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2008.8.8 |
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漁業問題を語る理由…漁業の話をしたが、真意はなかなか伝わらないものだ。農業問題と一緒に考えて欲しくないのだが、そう読んでくれない人もいるからだ。文筆業ではないし、推敲もしないから、やむを得ないところはあるが。 → 「日本の漁業は救えない 」、「続」 (2008年7月28/30日) と言う事で、わかりづらかったかも知れないと思い、もう一言つけたしておくことにした。気がかりな点があるからご留意のほどということ。 くどいが、もう一度、日本の漁業問題を確認しておこう。 ・資源を獲り尽くす漁業を続けてきたため、ついに資源が枯渇してきた。 ・続けることが難しくなっているにもかかわらず、現行の漁業体制を変える気はない。 言うまでもないが、海は、漁民にオープンな“共有地”だから、黙っていれば乱獲は避けられない。この現象は昔からよく知られており、日本特有の問題ではない。(1)そして、規制の合意形成は簡単にはいかない。従って、日本の漁業関係者は、どの国でも同じような状況だから致しかたあるまいと考えているかもしれない。 しかし、そうはいかないのである。サミットでわかるように、日本は、環境保護でリーダーシップ発揮を要求されている立場にあるからだ。もう乱獲を続けている訳にはいかないことを認識すべきである。 例えば、日本国内の漁業資源枯渇や、養殖漁業用輸入餌の調達難が報道され始めたら、どんな印象を与えるか考えてみるとよい。このまま日本の動きを放置していると、世界中の水産資源を獲り尽くしかねないとの危惧の念が浮かぶのではなかろうか。・・・一人当たりGDPが高いにもかかわらず、日本の消費者や企業は、自分達が魚を安く食べるためなら、どんなことでも容認するとのイメージができあがりかねないということ。 何故、こんなつまらぬことを心配しなければならないかと言えば、WTOの交渉が決裂したからである。これは、ブロック経済化阻止の機能が失われたことを意味する。 過去を振り返れば、このような時、異質な民族を敵視する動きが勃興している。単純な類推にすぎぬが、同じような流れが生まれない保証はない。 嫌な予感がするのは、すでに、世界のマグロを食べ尽くしかねない国と見られている可能性が高いからだ。以下のような点を考えれば、鮨文化が世界に広がったことを喜んでいる場合ではなかろう。 ・2005年10月、日本船のミナミマグロ漁獲量違反が摘発された。 (資源量低位の魚種での行為だから資源保護運動家の怒りをかったに違いない。) ・オーストラリアとの資源争奪にあけくれている印象を与えている。 (オーストラリアは畜養型漁業を推進しているので利害が相反するようだ。) ・漁獲規制に対応して減船したことがあるが、漁獲量の歯止めにならなかったかも。 (枠に余裕がある海外に船を売却すれば、世界全体でみれば減らない。) ・Flag of Convenienceによる他国名義漁獲を規制せよとの要求を浴びてきた。 ・違反操業国から輸入しているとの声があがっている。 (輸入量と輸出量の齟齬からデータ確認調査が行われているようだ。) ・条約未参加国の流通状況が不明瞭である。 (国際的産地偽装の疑いがあるようだ。) こんな状態でのんびりしている訳にはいくまい。マグロ資源保護外交を強化する道しかなかろう。 先進国では、企業や一般消費者も環境保護の責務を負わされる時代に入ったのである。そんな時に、マグロを安く食べるためなら、環境などどうなろうとかまわないと考えていると見なされる訳だ。 ことはマグロだけではないかも。 一魚種で品質規格に合ったものだけを購入する“特殊”な国が、世界から魚を買い漁っており、こんなことでは資源が枯渇しかねないとの見方が広がる可能性も否定できないからだ。自分達が好きなものを食べるためなら、なんでもやりかねない輩とされてしまう。 日本人は、環境を壊しかねない、異質な民族との主張に納得感が生まれでもしたら大事である。 --- 参照 --- (1) Garrett Hardin: “The Tragedy of the Commons” Science [1968] http://www.sciencemag.org/cgi/content/full/162/3859/1243 (外務省のマグロ漁業の取り組み) http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fishery/tuna.html (漁業問題の全体感がわかり易い記事) Alex Renton: “How the world's oceans are running out of fish” The Observer [2008.5.11] http://www.guardian.co.uk/environment/2008/may/11/fishing.food (船のイラスト) (C) Free-Icon http://free-icon.org/index.html 政治への発言の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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