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2008.5.18
 
 


1ドル100円でも経常収支大幅黒字…

 2008年初頭、大田経済財政相が、残念ながら、もはや日本は『経済は一流』と呼ばれる状況ではないと発言した。危機感がありそうに聞こえたが、オープンな経済、地域に根をはるサービス産業の振興、人材の力を高めるというスローガンだけで、実がない話だった。
  → 「日本株さらなる低迷か 」 (2008年2月4日)

 その後になにか提起するのかと思っていたが、さっぱりである。一般財源化の議論に紛れて知らん顔でなければよいが。
  → 「期待するしかない討論会 」 (2008年2月15日)

 それはともかく、民主党の頑張りで、自民党が何を考えているか見えてきた。
 破綻した財政再建を進めるために、増税と、歳出カットのどちらで行くか、意見が大きく割れているようだ。と言っても、小選挙区制度のため、議員は党にしがみつく。まともな政策など作れる状況にはないということだ。
 このことは、増税、歳出カットのどちらに振れようと、集票目当てに税金が使われるということ。従って、どちらを選択しても、国内経済のさらなる低迷を招くことになろう。その点を無視した、エコノミストの議論は意味が薄い。

 そんなことをつい言いたくなるのは、エコノミストの理屈が全く成り立たないことが見えてきたからである。
 おわかりだと思うが、日本の経常収支の話である。
 日本の経常収支黒字幅は次第に減少していくとの話は昔から聞かせれ続けてきた。高い貯蓄率が保てなくなると、ドラマティックに変化するという、それこそ“教科書的”な理屈が根拠だ。しかし、すでに貯蓄率は低下済みだ。にもかかわらず減少の兆候どころか、巨額な黒字が計上され続けてきた。円安もあるが、2008年第1四半期の数値が発表されたが、たいした影響は出ていない。1米ドル100.79円でも、大幅黒字基調は変わらないということだろう。

 本来は、こんな時こそ、経済財政相が将来について発言すべきだと思うが。

 しかたないから、ビジネスマン的な視点で、状況を眺めてみることにした。おそらく、こんなところではないか。
・中国経済好調のお蔭で、
 輸出量は堅調に伸び続けている。
 これに伴う原材料輸入も増えた。
・輸出品の競争力があるため、
 原材料価額の高騰を、
 製品価格に転嫁できているようだ。
・保護品目を除けば、世界的に見て、
 日本市場の貿易障壁は低く、
 輸入量は着実に増えている。
・ただ、国内消費は低迷が続いているため、
 貿易収支の大幅黒字は続いている。
・グローバル展開している日本企業の海外子会社からの
 直接投資収益や特許料収入が着実に増加している。
・純証券投資からの収益が急増している。
 その額は貿易収支を超える。

 要するに、貿易黒字分を海外に投資し続けてきた結果、かなりの規模に達してしまい、この収益が大きく寄与しているということ。

 早い話、マクロで見るなら、経済グローバル化の波に乗っているセクターは、あいかわらず、一流を保っているということである。ここを間違えてはこまる。
 この流れと全く無縁なのが、多くの国内セクター。こちらは、はなから一流どころではない。このセクターが生産性低下の道をひた走っているということ。お蔭で、全体では一流どころではなくなったというに過ぎない。
 なにせ、規制で守られ、補助金三昧の産業もあれば、税金で仕事を作ってもらうだけの産業も少なくない。こうした産業に発展性がある訳がなかろう。
 実際、競争力あるグローバル企業でも、政治力もなく、販売チャネルを握れないと、国内ではたいした収益をあげられないことが多い。これが国内産業の現実である。
 つまり、かつてのように、給与を上げることで、消費を増やし、産業が活性化するという好循環は全く期待できない状態なのである。給与を上げれば、それでなくても低収益な国内事業はさらに悪化する。当然ながら、企業は、国内投資を避けるしかない。要するに、雇用が失われるだけのこと。予想されるのは、悪循環である。

 そんななかで、政権党は、日本をどんな国にしようとしているのだろう。
 これがさっぱり見えないのである。こまったものだ。

 国内消費低迷は放置するしかなく、とりあえず道路などの土木工事で雇用を確保し、後は成り行きまかせということだろうか。
 そうなると、貿易黒字が続くうちに、できるだけ海外に投資し、将来は、そのリターンで食べる“老人”的な国を目指すしかあるまい。
 もし、そうだとしたら、ごく一部のグローバル企業にさらに頑張ってもらい、皆がそれにぶら下がって食べていくということ。そんな仕組みで、グローバル企業が競争力を発揮し続けることができるのだろうか。

 --- 参照 ---
(財務省報道発表) 「平成20年3月中 国際収支状況(速報)の概要」 [2008.5.14] http://www.mof.go.jp/bop/pg2003.htm
(図のデータ元) 「国際収支状況」の推移 http://www.mof.go.jp/bpoffice/bpnet.htm


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