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2007.4.18 |
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イラクはいよいよ正念場「イラクはいよいよ正念場」と書くと、いかにも米国議会とBush政権の間で繰り広げられる米軍撤退の話をするように思ってしまうのではなかろうか。そんな話をしていると、開戦前夜の議論を忘れてしまうのではなかろうか。 なにごとにも飽きっぽいのが日本の特質だが、世界の動きを見る目を養う上では、ふりかえって考える必要がありそうだ。 その場合のポイントは、イラクが保有する膨大な原油埋蔵量だ。しかも、生産コストでも圧倒的に安価な筈。 イラク問題とは、この利権をどうコントロールするかということでもある。 → 「イラク戦での同床異夢(1)」 (2003年3月29日) 、 「イラク戦での同床異夢(2)」 (2003年3月30日) 2002年末に行なわれたシナリオ作成手法にもとづいた議論、「イラク戦争後の中東石油シナリオ」(1)でふりかえってみると頭の整理がつくかもしれない。 現実と多少の齟齬はあるものの、ほぼ予想通りである。 ・石油省組織の機能は重視される。 ・国内の政治情勢は安定化しない。 ・不満の矛先は占領勢力の米軍に向けられる。 ・自由選挙実施によりシーア化現象がおきる。 ・米-イラン関係の緊張が高まる。 その一方、イラク旧勢力の反撥が高まり、テロが横行し、イラク国内の治安悪化が続く。 ・投資リスクは非常に大きいので油田開発は進まない。 ・イラク原油増産は遅れるので、サウジアラビアを始め、他のOPEC諸国はメリットを享受する。 ・イラクの自由選挙が実施される。 これが、サウジアラビアを始めとする中東産油国に影響を与え、民主化の動きが現れる。 もっとも、以下はまだわからないが。 [長期的には、イラクの政情が安定すると見込まれ、石油生産能力の活用は進む。] ・・・ただ、このシナリオ、クルド民族がどうなるか、書いていないので注意が必要だ。 本当は、ここが一番の焦点ではないのか。 クルディスタン国家樹立に向けて動くクルド人勢力が、イラク中央政府と平和共存を図れるかで、膨大な原油埋蔵量があるキルクーク油田地帯の安定化ができるかが決まるからだ。 イラク泥沼化の見出しはとびかうが、Bush政権からすれば、損失は大きかったが、これさえ上手くいけば、十分な見返りは得られたと言えないこともない。 テロが横行して、“悲惨なイラク”との印象を持つ人が多いだろうが、そんな状況は世界では珍しいものではない。それ以上にひどい国は少なくない。 世界経済に余り影響を与えそうにない貧国では、内戦があろうが、放置したままだ。厄介な問題は、皆。そしらぬ顔。 このことは、イラクで混乱が続こうが、石油以外の問題は、先進国にとっては本来なら関心は薄いということ。 イラクでの関心事項とは、キルクーク原油とシーア派の南部産原油がグローバル経済システムに組み込まれるかどうか。 Bush政権にしても、テロリストを支援しかねず、グローバル経済システムに反旗を翻しかねない政権を打倒し、イラクの原油を市場経済の下に戻すという目的さえ達成できれば、後はどうなろうとたいした問題ではないということ。 これが冷徹なリアリズムの目から見たイラク戦争の実像だと思う。 こう考えると、Bush政権は、正念場を迎えているといえよう。こんな時に、米軍撤退の話を始める訳がない。 言うまでもないが、2007年2月に閣議了解された「石油法」原案を成立させることを最重要課題に位置づけているということ。(2) 法案内容が開示されていないのでよくわからぬが、Bush政権が望みそうなことは、素人でも想像がつく。 ・イラク政権は生産量をコントロールできない。 (OPECによる産油量調整機能の壊滅) ・開発や産油量調整を決定する組織には、必ず、欧米の石油関係者が加わる。 ・法律の実効期間を長期とし、契約変更を難しくする。 そのために、クルド族地区とシーア派地区の新規油田を、自治政府管理にして、既存の中央政府管理油田を民営化するようだ。 ともかく、イラク側が一本にまとまって、先進国に対抗したりされるとこまる。これができない法案にすれば十分だろう。 流石に、ひどい内乱状態では原油開発ができないが、政治的分裂はもともと大歓迎なのだ。 石油法案さえ成立すれば、米軍はいつ撤退してもおかしくない。 --- 参照 --- (1) http://eneken.ieej.or.jp/data/pdf/692.pdf (2) Zalmay Khalilzad(U.S. ambassador to Iraq): “A Shared Stake in Iraq's Future” Washington Post [2007.3.3] http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/03/02/AR2007030201143.html Steve Negus(Iraq Correspondent): “Iraq approves draft oil legislation” Financial Times [2007.2.26] http://www.ft.com/cms/s/1a891828-c5e7-11db-b460-000b5df10621.html 政治への発言の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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