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2015.1.22

12分割暦法用語について

満月と新月の回数から暦法としての12分割が始まったのは確実。
いかにも手指で数える方式に思える10進法と、天体の12進法は、互いに対抗する方式に思ってしまうが、両者は発祥が違うため、全く異なるジャンルと見るべきとか。
そうなると、ダースという単位は「数」ではなく、なんらかの纏まり概念と考えることになる。確かに、そのままでは零の概念が欠落していそう。それが取り入れられないと、10進法と同一レベルにはならない訳だ。
   「日本語基数詞の生成シナリオ」[2013.1.5]
  I、II、III、・・・、V、・・・、X → XI
  一、二、三、・・・・・・・、十 → 十一
  壱、弐、参、四、伍、六、七、八、九、拾 → 拾壱

12分割天体暦が生まれたのはメソポタミア文明だったようで、天文学的な星座が明確化されたことが考古学的に確認されたのはバビロニアの時代だが、それ以前に、この地域では使われていたと考えるのが自然だろう。
こんな流れだろうか。
 [セム族農耕民の王国]→[セム族遊牧民]
   ├[海洋民フェニキア]→[ギリシア系]→・・・
   └[ペルシア系遊牧民]
      ├[タタール系遊牧民]→・・・
      └[インド系農耕民]→・・・

東アジアでは結局のところ、中華帝国に包摂され、「十二支」になったということになろう。

「天空」名では7つしかないので、沢山ある星座名から12が選ばれたということのようだ。星座名称はエジプト(ハム族)式ではなく、セム族式に統一されているのは、ユーロアフロ乾燥地帯の陸路と地中海の海路交易の民がセム族だったということだろう。
それに、ナイル川の場合は増水期を示すシリウスを重視した農耕暦だから、他地域には違和感を与えるものだったのは間違いないし。

選ばれた名称には、なんらかの宗教的信仰が絡んでいるのだろうが、その辺りを推定するのは難しい。
  太陽・・・獅子座/獅子宮[7]
   月 ・・・蟹座/巨蟹宮[6]
  火星・・・牡羊座/白羊宮[3]+蠍座/天蝎宮[10]
  水星・・・双子座/双児宮[5]+乙女座/処女宮[8]
  木星・・・射手座/人馬宮[11]+魚座/双魚宮[2]
  金星・・・牡牛座/金牛宮[4]+天秤座/天秤宮[9]
  土星・・・山羊座/磨羯宮[12]+水瓶座/宝瓶宮[1]

ただ、そこには、自然観が表れているのは間違いなさそう。
  火・・・牡羊座/白羊宮+獅子座/獅子宮+射手座/人馬宮
  地・・・山羊座/磨羯宮+牡牛座/金牛宮+乙女座/処女宮
  空・・・天秤座/天秤宮+水瓶座/宝瓶宮+双子座/双児宮
  水・・・蟹座/巨蟹宮+蠍座/天蝎宮+魚座/双魚宮

天体の宗教観という観点からすれば、動かない北斗七星を中心にして考えることもアリだと思うが、その発想は感じられない。ただ、中国暦法では、その辺りが加味されており、暦年12分割に中間を加えた二十四節気の補助的な分類「十二直」として用いられている。二十四節気は一年の気候変化を示すので生活に密着した表現そのものだが、十二直は星占いのセンスしか感じられないが。
  建除満平定執破危成納開閉

尚、中国古代の天文学(「漢書」律暦志・次度)でも、当然ながら天球の赤道を12等分する技法「十二次」が用いられていた。これにより冬至を基準とした24節分割が可能になった由。用語は難しくてさっぱりわからぬ。
  星紀-玄-娵-降婁-大梁-実沈-鶉首-鶉火-鶉尾-寿星-大火-析木
この基準となるのが木星(歳星)である。ギリシアの主神ゼウスが木星とされる所以でもあろう。

さて、この12という数だが、信仰的にも大きな影響を与えているようだ。

 <聖書の12>
12が宗教的に重視される理由は定かではないが、月齢暦にあてはめて考える習慣ができていたということだろう。イスラエル12部族は言葉としてはよく知られるが、聖書の実際の記述からすれば13部族であり、おそらく、現存2部族が消えた部族の数を10にしたかったのだろう。ルカ福音書と使徒行伝の「十二使徒」とは、この発想から来ているとされる。パウロも使徒とされるが、加えれば13になってしまう。

