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2005.7.11
 
 


次世代DVD規格の噂話…

 マイクロソフトがDVDの次世代規格分裂に乗じて家電業界入って来るぞと語って、次世代光ディスク規格の統一をはかった人達がいたという。業界外の“知恵者”が仲介者として登場したとの噂話である。
 どこまで本当かわからないが、未だに、古い体質の人達が闊歩していることを示唆していることは間違いないと思う。

 実は、この噂話のハイライトは、マイクロソフトではない。業界外の“知恵者”が登場して、0.3mmで統一してはどうかと両陣営に言ったというのである。
 よく知られるように、両規格は、記憶層の深さが違う。0.1mmと0.6mmである。だから、真ん中にしたらという論理らしい。
 まさに冗談としか思えない話だが、そんなことを言いかねない人達がいるのが日本の状況である。

 言うまでもないが、コストメリットと既存ディスクとの互換性を重視すれば、現行DVDの深さ0.6mmを維持すべきという結論になる。
 一方、現世代の0.6mmを止め、光を絞り込めるように浅くして容量をあげようとの考えが0.1mm派の考え方である。
 この意見の違いがあるなかで、0.3mmにする理由などどこにもない。統一するなら、どちらかの深さしかありえない。
  → 「次世代DVD規格への奔流」 (2002年11月11日)

 今の一番の問題は、次世代DVDの将来にわたる位置づけが、はっきりしていない点にある。
 従って、“知恵者”は、この考え方を整理するのかと思ったら、なにもしなかったよう。0.3mmが駄目なら、片方に圧力をかけて止めさせようとしたらしい。しかも、稚拙な方法だったと聞く。

 日本では、技術の流れに全く関心もなく、時代感覚が欠如していても、“知恵者”と称する人が仲介役として登場してくる。
 最悪である。マイナス効果しかないのだが、何時になったらそれに気付くのだろう。
 日本規格が標準化でリーダーシップをとれない理由の1つはここにあると思うのだが。

 仲介役は、両者の論理基盤である「シナリオ」に対して、独自の見解を示すことで、歩み寄りの道筋をつけるべきなのだが、そんなことができる人がいないのである。できることといえば、損得勘定のリストを作って、落としどころを探るだけ。
 次世代DVD規格の分裂とは、動画の将来をどう見るかという問題と同義である。ハイビジョン(1080p)の先がどうなるか語らない限り、調停などできるとは思えないのだが。

 どうしてこんな状態が続くかといえば、標準化とは単なる覇権争いと見る人達が主流だからである。そのため、常に政治的決着で図ろうという動きが発生する。
 そんな政治屋の手で規格統一を図る位なら、2つの規格が競争し合って市場創出を狙う方がずっとましだと思う。

 技術の進展のお陰で、BDとHD DVDの違いなど僅かである。どちらが標準になったところでたいした問題ではない。
 重要なのは、どのような市場を考えているのかだ。

 すでにわかっている利用場面ならいくらでもコメントできる筈だ。
 そして、これが、将来、どう変わるか。他はどんなものがあらわれるのか。それは何時ごろか。そんな流れを考えればよい。
 その過程で、規格はどうあるべきかが見えてくる。

 別に難しいことではない。こんなことは、素人でもできるのである。
 現実の利用場面を素直に見るだけのことだ。その上で将来像を提起するだけ。単純な話である。

 例えば、・・・

 ● ハイビジョン放送の録画
 現行のDVDでハイビジョン録画は容量不足。すぐにでも次世代DVDが欲しいだろう。  しかし、先ずはハードディスクに録画し、その後にメディアに移す方式が主流となりつつある。これが本流となるなら、メディアの容量より、低価格で高速書き込み可能、かつメディア管理が簡単なものが喜ばれることになる。少なくともG当たりの実売単価が高ければ、買う気はおきまい。
    現在の状況からいえば、著作権対応のCPRMが15円程度である。
    - DVD-R Videoが安価品で6円(8倍速)、ブランドもののデイスカウントで15円程度、ハイスペック品でも25円近辺
    - DVD-RW Video CPRMでも安価品で15円、ブランドもののデイスカウントで70円程度
 ハイビジョンでは1番組当たりのデータ量は桁違いに多い。著作権保護のために、録画しても他の機器での再生が面倒になってくる上、お金がかかりすぎると、録画文化は廃れる可能性もある。オンデマンドのネットワーク配信へと流れは変わるかもしれないのである。
 著作権問題を考えれば、メディアへの録画ではなく、各家庭にハードディスクのサーバーが置かれるよう姿の方が納得性が高い。
 ・・・いったい、将来はどうなるのか。
 というより、将来はどうしたいのか、「思想」を鮮明に打ち出すべきだろう。

