化石鰐出土地域の神話 1964年の阪大豊中キャンパス工事で、45万年前の地層から、体長7メートルという、クロコダイル系巨大鰐化石が発見された。現生のワニの生息域は、熱帯/亜熱帯(北緯35度〜南緯33度)に限られているそうだが、この古代ワニは、地層内の植物花粉から、温帯型気候下での棲息と推定されている。 ところが、今年、隠岐の島の2,000万年前の地層から、その祖先に該当しそうな化石が出土。日本海以前の淡水湖時代のワニらしい。 すでに、山陰から北陸にかけて、鰐の化石が発見されているし、大陸で発見される化石と違って体躯が矢鱈に大きいから、古代の日本列島では鰐帝国状態だったと考えてよさそう。 島根半島辺りで考えれば、2,000万年前は湖水環境であり、その後、急激に海水侵入になったのだろう。暖流流入ということだから、熱帯型の気候ということか。 日本海がほぼ出来上がれば、堆積活動が効いて、陸が増え始めた筈だ。その頃になれば、日本海に寒流も流れ混んで温帯の海の風情が生まれたのだろう。そうなると、鮫にとっても棲みやすい環境か。 出雲や隠岐といった辺りは、古代の地層が表れている場所でもあり、いかにも神話の故郷となるべき地という気がする。 ・・・などと考えてしまうのは、古事記の和邇の記述が気になるからだ。鰐でなく鮫とみなすことになっているのがどうしても気になる。 → 和邇は鰐で鮫ではない(20060327) → 「因幡の白兎と鮫」説の鵜呑みは駄目 (2013.2.8) 又かとお思いかもしれぬが、ご容赦のほど。 言いたいことは実に単純なこと。 「トヨタマ姫のお産の話にある陸上で腹ばいになり、のたうつ動物が鮫のはずはない。」と考えざるを得ないだけの話。 ・・・誰が考えても、これが妊婦が出産時にとるような体勢ではなかろう。従って、わざわざワニらしき挙動を記述しているとしか思えないということ。しかも、その出産家屋はアジアのワニの産卵環境を彷彿させるものとくる訳だし。そもそも、サメだとしたら、どうして魚が陸上で草まで用意してお産をするのか、はなはだもって疑問。 逆に、古代から、鰐など見たこともなく、鮫だけをずっとワニと呼んでいたとしたら、初めて鰐を見て同類と感じるものかね。足があり、匍匐歩行するのに、コリャサメそっくりな動物と感じる人など滅多にいまい。同じ名称のワニと呼ぶ必然性は皆無と言ってよかろう。 言うまでもないが、鰐という生物の曖昧な概念だけは残っているが、現存生物がいないなら、海に棲む、ヒトを襲う獰猛な魚のことを、別称としてワニと呼ぶことは十分ありえる話。人喰いシュモクザメなどピッタリではなかろうか。 そんな流れで、現代でも、サメのことをワニと呼ぶ人達がいる訳である。 古事記編纂の頃、すでにワニを知る人はいなかった訳だから、鮫のことをワニと書く書物があってもおかしくないということ。そんな例をいくら引っ張ってきても、何の意味もなかろう。 なんとなれば、愛知県一色町佐久島から御贄として届けられた荷札(二条大路木簡)が出土しているからだ。[文化遺跡オンライン]そこには、佐米楚割(サメの干物)とはっきり記されており、奈良時代平城宮内の天皇クラスの人物に関わるとされている。高貴な人達の間では、サメは「和邇」ではなく、「佐米」が当たり前だったということになろう。古事記編纂にあたて、サメをわざわざワニと呼び変える必然性など無いと言わざるを得まい。 (現生ワニ) 3種に分類されるが、そのうちの1つはインドガビアルだけの特殊扱い。概略2分割と考えることができよう。 ・クロコダイル/ガビアル 口先尖長で歯が剥き出し 性格獰猛 ・アリゲーター/カイマン 口先幅広で歯が口中に隠れる 性格温和 概ね、前者が旧世界(アジアとアフリカ)に分布し、後者が新世界(アメリカ)。ただ、後者は中国南部/東南アジアにも棲息する。 日本から見れば、以下の3種類が馴染みがありそうとうことになろうか。 ・クロコダイル系のイリエワニ、マレーガビアル ・アリゲーター系のヨウスコウアリゲーター (記事) 東アジア最古巨大ワニ化石、島根で発見 2000万年前 2013/9/12 23:49 日経 (C) 2013 RandDManagement.com HOME INDEX |