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2010年5月21日
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【古都散策方法 京都-その39】
体質を見抜く。[古事記命]

葵祭の“こだわり”は群を抜く。
 毎年五月になると、平安京の情緒に浸れるということで、葵祭の仮装行列の写真がニュースとして流れる。文字通り絵巻物さながらの光景。
 どう見ても一大観光イベントであるが、イベントではなく古くからの祭祀とされている。そんなものなのだろうか。
 勅使ならわかるが、「斎王代」が御所から加茂神社まで練り歩くというのは、なんとなく儀式として不自然さを感じるのだが。

 それはともかく、行列に、矢鱈凝っている。そこまでする必要があるのかと思うほど。
 ・・・そんな状況を写真で眺めていて、ふと、そのこだわりこそが重要なのかも知れないという気になった。大仰な行列で大々的に参詣することで、産土神に最大限の敬意を払っていることを示すことに意味があるということか。

 要するに、行列は祭祀としてはオマケのようなもの。重要な儀式は“御生神事”と“御阿礼神事”の方らしい。
〜葵祭の内容〜
【御禊の儀】   ・斎王代、女人列の御禊神事
  ・息を吹きかけ胸にあてた形代を御手洗川に流す。
    -楢の小川(上賀茂神社)
    -瀬見の小川(下鴨神社)
【歩射神事+流鏑馬神事】
下鴨神社
【競馬足汰式+競馬会神事】
上賀茂神社
【御蔭祭】
(御生神事)
  ・八瀬の山中の御蔭神社の夜間の秘儀[降霊神事]
  ・翌日、神霊櫃でお迎え
    -早朝、“行粧”が下鴨神社進発[勧盃の儀]
    -御蔭神社で荒御魂迎え
    -摂社の赤の宮神社立ち寄り氏子町内練り歩き[神馬]
    -糺の森到着後、祭祀場“切芝”で三代詠、東遊の舞の奉納[遷立の儀]
    -本宮に安置・・・和御魂と一体化
【御阿礼神事】   ・上賀茂神社本殿北側の御阿礼所での夜間の秘儀[御蔭山降霊神事]
【路頭の儀】   ・奉幣使参内行列[勅使、検非違使、内蔵使、 山城使、牛車、風流傘、斎王代]
  ・京都御所→下鴨神社→上賀茂神社
  ・社殿、行列を“葵”で装飾
【社頭の儀】   ・神職による神前の儀式
    -幣物の奉奠御祭文奉上
    -牽馬、舞人東遊

 ガイドブックには、古い祭祀の形態が残っているとされるが、確かにこれらの神事はそんな雰囲気がありそうである。ただ、応仁の乱で長期中断している筈だから、口伝と古文書をもとにした復活儀式である可能性は高いが。

 実は、こんなことが気になったのは、最近、神饌(レプリカ)の展示を眺めたから。これが贅をつくしたものなのである。象徴的な産品だけてもよさそうなものに、と思って見入ってしまった。
 その時、ふいに、神饌はこれだけではないという話を耳にしたのである。どこまで本当かはわからぬが、展示品は内陣用だとか。外陣用もあるのかと茶化したくなったが、どうもあるらしい。それどころか庭や、他にも供えるとか。もちろん、内容や作法はそれぞれ違うらしい。
 むむ〜。この細かさ、恐るべし。
 一体、どうなっているのだろうか。

古事記への“こだわり”も並ではなさそう。
- 神社 - - ご祭神 -
〜 葛城の代表的神社 〜
高鴨 味鋤高彦根神
中鴨[葛木御歳] 大歳神
高照姫命
下鴨[鴨都波] 事代主神
長柄 下照姫
葛城一言主 一言主神
〜 京都の代表的神社 〜
上賀茂[賀茂別雷] 賀茂別雷命
下鴨[賀茂御祖] 玉依姫
賀茂建角身命
日吉 大山咋神
大物主神[三輪]
松尾 大山咋神
市杵島姫命
伏見稲荷 宇迦之御魂神
 それにしても、産土神だからといっても、ご祭神は鴨一族の氏神である。これほど特別扱いしなければならない理由はなんなのだろう。

 と言うことで、鴨一族の本拠地だったと言われる 葛城の神社を並べてみた。
 う〜む。京都とは古事記の須佐之男命の世界ということになる。

 松尾/日吉のご祭神である大山咋神とは、須佐之男命と大山積神の娘の子、大歳神[中鴨]と天知迦流美豆比売の間の子だ。
 一言主神も須佐之男命の子。
 事代主神は大国主神の子だが、もともとは須佐之男命と櫛名田比売の系統。
 そういえば、伏見稲荷のご祭神である宇迦之御魂神も須佐之男命の子だったか。

 小生は、今の今まで気付かなかった。

 要するに、古事記に記載されている、第1代から第9代に至る天皇の頃の神々の系譜を受け継ぐのが京都の上加茂・下鴨神社ということになりそうだ。
 そもそも、高鴨神社のご祭神である味鋤高彦根神とは、迦毛大御神。天照大御神に匹敵する偉大な神とされている。重視されるのは、考えてみれば当たり前である。

 初期の天皇に関する記載はほんの僅かだが、その部分を引き継いでいるとの自負があるということかも。実は、飛鳥や平城京より、歴史があるということ。

 ということで、独断と偏見でまとめれば、・・・。
〜京都の民の体質〜
- 1 - 土着感覚  地についた伝統でなければ収まりが悪い。
- 2 - 身分峻別  分相応をわきまえない信仰は落ち着かない。
- 3 - 怨念の地  権謀術数からくる祟りなどたまったものではない。
- 4 - 縁の伝承  親の信仰を粗末には扱う訳にはいくまい。
- 5 - 混沌堅持  商売繁盛は皆で謳歌したいもの。
- 6 - 霊と共存  この地の霊と共に生きていく。
- 7 - 信心第一  信心こそ命。
- 8 - 最古との自負心  古事記の世界を護る。

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