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■■■ 「古事記」解釈 [2023.7.9] ■■■
[741] 太安万侶:「漢倭辞典」
非常にマイナーな扱いの「古事記」仮名を取り上げたが📖、そうなれば、もう一つ同様に扱われている文字の存在を無視する訳にはいくまい。
ゾ [萬]…敍【乙】
  也 曽 敍 矣
  [+萬]…序賊茹如鋤

<存>は小学校で覚えさせられる漢字だが、訓読みは教えていないのでは。と言って、音読みも、どう教えているのだろうか。実に悩ましいのである。

太安万侶も、どう扱うか考慮を重ねたに違いない。

用例はもちろん1件で、歌仮名。
≪存≫1(1)…許存許曾婆(こぞこそば or こそこそば) 📖

この読み方はどちらかなのかなんとも言い難し。一応、呉音としておいたほうがよいと思うが、小生の心情的には、歌なので清音で読んでいたと見なしたくはなる。
  [呉音]ゾン e.g. 存命 & 所存
  [漢音]ソン e.g. 存在(2文字化)

現代は濁音主流であるように見受けられるが、存否確認といういかにも官庁用語的な語彙が廃れることはなかろう。従って、2文字語彙の無理矢理清音化も行われており、両音ありとされている場合も多いのではなかろうか。以下の状況がその歴史を物語る。・・・
 [自]そんす(る)【サ変】
 [他]ぞんず(る)【サ変】⇒ぞんじ(る)【上一段】
 [名]ぞん(じ)

尚、文字の意味としては、現代に伝わる訓読みがすべてを物語っている。
  ある たもつ とう ながらえる

どの語義にしても、<存>文字を必要としているとは思えないが、当時の文字使用の観点からすれば、「千字文」所載(存以甘棠)なので、使っておくべき文字だろう。それに、文字構成[子+𠂇(⇒有/在 or 左)]から見て、極めて基本的な概念のようだから、倭語的感性からは遠いものの、重要な言葉と見なしていたと思われる。
   為存亡易蕩治化 [「墨子」經上]

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