表紙 目次 | ■■■■■ 2014.9.7 ■■■■■ デング熱対策は「政治」の問題 デング熱報道が盛んだ。 海外紙に目を通している方なら、いずれ、日本でもこんな事態に遭遇することは、わかっていたこと。 マレーシアの死者発生状況はひどいの一語に尽きるし、日本より清潔な環境で生活レベルも上と言われる、独裁政治の都市国家たるシンガポールでさえ、大々的な蚊撲滅運動を繰り広げても、さっぱり抑制できずにいるからだ。(熱帯だからということだけではない。) → 「蚊撲滅作戦も悪くないのでは」[2014.8.24] → 「そろそろ蚊対策が必要では」[2014.8.1] ただ、思っていることを直截的に言えない分野である。ここをしっかりおさえておく必要があろう。 従って、小生は、デング熱に関するニュースやその解説の類をまともに読んでいない。どのような対応がとられるかはほぼ推測できるから。多分、書いてあることは3つだけ。(違っていたらご勘弁。) 1 危険な疾病ではないから騒ぐな! 2 蚊に刺されないようにせよ! 3 熱がでたら医者に行け! 小生は、こうした類の解説に格段の意味があるとは見ていない。効果にしても、どれだけあるのかは、なんとも。逆効果の方が大きいと思うからである。それに、議論すべき本質的な課題を避けているように感じるので、問題が多い解説と見なす。(蚊忌避剤市場がどうなるかという解説は別だが。) どう見ても、上記は「皆さん、危険は無いから、パニックにならないように!」との「指示」。(以前にも、同じようなことが行われたから、又、繰り返している筈と見ただけ。) 但し、これは、致し方ない。日本が培ってきた文化的風土そのものだから。 重要なのは、それを前提として報道を眺めること。 そんなつまらぬことを指摘しているのは、経済紙を除けば、日本のマスコミは、おしなべて、国家社会主義型報道姿勢を採用しているように見えるからだ。読者への「指示」をどのように効果的に伝えるかの工夫に腐心するのが報道機関の役割と任じていそう、ということ。 つまり、「指示」の力を弱めかねない意見はまともに取り上げられることは無いのである。こまったものだが、そんな仕組みを愛する人が多い以上、嫌いな人は耐え忍ぶしかない。 そのように考えると、解説は上記のような見方から一歩も出ないとの推定になる訳である。 実は、デング熱については、罹患発生は時間の問題であることは、年初(「冬」)に判明していたのである。ドイツの訪問者が、日本旅行中に、飛行場以外で感染し、帰国後発病したとされたから。 このことは、常識的には、すでに日本国内に罹患者が存在していることを示唆している訳だ。しかし、罹患情報が無いのだから、医師が「罹患」と診断していないだけと見なすしかあるまい。・・・もちろん、専門家が証拠なしにそんなことを公言できる訳がない。 従って、素人なら、「日本国内で罹患発生」という最初の報道でピンとくるのが普通の反応。 日本国内で、デング熱感染を疑う医師は滅多にいるものではなく、たまたまその眼力がある医師の診察を受けた患者がいたのでついに罹患者が発生したと見る訳だ。 (気の利く記者ならどのような医師が診断したのかという情報をそれとなく書くものだが、報道はどうだったのだろうか。どうせ原稿ボツか。) 小生は、海外で感染し帰国後発病した患者を診たことのある医師だと推定。もしそれが当たっているなら、この患者さん以外にも国内感染者は多数存在していた筈と見なす人は多かろう。 しかし、「皆さん、危険でないから、パニックにならないように」との「指示」の徹底を仕事と考える報道機関がそのような解説を掲載することはまずなかろう。 当然ながら、複数の罹患者が発見されても、特殊ケースという印象の報道が続くことになる。 それに応えるようにして、自治体も、形ばかりの殺虫剤噴霧と、「蚊にご注意」という看板を立てるといった対策で幕引きを図ることになろう。 まあ、それが失敗に終わるだろうとは、素人でもわかるが、そこから逃れることができない社会風土ができあがっている訳だ。 報道機関の体質が変わらない限り無理である。 そもそも猫の額のような場所で殺虫剤を撒いたところで、蚊は撲滅できないのは、普通の生活をおくっている人ならわかりきったこと。蚊がそこから逃げていのは当たり前だし。 そもそも、朝夕に風が流れている地形で、狭い地域の殺虫剤散布にどれだけ効果があるのかなど自明。 しかし、そんなことはわかっていても、大騒ぎにさせないことが第一義的目標だから、そこから逸脱する動きはできないのである。 それはそれ、致し方ないのだが、本質的問題はそこではない。 注目すべきは、デング熱ウイルスは「蚊→蚊」伝染がない点。つまり、罹患者が、たまたま一匹の蚊が飛んでいるところに居あわせで刺され、その蚊が他の人にウイルスを運んだという話を喧伝することが妥当かという話。 一般には、この手の話は、宝籤的と呼ばれるもの。 罹患者発生とは、公園にウイルスを持つ人が常在していて、何匹もの蚊が刺すことができる状態ができあがっていたと考えるのが、素人の常識である。つまり、そんなヒトが移動すれば、感染地域は拡大していくことになる。 しかし、そんな常識でこの問題に対応すると、極めて難しい問題に直面することになろう。 下手に議論を始めると、人権問題になりかねないからである。政治問題そのものと言えよう。どう見ても自治体が解決できるレベルの課題ではない。 (C) 2014 RandDManagement.com HOME INDEX |