■■■ 「說文解字」「爾雅」検討[17raaa釋鳥]■■■
<燕>については、じっくりと書いてみたつもりだが📖 📖、所詮は、バラバラと個別検討を重ね、ダラダラと並べたうちの一話に過ぎない。全体像をつかむためには検討は必要ではあるものの、お話自体にはたいした価値は無い。(儒教的には、膨大な漢籍を網羅的に参照してこそ、意味がある。・・・儒教志向とは、五行に当て嵌めて、すべての鳥を分類し、各鳥の意義を古代からの文献をベースとして総整理したくなる感覚とでも言うとよいかも。)

ここらは説明が難しいので、適切とは言い難いが、酒呑話を1つ。

郭沫若(全人代常務副委員長)が"卵とは睾丸を意味する。"と語ったそうだ。(獸や畜の睾丸食が愛好されていない以上、この手の古代発想は無かったと見るべきだろう。)いかにも、天子を歓ばす手のお話。天子に迎合なかりせば、命が奪われる社会だから致し方ないとはいえ。
この手の様々な見方は五万とあり、「說文解字」にしても忖度だらけ。従って、それを前提として読む必要があろう。
"怪"を遠ざけるべしと発言していた孔子にしても、儒者によって"鳳皇"的シンボルに祀り上げられた訳で、孔子が鳥トーテム部族出自であることを嬉しがっていた可能性もある、と読むべきと言う事。

いうまでも無いが、この卵とは、玄鳥感精譚の話。
  殷契 母曰簡狄 有娀氏之女 為帝嚳次妃
  三人行浴 見玄鳥墮其
簡狄取吞之 因孕生契 [「史記」殷本紀第三]
  秦之先 帝顓頊之苗裔孫曰女修
  女修織 玄鳥隕
女修吞之 生子大業・・・
  大費生子二人:一曰大廉 實鳥俗氏・・・
  大廉玄孫曰孟戲 中衍 鳥身人言・・・ 
[「史記」秦本紀第五]
玄鳥が聖鳥だった訳だが、その根拠は実は単純明快。要するに、季節を告げる鳥。・・・
  是月也 玄鳥至 至之日 以大牢祠于高禖
  天子親往 后妃帥九嬪御
  乃禮天子所御 帶以弓韣 授以弓矢 于高禖之前 
[「禮記」月令 仲春之月]
  盲風至 鴻鴈來 玄鳥歸
  群鳥養羞 
[「禮記」月令 仲秋之月]
玄鳥は天帝の命を受けてヒトにお知らせに渡来してくるということ。
  天命玄鳥 降而生商 宅殷土芒芒
  古帝命武湯 正域彼四方 
[「詩經」商頌 玄鳥]
  燕燕于飛 差池其羽・・・
  燕燕于飛 頡之頏之・・・
  燕燕于飛 下上其音・・・ 
[「詩經」國風 邶風 燕燕]
天帝・神霊スキームで考えると、そう見るしかなかろう。
 唯一絶対神(天帝)
  │  └聖鳥
┌─┴─┐ 
祖霊  神霊(自然 生物 部族生活上の行為)
│    
部族長 ←┤
    
└────┘
・・・ヒトは神々と交流はできるが、絶対神の天帝とは直接的に関係が構築されている訳ではない。(天子だけは例外。)天帝は天界統治者として祖霊や神霊に命ずることはあるが、創造神ではないから、祖霊と併存しているだけと言えないこともない。従って、部族祖と天帝を聖鳥を通じて繋がりをつけておく必要があるのは道理。

それに、もともと呑卵は、馴化飼育鳥あっての行為。野生鳥対象の行為ではなかろう。感精譚は、ヒトに飼われることを天命としていると考えられる鳥でなければ意味が薄いのである。ツバメは、自主的にヒトの屋敷内で一夏を過ごすからこそのお話。
カラスにしても、ヒトのテリトリーで活動するからこその聖鳥扱いになる訳で、早朝出動〜夕暮帰巣の日常活動から、太陽-烏の概念が生まれたと考えるべきだろう。
但し、それは昼間。夜間に太陽が西から東に運ばれると考えるなら、夜に活動可能なヒトに飼われている猛禽が存在する以上、別途、太陽-鷹概念が生まれて当然。

日々黎明を告げる大長鳴のニワトリにしても、天命を受けてヒトと一緒の生活をしていると考えれば、同様に聖鳥である。
鵜、鵞鳥や鶴(寉=宀+隹 v.s. 家=宀+豕)もそうした見方がされている筈ではあるものの、古代人の生活からすれば重要性は低かろう。
なんといっても、生死に直接係る、旱魃(射日譚) 日照不足(招日譚) 大洪水をなんとしても避けたい訳だし、農歴が収穫量を左右するのだから、そこらに関係してくるヒトと共に生きている鳥が聖鳥となるのは当たり前。

ただ、こうした役割は天子が登場すれば、急速に意味が薄れてしまう。燕は蝙蝠と並んで屋敷の蚊取役と化し、鷹は狩猟遊行役になってしまうし、烏はほとんど無視される存在に。
そうそう、もともと、天命を伺うのに鳥卜占が行われていた訳だが、それも失われてしまった。おそらく、鳥トーテム族連合軍が敗れ去ったからだろう。
    "隹"
     

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