表紙 目次 | ■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.11.6 ■■■ ガジュマル+スターフルーツ「續集卷十 支植下」収載の南洋的植物をとりあげておこう。・・・【倒生木】, 此木依山生,根在上, 有人觸則葉翕,人去則葉舒。 出東海。 樹木は、草とは違うから、幹を支える根は必ず地中に入る。その根が上にあるということは、"気根"をさしていると見るのが自然。 成式がそれを知らなかったとは思えないが。 → 「Banyan tree」 → 「非熱帯離島の"あごひげ"樹」 そうなると、"倒生木"とは、榕樹 or 細葉榕/ガジュマルの別名と言ってよかろう。実際、根樹とか倒吊榕根と呼ばれることもあるようから間違いあるまい。 <東海>産とされているのは、台湾の海岸縁に沢山生えていたからか。(耐潮耐風性の樹木である。) 接触刺激で葉が閉じ、そのままにしていると又開いてくるというのは、帰化植物の"衆知草/お辞儀草/Shame plant"で遍く知られているが、もともとは合歓木の類縁が持っている就眠運動の発展形でしかなかろう。それが奇妙に映るとしたら、一種の偏見でしかない。 そもそも、温度や光に対する傾性は、反応スピードは大いに違うとはいえ、成長運動では当たり前の現象。(それに、屈光性を知らぬ人などいまい。)それとなんら変わるものではなかろう。 つまり、それがたまたま膨圧運動になっているに過ぎまい。 そう考えれば、驚くべきことではなかろう。 成式は、植物には"自発的"な運動能力があるし[→「神草」]、夫々の個体にはそれなりの個性もありそう、と考えていた節がある。 それは観察力に根差したものだが、道教という土俗的信仰を覚めた目で見た結果でもある。つまり、植物にも動物同様に五感があるからこそ、そのような風土が生まれたと見ていたのでは。現代科学のドグマの一歩先を行く発想である。社会から無視され続けたダーウィンの思想(進化論の方ではなく、植物が感覚を有し判断能力と運動能力を持つとの、より重要なテーゼ。)と同根。 実際、紅花菜豆/紅花隠元/Scarlet runner bean、鳳仙花/Garden balsam、等の葉では光傾性垂下運動が見られるようだし、"花は夜開く"種などさして珍しくもないだろう。 しかし。接触刺激[Thigmonasty]に関しては、この類から離れると、例は限られる。蠅捕草や毛氈苔のような食虫植物は当然の機能だが、それ以外の例は僅少のようだ。と言っても、酢漿草/片喰/Creeping woodsorrel系では一般的現象と言えそう。 その類とされる樹木としては、熱帯性植物の楊桃/五歛子/Starfruitがあげられる。 こうして眺めてみると、ここで言う【倒生木】とは、樹種ではなく、ガジュマルとスターフルーツの混在林ではなかろうか。 (参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載. 「酉陽雑俎」の面白さの目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2017 RandDManagement.com |