろう。現代語では なに由(ゆゑ) いづれ いかに が:4…和何許許呂(我が心) 【"可"類ガ】抲 魺 袔 碋 【"可"類カ】 あ≒吾 仮名表記"わ"[="和"]の用例無し。 が:1…蘇我臣 【"我"類の他の正音】餓 蛾 俄 哦 娥 峨 㧴 涐 抲 魺 袔 碋 【"我"類ガ】哦 莪 峩 誐 鋨 䖸 硪 皒 䄉 騀 鵝 鵞 䳘 䳗 珴 睋 歯切れが悪いのは、なんとなく腑に落ちないところがあるからだ。 太安万侶は、<何/可>と蘇我臣の"ga"音と、<賀>の"ガ"は異なる音であることを示唆しているのでは、という気もしてくるせいも。現代表記では、文字音は、<か><が>の2種類だけだが、実際の発音では少なくとも3種類あることは歴然としているので。・・・ 清音表記・・・ か [ka̠] 濁音表記・・・ が[=か + ゛] [ga] 鼻濁音表記・・・ か゚[=か + ゜] んが [ŋä/nga/gã] つまり、< 学者でもないのに、細かなことを持ち出すのは、小生は、倭語は濁音無し言語だったと見ているから。但し、音が全く無かったと考えている訳ではなく、正式な音とは認められていなかったという意味。 現代語を見る限り、濁音は発音が難しいとは思えない。しかるに、渡来語は別として、語頭には濁音が来ないとの法則は確かにありそう。これは、鉄則ありきという訳ではなく、濁音を発声するのは憚られるとの慣習遵守と違うか。言語文化伝播に於ける吹き溜まり説から言えば、鼻濁音は平安時代の貴族は多用していた可能性が高いからでもある。それは貴族としては、耳に強く響く音をできるだけ避けることを旨としていたからではなかろうか。(古い話だが、NHKアナウンサーが世紀末の話として、鼻濁音は濁音化が進んでおり、消えつつあると思われると指摘していた。マイナー化する演歌だけがそれを伝えるのかも、という論旨で。小生は、その発音の助詞が教育場面以外でほとんど話語として使われなくなってきた点の方に目を向けるべきと思うが。) つまり、コミュニケーション上、濁音はカジュアル的には結構つかわれていたものの、貴族的感性での"美しさ"という観点から、フォーマル場面では皆できる限り避けていた可能性があろう。清濁表記の峻別はしないことになっているが、能力的にできないとか、気にしていなかったということではなく、表記上の峻別はしたくないということ。 倭語の語彙は多単位音型📖なので、語彙複合化に際しては、後置語彙の頭の濁音化はわかり易い手法であり、漢語が1文字語彙から2文字語彙へと転換した際に、濁音が一気に表面化したと考えるとわかり易い。 清 ⇔ 濁 ■ ■ (C) 2023 RandDManagement.com →HOME |