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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.10.30 ■■■

珍植物乱獲

木犀の化石の話をしたが、[→]そこでは、どうせ乱獲で、一本丸ごと化石のような良質なものはなくなっている筈と、勝手な想像をした。
それは、現在も木犀の化石商売が盛んというような話からの類推ではなく、、唐代社会でがすでに、そのような体質であることを示唆するような記述があるから。

要するに、珍しい植物はすでに商品経済の枠組み内に取り込まれていたということ。

李徳裕が整備に力を入れた庭の葉木は「平泉山居草木記」にまとめられていて、成式はそれに大いに影響を受けているとの話をした。[→]
そこで見えてきたのは、珍種を育てる造園業者が存在していたこと。桂州觀察使の邸宅の番人が、五千で木蘭[おそらく紫木蓮]の樹木を購入したというのだから。観賞用に珍しい木々が育てられており、それは商業ベースにのっていた可能性が高いということ。

そして、もう一つは、3色のシャクナゲの存在。どうみても園芸品種。

珍種人気も鰻登りだったのであろう。

言うまでもなく、新品種作出ではなく、珍しい種を見つけ、それを直ちに持ち去って、高値で売るというビジネスがすでに定着していたということ。
特に、その産が、聖山[→]であれば、より価値が高くなるから、聖山モノ獲得の動きは盛んだったのは間違いない。・・・:

洛中鬻花木者言:
 “嵩山深處有碧花瑰,而今亡矣。”

中岳嵩山の奥深い場所に、普通は赤色の花を咲かせる/浜茄子 or 浜梨/Ramanas roseで、碧的な青い色の花が咲く変種があったらしい。
それが知られた途端、採集者が押し寄せ、絶滅したのであろう。
なにせ、落葉の花木商売
[鬻]人が言うのだから、確かである。。

この一文のあとに、植物篇にもかかわらず、どうみてもそれとは無縁な話が続いている。・・・

崔碩又言:
 “常盧潘雲:衡山石,名懷。”

正七品の祭祀担当[五礼:吉.嘉.賓.軍.凶]高級官僚が言うには、それは、中岳だからの話ではない。
廬州刺史もしていた盧潘から聞かされたそうだが、南岳衡山の石も同じ憂き目とか。懐かしき石と呼びたいほどというの状況、と常に言っていた、と。


要するに、金になるなら、なんでもとっていくのである。入手方法などどうでもよいから、金に糸目はつけぬから欲しいという御仁だらけなのである。

"又"という文字が入っているのは、この文の前に以下が収録されているから。・・・

太常博士崔碩雲:
 “汝西有練溪,多異柏。
  及暮秋,葉上斂,俗呼合掌柏。”

その崔碩が言うことには、
汝水
[=北汝河]の汝陽辺りにある紫邏口辺りの絶景地"練溪"には、柏の異種が多いそうな。
暮秋になると、葉が上に収斂するとのこと。
そこで、"合掌柏"と呼ばれている。


"柏"が指す樹種はかなり広く、日本で言うところの槲樹/カシワ(ブナ系)は入らす、扁柏/檜/ヒノキ(日本花柏=椹/サワラ)側柏/児手柏/コノテカシワ+柏木/糸杉+刺柏/柏槇/ビャクシン、等が柏類の樹木とされる。

1908年に西欧人が新種として登録した、福建柏/福建檜は鱗葉交互対生で喜光性。ここで言う柏ではなかろうか。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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