 ● メディアを購入して視聴
 高精度ディスプレーの普及が進んでいるから、コンテンツビジネス産業界は、これに対応するROMメディアを早く売り出したいだろう。新しい機器の購入者は、間違いなく対応するコンテンツを試しに買う。今のままだと、そのチャンスを失いかねないから、急ぐ企業が存在するのは当然だろう。
 しかし、ROMを作る企業が本格的に次世代メディアを提供する気になるかははっきりしない。ドライブば無ければメディアは売れないし、メディアが揃わなければドライブも売れないという関係があるから、かなり高いハードルである。
 常識で考えれば、ROM側の姿勢で大勢が決まることになる。
  → 「次世代光ディスクの争点を見る」 (2005年3月31日)
 0.1mmは、現行DVDとのマルチドライブ実現は難しいだろうし、現行DVDと次世代の貼り合わせがあるとされるが、簡単とは思えない。(1)
 要するに、現行DVDを一気に代替する動きをつくらざるを得まい。
 もっとも、0.6mmもシングルレンズに2種レーザーというマルチドライブが商業的に低コストで提供できなければ同じことである。但し、張り合わせは可能性ありそうだから、ROMメーカーは互換性あるメディアで始めたいと考えるだろう。
 ともあれ、次々世代ディスクの役割を語る必要があろう。ネットワーク配信になれば将来的にはROMメディアは不要かもしれないのだが。
 将来どうなるというより、どうしたいのかという“思想”の問題である。

 ● ビデオ製作
 ハイビジョンレベルのデジタルビデオカメラによる個人的作品を視聴する際はハードディスクを用いたネットワークに変わるのか、それともメディア渡しを続けるのか。ディスク技術は先端であろうがなかろうが、“ユビキタス”時代にメディア渡しが基本と考えるのだろうか。

 ● ゲーム
 0.1mmメディアのプラットフォームとして、世界に広がるという大前提が成り立つかは未知数である。DVD HDとDVD Audio以外のほとんどのメディアに対応する機器が今までのように安価に提供できるとは思えないが、などという議論は実はどうでもよい。
 そもそも、ブロードバンド時代と喧伝しながら、ゲーム産業は相変わらずROM販売ビジネスで食べていくつもりなのか問われているのだ。
  → 「ゲーム機器の大勝負」 (2005年5月23日)

 ● パソコンデータ保存
 業務用やパソコンデータの保存用メディアが家電用と同一である必要はないかもしれない。それにしても、今や、DVD-R DataのG当たりの実売単価は10円だ。要するに、使い捨て状態なのである。この状態から、高単価なメディアへの乗り換えは簡単には進むまい。
 しかも、サーバのハードディスクにデータを保存する流れもある。個々のパソコンが大容量メディアを本当に必要とするのか、はっきりしている訳ではない。
 とはいえ、ノート型で大型のブランクディスクが使えるなら市場が早期に立ち上がる可能性はありそうだが。

 ● インタラクティブ型の始まり
 今のような垂れ流し型のコンテンツ/プログラム用と安価で大量記憶するメディアとしての役割から一歩進んだものができるか。今まではインタラクティブ型は上手くいった例がない。
 ・・・こんな風に考えていけば、何を議論すべきかがは明白だろう。

 規格統一とは、技術の問題ではない。将来ビジョンの話なのである。

 残念ながら、日本の仲介者にはそのような発想はない。誤解を恐れず語れば、このような仲介者のストーリーに合わせた規格統一に進まなくてよかった。

 --- 参照 ---
(1) BD層とDVD層の片面を両面成形 http://www.jvc-victor.co.jp/press/2004/bd_dvd.html


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