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2007.2.14
 
 


政治家の発言をどう見るか

 政治家の発言といえば、厚生労働相の発言問題で大騒ぎだったが、それよりは防衛相のイラク開戦批判と、外相のイラク占領政策幼稚発言の方に注目したい。

 両者は全く性格が違う。

 厚生労働相の発言とは、話の途中で、つい口から出てしまっただけ。
 もっとも、女性の怒りをかったから、このまま選挙に入れば与党敗北は間違いなさそうだが。

 一方、防衛相の方は、日本記者クラブの会見での話。明確に言い切っている。
 「核兵器がさもあるかのような状況でブッシュ米大統領は踏み切ったのだろうが、その判断が間違っていたと思う」と。(1)
 常識で考えれば、軍事同盟の一方の責任者が、こんな発言をするのは不穏当そのもの。日米同盟の根幹を揺るがしかねない。個人的な想いをつい語ってしまうような人は、防衛相として不適との声があがるのは当然だろう。
 実際、米国務省のズムワルト日本部長が「大統領を批判するような発言が繰り返されれば、日米安全保障協議委員会(2プラス2)の日程設定が困難になりかねない」と述べたそうだ。(2)

 まさか、そんなことがわからない政治家でもなかろう。
 これは、用意周到な計画的発言ということだ。

 外相の発言も、一寸目には、ポロリ型の失言に映る。そんな雰囲気を感じさせる人でもあるが。
 しかも、官房長官が「外相発言はイラク武力行使の批判でない」と記者会見で説明したし、外務省も同様の説明を駐日米大使館に行ったとされる。(3)
 だが、外交責任者が、米国の政策を「非常に幼稚だった」と発言したのは事実である。理由なく、こんな言葉を使うとは思えない。北東アジアでの動きを見て、周囲からどんな反応があるか“探り”を入れようということか、変化に鈍い人達に警告を発したと見るべきだろう。

 要するに、防衛相と外相が、米国の役割が変化しつつあるので、続けざまに、意図的な“失言風”発言をしたということ。

 これは、米国が、東アジアを中国に任せる方向に進んでいることに対する、日本の政治家の素直な反応だと思う。
  → 「東亜共栄圏構想 」 (2007年1月22日)
  → 「米中蜜月時代突入か 」 (2007年1月18日)

 そんなことを強く感じたのは、政治家の発言がもう一つ出てきたからである。

 台湾のゴッド・ファーザー(台獨教父)、Lee Teng-hui(李登輝)元中華民国総統が、突然、統一派のメディア(壹週刊, TVBS)の単独インタビューに応じての一言だ。
 「我不是台獨 也從來沒有主張過台獨」(5)
 要するに“Taiwan is already an independent state.”(4)というもの。すでに民主主義を通じて独自な政治体制を実現しており、やたらに台湾独立を強調して波風を立てるなと言い出したのである。
 台湾正名運動の勢力には、すでに独立状態であることを統一派に主張しただけ、と説明できるし(6)、統一派には独立運動を放棄したと読んでもらおうという、複雑な発言だ。癖球を投げつけたのである。
 しかし、現実は、二国論を葬りさる動きと言える。この発言の波紋をじっと眺めてから、大陸に渡って、中国首脳との直接会談へと進む目論見だと思う。
 なんとなく予感がしたが、こんなにも早く、というのが正直な感想である。

 1972年のニクソン訪中を想起させる動きである。
 中国と北朝鮮が強固な反米軍事同盟体制を敷いているとの報道が流れている最中に、突然、反共のリーダー、米国大統領と周恩来・毛沢東との会談が実現し、米中平和五原則がまとまったのである。
 日本政府は「頭越し外交」に仰天したが、すぐに適応。北朝鮮の金日成政権は「裏切り」に憤慨する。
 政治とはそんなものである。

 いよいよ、北東アジアの地殻大変動が始まったようである。

 --- 参照 ---
(1) http://www.sankei.co.jp/seiji/seisaku/070124/ssk070124005.htm
(2) http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070129.html
(3) http://www.sankei.co.jp/kokusai/world/070205/wld070205002.htm
(4) “Lee Teng-hui's epiphany” The China Post [2007.2.4]  http://www.chinapost.com.tw/news/archives/editorial/200724/101736.htm
(5) 「李登輝否認□台獨、想訪大陸、讚胡錦濤」聯合新聞網---期限過削除[udn.com/NEWS/NATIONAL/NAT1/3710504.shtml]
  「李登輝:從未主張過台獨」中華日報--- http://news01.cdns.com.tw/20070201/news/zyxw/733500002007013121375518.htm
(6) http://www.ritouki.jp/news/lee20070131.html


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