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2014.8.29

世界不安定化に邁進するオバマ政権…

今、我々が直面している問題の全体像を的確に示した、オバマ政策の批判が登場した。小生は、その通りだと感じた。
(著者は、UNEP(国連環境計画)でも金融分野で活動している精華大学の非常勤教授。近著は"From Asian to Global Financial Crisis"。)

もちろん冴えわたる分析という手の論説ではなく、分かり切った単純な話でしかないのだが。・・・
  In a recent speech,
  US President Barack Obama declared that
  the question is
   not whether the US will lead,
   but how it will lead.
  But,
   as creed, clan, culture, climate, and currencycause the world
    to become increasingly alienated from the US-centric international order,
   such declarations may be excessively optimistic.


5つの問題のどれをとっても、オバマ政権は世界の不安定化を狙っているとしか思えまい。
サミュエル・P・ハンティントン「文明の衝突」での、歴史観に名を借りた、米国の政策提言通りに動いているだけかも知れぬが。

そのRecapということで。もちろん勝手に解釈し、余計なコメントを加えてだが。

Religion or creed
これは最大の問題。

特に、イスラム教徒内部での思想対立は熾烈を極める。誰が考えても、原理原則的な違いが認められる。従って、信仰篤き社会である限りは平和共存は難しそう。
  「素人的なイスラム教分派分類」
  ・強権的支配の擬似的「世俗派」
  ・反西欧文化の「厳格派」
  ・部族の風土維持を重視する「伝習派」
  ・普遍主義を貫き革命を狙う「聖戦派」
そして、これらとは発想が根本的に違う、解釈主義否定宗派の存在が対立に拍車をかけることになる。最良の宗教者を指導者として仰ぐ政権以外は、打倒の対象とせざるを得ない信仰だからだ。上記の宗派国家の権力者との摩擦はただならぬものとなる。
  ・宗教国家主義の「宗教指導者独裁派」
オバマ政権はこうした宗派対立を煽る方向で、対イスラム国政策を進めてきたとしか思えない。

結果、今では、同盟国から敵対国まで、どこも反米感情蔓延状態のようだ。その上、どの政権も、オバマ政権を全く信用していそうにない。なるべくしてなったのである。
どう見ても、この地域からの足抜けを画策しているとしか思えない所行。後は野となれ山となれの無責任施策である。その代償はとてつもなく高くつくと思うのだが。

聖戦主義勢力は、もともと、ナイジェリアや、東南アジアでの活動で有名だったが、派手だが小さな動きだった。裏で大国が支援してくれなければ、独自の資金力が無けれえばたいしたことができる訳もない。それが、そうはいかなくなったのである。宗派対立が煽られたから、「聖戦派」をも上手く活用しようということで、そこに潤沢な資金が流れ込んできたのである。オバマ政権はそれを知りながら黙認。米国は警察官ではないから、自分達のことは自分達でどうにでもという態度をとった訳である。
しかも、先進国にも、イスラム内部暗闘の激化を狙う人達が存在していそうとくる。イスラム圏が混乱している方が、資源取引の交渉上有利になるし、兵器商売のチャンスもでてくるからだ。

米国がどうにでもなれ的姿勢ということで、当然ながら米国などあてにせず、各国はそれぞれ独自で動き始めることになり、そのうち中東は滅茶苦茶になろう。すでに、国境を越え聖戦派を叩く軍事行動が始まっているとの報道もあるのだから。
こうなると、もう措置なし。

Clan
エスニック問題は手のつけようもない状態に。

ソ連の崩壊はとてつもなく厄介な紛争発生を引き起こすことは当初からわかっていた筈である。15ゲームのように民族分断と移動をさせたスターリンの施策で、至る所に支配民族たるロシア人の島があるからだ。
にもかかわらず、ウクライナに手を突っ込む。民主化可能な土壌など皆無なのを知りながらである。悪辣な政権だろうが、知らん顔で世界の安定を図るというのが政治家の役割かと思いきや、真逆。かつてのソ連との世界分割交渉では、西欧はスターリンにハンガリーを「ご進呈」した訳だが、今度はウクライナ問題をプーチンに「ご贈呈」しようということのようだ。
   「バルカン・ウクライナの動乱の見方」 [2014.7.30]

