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■■■ 「古事記」解釈 [2023.3.19] ■■■
[歌の意味52]神と命の概念は国史とは違う
<命>という敬称にはそれほど目を向けていなかったが、八千矛神を詠み込んだ歌を取り上げていて、考えさせられる点が多々あった。歌なので、1文字1音素表記なため、助詞"能"を使っているので、気付かされた次第。
  夜知富許やちほこ能 迦微 能 美許登 波のかみのみことはn.a.
  阿治志貴多迦比古泥あじしきたかひこね能 迦微 曾也のかみぞや味耜高彦根

以下、そんな気分で整理してみた。・・・

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≪チ≫…精気(≒spirit)
 【智】天之久比奢母智 国之久比奢母智 久久能智 八俣遠呂智
 【遲】大穴牟遲
 【知】山佐知 海佐知
     └【幸】
 【釣】【矢】
 【乳】【父】…小父(叔父 伯父)
  『乳』
  『_』東風こチ チから
  [漢語]
 チ≫
 【土】火之迦具土
 【椎】野椎 足名椎 手名椎 鹽椎
 【雷】いかっチ  📖雷神系とは禍の根源神かも
   【槌/鎚】
  『_』みっチ
 チ≫
  『_』いのチ
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ミ≫…根源(実存)   📖仮名ミの用法について(補)
 【見】大綿津見 底津綿津見 中津綿津見 上津綿津見
    大山津見 〜山津見

 ≪ミ〜≫
 【美】"美岐"(~酒)
   ↑≪[甲類]ミ≫【御 見 美 海 水 三・・・】
      ≠≪[乙類]ミ≫【身 実 微 子 味】
 ≪ミ巫女 皇子 皇女
 ≪ミチ≫
  [漢語]
  ≪ミミ≫【耳】
"見 美"の類縁として、神/人名末に付く"耳"があげられよう。例えば神八井耳。これは、多芸志"美美"命同様に、重畳化した"ミミ"ということでは。
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≪ヒ≫…部族世界的威力(≒mana)
 【日】高御產巢日 ~產巢日
    甕速日 樋速日

 ヒ≫
 【日】八十禍津日 大禍津日
    白日 庭津日 庭高津日 夏高津日

 【毘】~直毘 大直毘
    神活須毘

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≪タマ≫…気概/呪(≒soul)
 【玉】宇都志國玉  (豐玉毘賣)(玉器)
 【璵】御頸之璵…依り代
 【珠】御頸珠之玉緒"母由良邇"取由良迦志
    亦乞度所纒右御美豆良之珠/御鬘之珠亦/左(右)御手之珠
    八尺勾之五百津之御須麻流之珠
    鹽盈珠 鹽乾珠  珠二貫
    御齒長一寸廣二分上下等齊既如貫珠

       ⇒[漢文]懸鏡吐珠
  『球』
 【魂】宇迦之御魂 大国御魂
    「此之鏡者專爲我御魂」 「我之御魂」 布都御魂
    底度久御魂/都夫多都御魂/阿和佐久御魂 墨江大神之荒御魂

  『魅/谺/(霊)』小霊 木魅/蚕霊
 ≪タマヒ≫
  『(霊)魂』  …[漢語]【魂】+【魄】…(死後心身分離概念)
≪_≫
 【靈/霊】天皇深怨殺其父王之大長谷天皇欲報其靈
       ⇒[序漢文]二靈爲群品之祖  …[漢語]【鬼(神)≒死霊】
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≪モノ≫…無意識的活動体(≒anima) or 知覚対象体
 【物】如葦牙因萌騰之物 脱著身之物所生神 萬物之妖悉發
    物實因我物所成 此種種物者   取此大刀思異物
    其天之日矛持渡來物者
    食物乞大氣津比賣神 種種味物取出 故所殺神於身生物者
    乃悉追聚鰭廣物鰭狹物以/取鰭廣物鰭狹物 取毛麁物毛柔物
    山河之物
    令持百取机代之物奉出/百取机代物  物不得食愁言
    不償其宇禮豆玖之物/不償其物  禮物 御幣物
    是物者今日得道之奇物 手打受其捧物
    忍忍如此物言  思物言  白宇多弖物云王子
    因拜大神大御子物詔故參上來
    設備食物
    故諺曰:「海人乎因己物而泣也」
    物部連
    大物主

