■■■ 「日本の樹木」出鱈目解説 2014.1.31 ■■■

     秋冬菓子になる花木

寒い日、温泉場で、練りきりに深蒸し茶でくつろぐのもオツなもの。熱海桜が咲き、梅の蕾も膨らみ始めたとは言うものの、お菓子は白梅でなく、やはり寒椿が気分がのる。その形がなんともいえず、穏やかな気分になるからだ。
ところが、このお菓子には、複雑な事情がある。作り手もなかなか難しかろう。

と言うのは、晩秋に、山茶花も登場するからだ。両者の違いはどこにあるのと聞かれたりすると、多分、往生する。
達者な職人になると、即時応答。例えば、黄身餡に外郎仕立てと、完全な練りきりで、区別しているとか。どこまで本気かは定かではないが。
そう思うのは、花木そのものがどこが違うのか曖昧模糊としているから。

なにせ、両者、よく似ている。

公園で寒い季節に咲いているのは、時期から見て寒椿に違いないと思うが、たいていはサザンカとされている。・・・実際、園芸品種として改良された樹木ということかも知れぬが。
それに、寒椿は、素人から見れば断じてツバキ系統では無い。花が元からボトッと落ちることはなく、花弁がバラバラ落ちるのだから。雄蕊もまとまっていないし、花の印象からすれば別種。
そして、なんといっても椿との一番大きな違いは「薫」。椿には残念ながら、仄かな香りの楽しみが無いのである。従って、風情からみて、椿の和菓子は、錬りきりではなく、艶々した葉にのせた清楚な感じがする椿餅がよかろう。 [→ 如月の和菓子作り 2009.2.18]

もっとも、こうした感覚は江戸風かも。
もともと「寒椿」とは江戸のキャッチコピーらしい。「冬山茶花」では情緒がなさすぎるからだろうが、実に秀逸。椿と違って、縁起でもない首落ちがなくなったし、香りまでついてくるとなれば、ソリャ絶大な人気も湧こう。
しかし、関西では、椿ではないものを椿とは呼びたくはなかったようで、あくまでも山茶花という名称にに拘ったようだ。サザンカをツバキとされたりしたら、古代から連綿と続く「都婆岐命」感覚を逆撫でされる気分になるのかも。 [→ 呪術木 2012.10.9]
おそらく、自生の山茶花に藪椿を交配させたのだろう。逆ではないと思う。(自然交雑種をブラッシュアップした可能性もあるが。) ともあれ、一般的には、園芸品種名的に「獅子頭」と呼ぶらしい。

コレ、江戸っ子にしてみれば、厳つい名前でさっぱり面白くなかったろう。そこで、和の山茶花に渡来の唐椿を掛け合わせたりして、思ったものを作りあげたのだろう。要するに、余り大きくならない手の品種を作ったのである。・・・いかにもありそうな話では。もっとも、作り話を信じさせて大いにほくそえんでいる御仁がいたりして。
尚、植物学者は別種扱いしているとの記載を見かけるが、本当かネ。亜種と違うか。

【都心で冬の花木を眺めたい場合】
皇居東御苑をお勧めしたい。花だよりの地図と開花状況が細かく掲載されているのでご覧になるとよい。それに、ほとんどの樹木に銘板がついているのがことのほか嬉しい。名の知れぬ木とのご対面は実に寂しいものである。尚、梅の開花時期を除けば、人影は極めて少なく、冬枯れの雑木林を、しみじみと散策が可能。このような場所は貴重。

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