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オジサンのための料理講座 ←イラスト (C) SweetRoom 2008.10.1 |
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仏蘭西で完成されたスープの技を学ぶ…コンソメは軽くてほとんど負担にならないのが嬉しい。ただ、質はピン・キリなので、何時も大喜びという訳にはいかないのが残念なところ。 ↑イラスト (C) SweetRoom 夏の暑い頃、冷した「ガスパチョ」もどきを食べていて、ふと、“ポトフもどき”の冬の「夜明けのポテトスープ」料理をご紹介したことを思いだした。 → 「1冊の料理本を読んだ 」 (2008年1月24日)
まず気になるのが、ベーコン。保存性を向上させた塩漬豚肉だが、日本では結構高価な加工品である。家庭料理に、そんな塊を使う意味があるとは思えない。豚なら大きめのソーセージ、牛なら硬い安価な塊を選ぶのが筋ではないかと考えるのだが。もっとも、牛肉の安価な塊が入手できないことが多いから、いたしかたないのかも知れぬ。(回転率が悪いので、塊の単価を高くしているスーパーもあるから注意を要する。) それに、香りがスープとは少し違うのではないか。土鍋に多種多様なものを一緒に入れた、ごった煮料理をスープとは呼ばないのは、香りが余りに違うからと見ているのだが、シンプルでも香りが違えばやはりスープではないと思う。小生は、十字軍遠征で香辛料やハーブが得られるようになり、その香りを楽しむ液状料理がスープと見ており、“ポトフ”にとって不可欠な野菜とハーブがあるのでは。 例えば、スペイン国境付近のベアルン[Bearn]地方の“GARBURE[ガルピュール]”(1)が十字軍遠征以前の面影を残した料理と見る訳である。白いんげん、微塵切り野菜、塩漬け肉等を煮込んだ土鍋料理で、「ブイヨン」のシンプルさは感じられないからだ。これは、どう見てもシチュー。もっとも、それこそが一番の魅力だが。 ちなみに、小生が考える“本物のスープ”とは、以下の特徴を持っているもの。(もちろん、素人の勝手な見方である。) ・調理しにくい部位の肉と野菜から抽出したエキスを楽しむもの。以下の種類がある。 【ブイヨン】 基本野菜以外入れない「出汁」。 (料理としてそのまま出すものではない。) 【ポトフ】 直接ブイヨンを作るスープ。基本野菜に好きなものを追加してもよい。 (煮込んだ肉や野菜はメインデイッシュ。) (インスタントブイヨンを利用するなら、基本野菜とハーブは必須。) 【ポトフもどき】 ブイヨンに勝手な野菜を入れた「煮込み」料理。 (シチューである) 【一般スープ】 ブイヨンに、設計された素材を加えて煮込んだ、「液状」の料理。 ・付香が調理の決め手。 -ハーブあっての肉汁の旨味である。(肉に臭みが無くても加えるということ。) -香味上、肉には、人参とセロリは必須だと思う。(芹科独特の香り。) ガスパチョは、この観点では肉エキスが入っていないからスープではなく、サラダと見るべき料理。野菜(トマト、キュウリ、タマネギ、ピーマン)を油・酢・香辛料で食べているにすぎないからである。 → “King Gazpacho”Andalucia.com [注意:サラダ系のガスパチチョはアンダルシア料理。バレンシア内陸部の煮込み鍋料理のガスパチョは野禽(ジビエ)を使うそうだ。(2)] 同様に、ポトフに見えても、基本野菜が足りず、ハーブ味も利かせないなら、ブイヨン煮込みシチュー料理と考えた方がよいと思う。 魚介類スープとされる料理も、同じ観点で、該当しないものが多い。旨みが汁に溶け込んでいると言っても、熱処理魚介類を食べることが主体で、旨みの汁は従だったりするからだ。これでは、石狩鍋に近い。ただ、海老・蟹から抽出した旨みをベースにした、ソースにもなる濃厚な“BISQUE[ビスク]”は、いかにも本格的なスープ。ただ、魚だと、付香ハーブ系統(ディル、バジル、エストラゴン、等)が肉とは全く違うし、短時間加熱を怠ると、えらく不味くなる。スープ入門編としては、勉強の対象外にしておいた方がよかろう。 ついでながら、“MISO SOUP”こと、味噌汁は海産物エキスを楽しみ、味噌の香りを付ける料理だから、似ているように見えるが、野菜エキスや野の植物の香りを欠くし、味噌の香り一色に染めることになるので、非該当。 → 「お味噌汁作りの学び方 」、「お味噌汁の具の選定方法 」 (2008年6月11/18日) と言う事で、素人の勝手な定義に基づいた、仏蘭西で完成されたスープ料理の学び方を書いてみよう。まあ、内容は余り信用せず、お気軽にお読み頂ければ有難い。冬に備えた、勉強を始めるきっかけ位にはなるのではないか。 【1】 まず最初は、ポトフに挑戦しよう。「火にかけた鍋[POT-AU-FEU]」料理であり、スープの原型である。 上表に示してあるが、自分流に作ってみたらよい。特別難しい点はない。 本気で学ぶつもりなら、ブイヨン作りも兼ねるべきである。この場合、チキンブイヨンか、鶏ガラと牛スネ肉を使ったビーフブイヨンが現実的だと思う。(付録B) そこまで、と思うならインスタントブイヨンで試すことになるが、この場合、香辛料を肉にすり込んでおくとよい。表面を油で炒める必要はない。勉強であるから、材料の量は適当。ともかく弱火で加熱することだけ守ればなんとかなる。ただ、和食の淡い香りに慣れている人は、香辛料やハーブの量は抑え目にしておいた方がよいだろう。キツイと食べられないかも知れないから。(特に、丁子[Clove]は嫌いな人も多いから、すぐに取り出せるようにしておくこと。)ただ、この「付香」を学ぶことが主眼であることを忘れずに。 できれば、浮いてくる灰汁を小まめに取るとよいのだが、無視するとどんな味か経験しておくのも悪くなかろう。余り気にせず、長時間弱火で煮込むことだけに注力すればよいのである。(市販の「灰汁取りシート」を使用すると手抜きができる。安全性の点からは、保温鍋がお勧めである。圧力鍋は時々味を試せないから、初心者は避けた方がよい。) そうそう、スープと一緒に出すパンは、油脂ゼロのバゲットとしたい。 【2】 その次は、応用展開。 料理の一番のポイントは繰り返すがブイヨン。ただ、作るのが面倒なら、インスタントで代替するしかない。それでも、ここから料理を広げていくことができる。ここが、思案のしどころ。お勧めは、「実」の扱い方を変えていくやり方である。 これを理解するには、少し歴史を考えるとよい。“SOUPE[スープ]”を完成させたのは、フレンチだ。その料理体系構築の熱意は驚異的である。(3)ただ、もともと、外から食文化を導入したのに、スープ系は“Etrangers”を別カテゴリーしている点にイマイチ感がある。多少、再構成する必要があろう。 そもそも、フレンチといっても、カトラリー無き時代が長かったのである。そんな時代は、おそらく、ポトフ的な料理を大鍋で供し、各人が丼に入れて食べるしかなかったに違いない。もちろん実を手づかみして喰らいつくスタイルだった筈。当然ながら、コース料理感覚など皆無である。 これがスプーン、フォーク+ナイフの登場で変わったのである。その結果、スープ皿が登場したのだが、よく考えれば、大きな「実」は、別皿でフォーク+ナイフというのが合理的な食べ方である。 しかし、同じ料理を違う皿に分けて出すのはいかにも稚拙だし、液は熱いのに、実は冷めかねない。 従って、できればスプーンですべてを食べれるようにしたくなる。つまり、「実」を「汁」を一緒に食べる工夫が必要となったということ。それが、「火にかけた鍋[POT-AU-FEU]」から抜け出た第一歩だったと考えたらどうだろう。 【2-0】 ご想像がつくと思うが、この流れの一つは、「実」を無くす方向。家庭料理のゴタ混ぜ感を払拭する流れでもある。これが、液体を漉して透明感を出したCONSOMME[コンソメ]料理ということになる。・・・これはかなりの技巧を要するから、初心者は挑戦しない方が無難だろう。 【2-1】 これと対極なのが、「実」を液と一緒にスプーンで食べれるようにする方向。肉や野菜の塊を無くすということ。塊が入ってかまわないのは、液が滲みこんだパンだけ。家庭料理の延長と考えてよいだろう。・・・これこそが、素人が目指すべき道だろう。 その第1段階目はいたって単純。誰でも思いつくような手法だ。 そう、「実」を細かく刻めばよいだけのこと。もちろん、漉したりしない。これが、“TAILLES[タイェ]”である。 屑も含めた微塵切り野菜を使うだけ。早速、試されたら如何。 【2-2】 第2段階目は、野菜を裏漉しするか、ミキサーでペースト状にしたもの。実と汁はほとんど一体化している。これが“PURES[ピュレ]”だ。手がかかるが、面倒なだけで難しい点はない。 ここまでは、ポトフの単純発展系である。肉汁の旨みに野菜エキスが加わり、それにハーブ等の香りがのるだけのこと。自分なりの味を実現できれば、肉とはいえ、和食のさっぱり感と結構似た料理だ。