欧州では、民族紛争に起因する戦乱を避けるため、国境問題を凍結させる一方で、民族自立運動抑制に努めてきた筈だ。
しかし、やはりバルカン半島では火を噴いた。というより、小生は、バチカンがイタリア地続き地域の民族独立を促したことが発火点になっていると見るが。「部分」で見れば、いかに正当であろうが、それは大規模戦乱に繋がるのは自明。にもかかわらず敢えてその道を選ふ人達がいるのである。それをいかに抑えるかが政治手腕ではないかと思うが、逆だったのである。

「アラブの春」の動きの低劣さも目に余るものがあった。
悪辣で腐敗している独裁政権が、部族や聖戦主義者を力で強引に押さえつけている現実を知りながら、その打倒に手を貸すのだ。都市の民主化勢力が政権の座につける訳がないにもかかわらず。その後はどうなるかは初めからわかっているというのに。
シリア内戦にしても、「イスラム国」の台頭などありえないという顔で通した。なにせ、聖戦勢力などほとんど存在しないかのような態度で臨んでいたのだから。こうした勢力への対策を打たせない方針をだったのは間違いない。従って、イラクまでその勢力が広がったのは当然の帰結と言えよう。

もっとも、西欧内部でもエスニック問題は収まる気配が無いのだから、そんなことを気にかける必要なしということか。スコットランドやフランドルだけでなく、移民激増にともなう国内摩擦も厳しくなっており、ここに火がつけばえらいこと。
そもそも、多民族国家に成らざるを得ないのに、民族自決というコンセプトが一人歩きしている状況を放置すること自体がおかしいのであるが。

アフガニスタン-パキスタン-インドなど、上記2つの問題が絡みあっていて、どうにもならぬ。本格的構想は「核戦争」に陥るから、両者とものに大規模戦乱に歩を進めることはないとの論理が通用するとされているものの、根拠薄弱である。オバマ政権はここでも知らん顔をすることで、火を放つ可能性がある。それが、意図的か否かはわからぬが。

Culture
Climate change
グローバル化とは、欧米文化、なかんずく英語圏が生み出した仕組みのもとで活動することを意味している。その代替案が無い以上、それを受け入れるしかない。
当然のことながら、歴史的背景が異なるのだから、それぞれ独自の制度を持つのは当たり前。社会風土が全く違う地域はそこらじゅうにあるのが現実。そのなかでの、グローバル化である。
市場獲得競争が行われ、枯渇しつつあるエネルギー/水や食糧を争奪するのだから、国際紛争の種は尽きない。
まあ、水問題は大変なこと。昔から、水とエネルギーは死活問題であり、戦争の引き金になってきた訳だし。
「比較優位」理論を理想論として葬り去りたい人が主流化して来た訳で、WTO頓挫だし、TPPも先が見えない状況。明らかに国際紛争は拡大基調にある。
世界貿易のバルカン化との指摘がなされているが、当たっていそう。オバマ政権の動きのお蔭で、そちらに進むしかないのだから。

Currency
金融緩和で経済に喝を入れる手は、お気楽な策だから、先進国の十八番になっている。結果、新興国へ資本が流れることになり、経済規模上その額が膨大となるから経済は不安定化する。
換言すれば、こうした資金の流れをコントロールすれば外交の武器になる訳で、オバマ政権のお好きな手法である。事実上、ドルが世界通貨であるから、その威力には抵抗できない訳だ。

(Opinion) "The Coming CLASS War" by Andrew Sheng AUG 14, 2014 PROJECT SYNDICATE AUG 14, 2014
(オバマ大統領演説記事) 「米国は慎重に力を行使すべき=オバマ大統領」 By COLLEEN MCCAIN NELSON 2014年8月27日 13:32 JST WSJ日本語版
(中東の動きの記事) 「エジプトなどがリビアのイスラム勢力空爆、欧米は介入に反対」 ロイター 2014年 08月 27日 11:44 JST


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