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YOKOSO! JAPAN 2007年8月6日 |
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観光地満足度のデータを眺めて…週刊ダイヤモンドの特集記事によると、インターネット“5000人アンケート調査”で、最も満足した観光地の10位内に入ったのは、 1位の京都は別格として、北海道5ヶ所、沖縄2ヶ所、九州2ヶ所。(1)現地入りするまでの、時間と出費を考えると、そんなところだろうという感じがする。 → 「これから流行りそうな短期旅行のタイプとは 」 (2006年5月29日) こうした地域の観光産業が、“熱心な”航空会社とのタイアップを強化すれば、満足度はさらに上がるから、観光産業は飛躍的に伸びるのではないかと思う。 さらに、海外の集客業者も加えることができれば、一大産業ができてもおかしくなかろう。 一方、このランキングでの順位は低いものの、航空機を利用しないで行ける近場地域も発展余地は大きいだろう。もっとも、繁栄している首都圏と名古屋の周辺以外は簡単ではないだろうが。 「温泉宿から温泉リゾートへ 団体客中心から脱皮する熱海」というのも当然の流れだと思う。 なにせ、熱海は、都心からタクシーとヒカリを使えば、1時間後には温泉に浸かれる場所である。しかも、都会の住人には、それなりの海と山があり、田舎の風情と都市型感覚が同居している街に映る。これほど便利なところは他にはなかろう。 旧態依然とした温泉場振興政策を捨てることができさえすれば、熱海は発展して当たり前なのである。 しかし、そうなるとは限らないのが現実。 その理由は単純。 自治体の振興策が以下の3つのパターンになりがちだからである。 1つ目は、旧態依然たるビジネスを続けている資産家や、時代感覚なき事業者団体に流行の衣を着させる方策。 2つ目は、他の地域の物真似。 3つ目は、プロに地域の強みを分析してもらい、そのアドバイスに従った産業振興。 要するに、衰退一途の既存事業者をなんとかして伸ばそうという政策である。心根はわかるが、これが逆効果になる。 産業振興で一番重要なのは、本気で事業を起こそうという人達が、動くのに邪魔になるものを取り除くことだが、逆になるからだ。と言うのは、企業家精神旺盛な人も、既存事業者と一緒に動くことを要請され、思ったことができなくなるからである。 そもそも衰退している企業の経営者に、経営能力を期待する投資家がいるか、考えてみるべきだろう。 経営者を変えるとか、ビジネスの仕組みを抜本的に変えるとの決断でもしない限り、このような振興策はマイナスでしかない。 こんな話をするのは、ANA FESTAの土産物売上ランキングを見たから。 20傑の半分は北海道なのだ。 流石、昔から頑張っているだけのことはある。 言うまでもないが、“北海道”が頑張っている訳ではない。自治体の振興策で伸びたなどと考える人もいまい。 企業家精神溢れる人達が全力で事業を発展させてきた結果である。 今や全国ブランドになった「白い恋人」の石屋製菓は、ついに、テーマパーク(2)まで作ってしまった。 そんな力があるから、パイ生地をチョコレートコーテシングした「美冬」もヒットしているのだと思う。 おそらく、これと類似のテーマパークビジネスが他の地域でも行われていることだろう。表面的な真似なら、お金さえあれば簡単だからである。 六花亭製菓の「マルセイバターサンド」にしても、原料の卵やバターは十勝産だと思うが、小麦粉やレースンは輸入品の筈。別に北海道名産という訳でもなかろう。 北海道で初めて生産したバター「○成」のデザインの包装紙だけが、北海道を感じさせると言うと、言いすぎだろうか。 つまり、ビスケットの美味しさと、こだわり感がウリということ。 実際、道内での圧倒的な支持を集めることに注力しており、(3)この商品の“北海道”イメージはこの力に依存しているとも言えそうだ。 人気商品はこれだけではない。フリーズドライの丸ごと苺にホワイトチョコレートをコーティングした「ストロベリーチョコ」や、チョコレートパイ「サクサクカプチーノ霜だたみ」も大好評だ。 「ストロベリーチョコ」にしても、ものは、チョコレートフォンデュにすぎない。ドライでなければ珍しい商品ではない。実際、東京で類似品を見かけたこともある。しかし、すぐに消えてしまった。 レーズンバターサンド同様に、圧倒的な競争力を発揮しているのだ。 これらの企業の存在こそが、“北海道”の底力である。“北海道”地域の競争力ではない。 もっとわかり易い例は、ロイズコンフェクトの「ロイズのチョコ」(4)。“まるで北海道の大地のような豊かな風味とスケール”(4)ということ。 東京にはブティックやベルギーブランド店が溢れているが、“北海道”を打ち出して競争していけるのだ。成功の本質は、“本物のチョコレートをつくりたい”という熱意である。 例えば、熱海にしても、温泉・山・海の素晴しさを、いくら宣伝したところで、魅力の向上など微々たるもの。 しかし、例えば、地元、住吉屋の「とろけるチーズケーキ」(5)が全国人気を呼ぶようになれば、その土地の魅力も自然に高まってくるということだろう。 → 「蒸しパンの話 」 (2007年4月26日) 早い話、ビジネスセンスがある企業から見れば、どんな地域だろうが、飛躍のタネはいくらでもあるということ。 もし、アイデアが沸かないなら、外から企業を呼び込むに限る。 実際、カルビーのようなスナックメーカーが、北海道限定品「じゃがポックル」(6)で成功しているではないか。 東京には、恐ろしくお金をかけた「○○プラザ」型の地域物産店が数多くあるが、訪れる方からすれば、面白いが、どの店も大同小異。 アンテナショップとされているが、現実には、ついでに色々な商品を買ってもらうために品揃えしている店でしかない。 そんな店で、誰が、何故買ったのか、といった情報をつかめるとは思えない。 これは、企業家精神を鼓舞する方向とは逆。 まずはアンテナショップの再構築が必要だと思う。 --- 参照 --- (1) 「激変!ニッポンの観光」 週刊ダイヤモンド [2007.7.29] http://dw.diamond.ne.jp/number/070719special/index.html (2) http://www.shiroikoibito.ishiya.co.jp/park/index.html(3) http://www.rokkatei.co.jp/shop/index.html (4) http://www.e-royce.com/corporate/history/index.html (5) http://torokeru-de.com/shop.php?category_id=7&item01_id=10 (6) http://www.calbee.co.jp/shohin/productdetail.php?productcd=20040319021028 「観光業を考える」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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