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■■■ 曼荼羅を知る [2019.3.4] ■■■
天部 [6] 十二天

天系の曼荼羅を見てきた。
 〇毘沙門天[→]
 〇吉祥天[→]
 〇閻魔天[→]
 〇荼枳尼天[→]

ところが、12神が揃っているとの曼荼羅名がある。天系の代表を集めたと受け取られかねないが、実態的には、主尊の眷属として周囲を固めているだけ。方位護法神[→]である。にもかかわらず、ハイライトが当たるのが主尊ではない。

護方神十二天と言えば、東寺旧蔵の京都国博所蔵品@1127年が知られる。ただ、この作品はそれぞれの一尊づつが掛け軸のタイプ。当然ながら、曼荼羅感は皆無だ。宮中内 真言院での(正月)後七日御修法用(今上天皇の健康御祈祷)と言われている。
(参考) "宮中眞言院壇所"@高田修:「東寺の三副古本両界曼荼羅について」美術研究189, 1956年]
最古の図画は西大寺所蔵品@平安初期だが、こちらは鳥獣座で多少の違いはあるようだ。
掛け軸ではなく屏風に仕立てた作品も数多く残っており、道場内 伝法灌頂の場を囲っていたようだ。

それを知ると、十二天曼荼羅とはこれらを一枚にまとめたと考えがちだが、首尊として不動明王が存在している。それなら不動明王曼荼羅と呼んだ方が的確だと思うがそうはならない。あくまでも重要なのは護法神なのだろう。
尤も、不動明王曼荼羅とでも呼ぶべき図絵もある。素人にはどこが異なるのかわからないが、「不動安鎮法」(勸請四臂之不動明王,十二天諸眷屬)用。中央に二臂黄色の不動明王、周囲に四臂青色の不動明王を配するとの解説もあるから特別なポイントがあるのかも知れぬ。

言うまでもないが、この修法は国家安寧を実現するためのものだから、教団存立を左右しかねない重要な行事であり、安鎮曼荼羅と呼ぶならわかるが、天部の護法神曼荼羅という名称はそぐわない感じがする。
マ、分類とか名称は後付けのことが多い。それによってイメージが固まってしまうので要注意である。
ちなみに、"別尊"曼荼羅[→]の解説では、以下の分類が用いられているようだ。・・・
勝定坊恵什:「図像抄」では6儀軌分類。(諸仏部・諸経部・菩薩部・観音部・忿怒部・諸天部)「覚禅鈔」は細かく9部。(仏部・仏頂部・経部・観音部・文殊部・菩薩部・明王部・天等部・雑部)
(参考) 今井浄圓:「仏頂尊に関する研究ノート−仏頂尊の登場する秘密儀軌を中心にして−」種智院大学密教資料研究所紀要第4号

一見わかり易い整理だが、仏像の如来・菩薩・天神分類とは違って、素人には概念がかえってわかりにくくなる。
ザッと眺めてきて、構成理念の展開を考えると、《仏頂系》曼荼羅⇒【胎蔵曼】曼荼羅⇒【金剛界】曼荼羅⇒《諸経系》曼荼羅⇒《忿怒系》曼荼羅という流れを感じてしまうからだ。

《仏頂系》
  仏頂尊は無見頂相(三十二相の頂成肉髻相)の功徳を尊格化したもの。
 〇一字金輪(釈迦金輪 or 大日金輪)
  火炎光背の大日金輪が獅子座上に坐す。
(智拳印)
  周囲に輪宝と七宝(珠宝、女宝、馬宝、象宝、主蔵宝、主兵宝、仏眼仏母)を配置。
   [→(C)奈良国博]
 〇大勝金剛
   [→"金剛福寺の大勝金剛曼荼羅"(C)土佐清水市]
 〇摂一切仏頂
 〇大仏頂
   [→(C)奈良国博]
 〇八大仏頂
…大日如来に八大仏頂
   [→(C)三井寺]
 〇尊勝(法)…大日如来に八大仏頂相当の菩薩
   [→(C)奈良国博]
 〇仏眼(仏母)…真理を見つめる眼をを尊格化したもの。
       釈迦如来・大日如来・金剛薩いずれかの所変とされる。
   [→"絹本仏眼仏母曼荼羅"@延命寺(C)大府市]
《諸経系》
 〇法華(経)
   [→"法華曼荼羅@鎌倉時代(C)松尾寺]
 〇仁王経
   [→"絹本著色仁王経曼荼羅図"(C)醍醐寺文化財アーカイブス]
 〇請雨経
 〇理趣経
 〇孔雀経
 〇宝楼閣
 〇童子経
…護諸童子経
   [→"童子経曼荼羅図@鎌倉時代(C)MAO美術館]
 〇菩提場荘厳経
《忿怒系》
 〇安鎮=不動明王像+十二天
 〇十二天=〃
   [→"絹本著色十二天曼荼羅図@下関国分寺 (寺伝安鎮曼荼羅)"(C)山口県教育庁]
   [→(C)金剛峯寺]
 〇愛染(明王)
   [→"愛染曼荼羅@根津美術館(C)ACA]
 〇大威徳(明王)
 〇降三世(明王)
 〇金剛夜叉(明王)
 〇太元帥(明王)
   [→若杉準治:「善峰寺本大元帥明王画像考」学叢/HP版 第14号1992年(C)京都国博]
 〇大輪明王

《天系》
 〇毘沙門天
 〇吉祥天
 〇閻魔天
 〇荼枳尼天

《菩薩系》
 〇弥勒
 〇八字文殊
 〇五大虚空蔵
 〇般若菩薩
 〇持世菩薩
 〇妙見(菩薩)
=釈迦金輪 or 北斗/星
   [→"星曼荼羅@久米田寺(C)京都国博]
 〇五秘密…五金剛菩薩
 〇馬鳴(菩薩)
《観音系》
 〇聖観音
 〇千手観音
 〇七星如意輪
 〇不空羂索観自在

《如来系》
 〇阿弥陀(法敬愛)
   [→(C)文化庁]
 〇釈迦…「覚禅鈔」巻第八
   [→(C)醍醐寺]

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