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■■■ 「古事記」解釈 [2022.11.30] ■■■
[歌鑑賞58]つぎねふや山代川を川上り
【大后】志都歌之歌返皇后激怒し家出を決意
都藝泥布夜つぎねふや  夜麻志呂賀波袁やましろがはを 迦波能煩理かはのぼり 和賀能煩禮婆わがのぼれば 迦波能倍邇かはのへに 淤斐陀弖流おひだてる 佐斯夫袁さしぶを 佐斯夫能紀さしぶのき 斯賀斯多邇しがしたに 淤斐陀弖流おひだてる 波毘呂はびろ 由都麻都婆岐ゆつまつばき 斯賀波那能しがはなの 弖理伊麻斯てりいまし 芝賀波能しがはの 比呂理伊麻須波ひろりいますは 淤富岐美呂迦母おはきみろかも
⑰(5-7)-(5-6)-(5-5)-(4-5)-(5-5)-(3-6)-(5-5)-(4-7)-7

    即 不入坐宮 而
    引避 其御船 泝於堀江
    隨河 而 上幸山代
    此時歌曰

つぎねふや  📖枕詞「つぎねふ」考
山代川を  山城国の木津川を
川上り  流れに沿って上流へと
吾が上れば  吾は遡って行くのだが
川の辺に  川辺に
生ひ立てる  生え立っているのは
烏草樹を  シャシャンボの木
烏草樹の木  そのシャシャンボの木の
其が下に  下の方に
生ひ立てる  生え立っているのは
葉広  葉の広い
斎つ真椿  ゆつ真椿で
其が花の  その花は
照り坐し  照り輝いているし
其が葉の  その葉が
広り坐すは  広い様子は
天皇ろかも  大君がそこに居られるようです

この歌はその前のストーリーとどう関係するのか考えないとなんの面白味も無い。

なんらの複雑な事情も絡まない筋立て。
  皇后は、木國で豐樂用の御綱柏を採り還幸。
  ところが、その留守を狙って、天皇は八田若郎女と婚・戲遊三昧。
  大恨怒した皇后、荷を海に投棄。

  (地名譚で御津前。宮からよく見える場所ということ。)
高津宮に入らずに、御船は堀江を遡り川筋に沿って山代へ。そこで歌詠み。
・・・これだけの話を聞かされただけなら、フ〜ンで終わりだろう。ところが、ここには、聴き手を引きずり込む、サービス精神旺盛な事件が盛り込まれている。これこそ"聞かせる"叙事詩そのものと言えよう。
  宮の豐樂準備中の水取司に
  吉備國兒嶋から派遣されていた仕丁が、丁度、仕事を終え帰船中。
  そこでポロリ一言。
  皇后の船は静かにしているから知らずいるのだナ、と。
  これを耳にした倉人女、皇后御船を追いご注進。

これで、満場アハハでは。

肝心な歌の方だが、シャシャンボが肝。"草木之王"だから。📖小小坊登場には仰天
天皇の養生を取り計らっているのは自分であると誇っているようなもの。八田若郎女になにができるというのだ、と力をみせつけているようなもの。
天皇は窮地に追い込まれたことになろう。

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