 <仏教の12>
十二天という表現になっているが、方角の概念である八方と上下(天地)に日月を加えたものである。天空の占星の観点からだと、12にはならず、"日月〜金土"の七曜と、実在と見なされた羅星と計都星の2つを加えた九曜となる。12への拘りは薄い感じがする。
日本では、12と言えば、もっぱら十二神将だが、薬師如来の十二の大願に合わせ、暦と方角の守護武神習合したものとされており、これは中国の、子神=宮毘羅神將〜亥神=毘羯羅を取り入れただけのようだ。(Wikiでは対応は日中で異なる。)
これを見る限り、仏教は12を特別視した訳ではなさそうで、十二部経(教説の内容/形式による分類カテゴリー)という用語も、上記に合わせると覚え易そうだからというだけのことではなかろうか。
時宗十二派にしても、江戸幕府から見れば主要な勢力が丁度12だったのだろう。
ただ、仏教国化した日本では、その数字を好んでいたことは間違いないようだ。・・・604年に制定した、官位を12等級化した冠位十二階もあることだし。この根拠は、徳と仁義礼智信の5常を大小に二分したもの。十二単は重ね袿の女房装束だが、平安時代に発生した俗称とされる。姿は国風のようだし、仏教行事にも無関係だから、12に特段の意味はなさそうだ。

 <十二支>
中華帝国では、精緻な「十二次」があったそうで、伝来の十二宮(人馬宮〜磨羯宮)用語を使う必要はなかったと見てよさそう。
それに暦法とは、帝国の覇権を示すものに他ならないから、為政者の用語としては十二地域を用いるのが素直。
  鄭/州、宋/豫州、燕/幽州、呉越/揚州、斉/青州 (山東省)、
   衛/并州、魯/徐州、趙/冀州、魏/益州、秦/雍州、
    周/三河(河東・河内・河南三郡)、楚/荊州
しかしながら、これでは、いかにも群雄割拠臭紛々であるから、農耕民がわかる用語に変えたのだと思われる。
  子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥
   「十二支文字考」[2014年7月11日]

しかし、あくまでも目的は、異民族をまとめる方策であるから、生肖を用いることにしたのではないか。誰でも知る動物であり、それは氏族のトーテムだったり、聖なる動物でもあった。
ギリシアで星座名称が標準化された時分には、東アジアではとうに生肖で統一されていたと思うが、どんなものだろうか。
  鼠牛虎兎龍蛇馬羊猿鶏狗猪
   「東アジアの民俗的分類」[2013.5.2]
これらは、本質的には飼える動物では。
  −−猫−鰐−−−猴−犬豚
   「十二支生肖仮説」[2014.8.2]

 <ギリシアの12>
ギリシアではオリュンポス十二神があり、わざわざ12を指定するのだから、黄道12分割に対応しそうなものだが、見えてこない。ただ、この神話はローマに受け継がれ、さらに現代まで繋がっているのだから、その影響力は驚くべきもの。
  太陽[♂アポロン]→アポロ
  月[♀アルテミス]→ダイアナ
  火星[♂アレス]→マーズ
  水星[♂ヘルメス]→マーキュリー
  木星[主神♂ゼウス+♀ヘラ]→ジュピター+ジュノー
  金星[♀アフロディーテ]→ヴィーナス
  土星 −
  天王星 −
  海王星[♂ポセイドン]→ネプチューン
  (冥王星[♂ハデス+♀ペルセポネ]→プルート+プロセルピナ)
  乙女座[♀デメテル]→セレス
  火山[♂ヘパイストス]→バルカン
  (豊穣・葡萄酒・酩酊[♂ディオニュソス]→バッカス)
  都市[♀アテナ]→ミネルヴァ
  竈[♀ヘスティア]→ヴェスタ
それぞれに、琴線に触れるようなお話がついているということか。

ローマは覇権国として、12ヶ月表記の標準化を強引に貫徹したようである。島国日本も国内での標準化を進めた訳だが、その発想は全く異なる。
  「♂Janus」・・・・・睦月
  "罪を浄める祭事"・・・如月
  「♂Mars」・・・・・・弥生
  "地が開く"・・・・・・卯月
  「♀Main」・・・・・・皐月
  「♀Juno」」・・・・・水無月
  「Julius Caesar」・・文月
  「Augustas Caesar」・・葉月
  "7"・・・・・・・・・・・長月
  "8"・・・・・・・・・・・神無月
  "9"・・・・・・・・・・・霜月
  "10"・・・・・・・・・・師走

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