  『望能』"於朋望能農之(大物主)"
  『_』モノの怪 モノ忌
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≪ヌシ≫…至高の存在(deity) or 統治者
 【主】天之御中主
    稻田宮主須賀之八耳神
    大國主 八重事代主 大物主 一言主
    天之甕主 敷山主 山末之大主
    意富多多泥古命爲神主 宮主矢河枝比賣
    百濟國主照古王 新羅國主/新良國主/其國主之子天之日矛
    吉野之國主 縣主

  『の大人』神主
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[一般]カミ≫
 【迦微】"夜知富許能 迦微能美許登波"/八千矛~
    "阿治志貴多迦比古泥能迦微曾也" "須久那美迦微"
    "迦微能碁登"

   ↑≪[乙類]ミ≫【身 実 微 子 味】
   ↓≪[甲類]ミ≫【御 見 美 海 水 三・・・】
 【加美】闇淤加美 娶淤加美神之女 "久志能加美"(司)
  『伽未』"周玖那彌伽未(少御~)"
 【~】別天~〜~世七代
    壹拾肆嶋~參拾伍~ 泣澤女~
    黃泉津大~ 十二~
    因滌御身所生十四柱~
    八百萬~ 思金~
    天手力男~
    大氣津比賣~
    ~/稻田宮主須賀之八耳~ ~・・・

【参考】<神道>用語の元
《彖》曰:大觀在上 順而巽 中正以觀天下 観盥而不薦 有孚顒若 下觀而化也 觀天之~道 而四時不忒 聖人以~道設教 而天下服矣 
[「周易」彖伝 觀(卦二十)]
《易 觀》彖辭:「聖人以神道設教 而天下服」 正義:「神道者 微妙無方 理不可知 目不可見 不知所以然而然謂之神道」 「聖人法則天之神道 本身自行善 垂化於人 不假言語教戒……在下自然觀化服從」 [「文心雕龍義證」巻一]
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「古事記」の書き方からすると、<命>とは、神(々)からの命を受けてそれに沿って活動していると見なされた場合の"属"称のように映る。
  於是 天~諸命 以詔:
   「伊邪那岐命伊邪那美命二柱~修理固成是多陀用幣流之國」


尚、「日本書紀」の解説によれば、<尊>は天津神(高天原にいらっしゃる神々、高天原からこの地上に降臨された神々)や皇室の祖先の神々に対して用いられ、<命>はその他の神々(天津神が降臨される以前から地上に土着していた国津神)に対して用いられるとの註があるとのこと。
[神号]ミコト≫
 【美許登/美許等】"夜知富許能 迦微能美許登(等)波"
 【命】伊邪那美命 伊邪那岐命 意富加牟豆美命
    筒之男命 中筒之男命 上筒之男命 月讀命 建速須佐之男命
    多紀理毘賣命/奧津嶋比賣命 市寸嶋比賣命/狹依毘賣命
    多岐都比賣命
    正勝吾勝勝速日天之忍穗耳命 天之菩卑能命 天津日子根命
    活津日子根命 熊野久須毘命
    伊斯許理度賣命 玉祖命 天兒屋命 布刀玉命 天宇受賣命・・・

 み-コト≫ 御言
  『尊』
 ま-コト≫ 御子必眞事登波牟
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≪ノ≫
上記からすると、カミは新しく使われるようになった言葉で、チ/ミがオリジナルな倭の基本語彙であるように映る。そうだとすると、豊雲野神での≪ノ≫≒≪チ/ミ≫の可能性があろう。"野"は、神々の居る場所としての"原"の類似語と思ってしまうが、一般地名の"野"の意味があるとは思えないし、ましてや助詞である訳がない。
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