【2-3】 これを一挙に難しくさせるのが、第3段階。 “PURES[ピュレ]”に、乳(生クリーム、パルメザンチーズ等)や卵(卵黄)の味を加え「濃く」をつけるのである。 牧畜民族にとっては、いかにも自然なことだが、和風の淡い味とは正反対の濃厚味を追求する料理だから、味覚が訓練されていないと、調整は簡単ではない。 従って、先ずは、“PURES[ピュレ]”の美味しいものを作ることに注力することをお勧めしたい。これに、生クリームを少量加え、滑らかな食感を楽しむことができれば成功としよう。この料理は“VELOUTE[ヴルーテ]”と見なせる。 【2-4】 生クリームの嬉しさがわかってきたら、第4段階。 さらなる濃厚感を追求することになる。今度は、滑らかな食感と言うよりは、ドロドロ感の追求。すぐにご想像がつくと思うが、誰でもご存知、ルーを使ったりしてトロミを付ける料理である。 そう、若い人に人気がある、所謂「ポタージュ」だ。生クリームだけでなく、小麦粉と油脂(バター)で作ったルーを加えたりする。名称から言えば、“POTAGE CREME[ポタージュ・クレーム]”。 おそらく、この味には慣れているから、なんの違和感もなく自分流の味を仕上げることができよう。(ルーを使用し、バターリッチにして油脂の旨みを楽しみたいならよいが、敬遠したいと思うなら違う手を使えばよい。チーズという手もあろう。トロミをつけるのだから、御飯やパンを入れたり、水片栗粉もありうる。ご随意に。) ここまでくれば、スープ入門編の勉強は完了である。 ただ、ご注意。最後のトロミがついた料理で、野菜や肉の乱切りを入れた「ポタージュ・シチュー」を作ったりしないこと。“PURES[ピュレ]”→“VELOUTE[ヴルーテ]”→“POTAGE CREME[ポタージュ・クレーム]”と進んできた意味を忘れずに。「実」を感じさせるものは避けて欲しいのである。 従って、勉強するなら、メインとする野菜を決め、味をシンプルにして、“PURES[ピュレ]”を作り、それを進化させるやり方がお勧め。野菜は、ニンジン、カボチャ、キャベツ、アスパラガス、カリフラワー、等なんでもよい。定番的なものは以下のようなところか。 ・コーン: “CREME DE MAIS[クレーム・ド・マイス]” ・グリーンピース: “ST-GERMAIN[サンジェルマン]” ・そら豆: “CREME DE FEVESS[クレーム・ド・フェーブ]” ・クレソン: “CREME CRESSONNIERE[クレーム・クレソニエル]” ・ジャガイモ: “VICHYSSOISE[ヴィシソワーズ]” かなり癖のある学び方であるが、この流れなら、旨みと食感を理解するだけでなく、野菜やハーブの微妙な香りの嬉しさがわかってくると思う。要するに、ゴッタ煮を避け、ブイヨンと野菜素材の絡み合いの美味しさを味わうことに徹するのだ。当然ながら、増量材(パスタ)など絶対に入れないこと。 スープにもかかわらず、クラムチャウダーやオニオングラタンやを勉強の対象外とした理由もおわかりいただけるだろうか。(前者は“POTAGE LIE”、後者は“POTAGE SPECIAL”となろう。) ■■ 付録A ■■ 欧州の様々な国の歴史を想いながら、自分流で、類似料理を作ってみるのも一興。 【仏】 ポ・ト・フ POT-AU-FEU → “Classic French Boiled Beef and Vegetables” ScrapsOfWisdom 【伊】 ミネストローネ MINESTRONE → FX: “Italian Minestrone Vegetable Soup”[07/11/2007] 【露】 ボルシチBORSCHT (борщ) → James Meek: “The Story of Borscht” Guardian [2008.3.15] 【独】 アイントプフ EINTOPF → Jager-Eintopf (hunter's Stew) Recipe 【スコットランド】 スコッチブロス SCOTCH BROTH → “Scotch Broth Soup Recipe” 【アイルランド/英】 オックステール OXTAIL → “Irish Recipes Oxtail Soup” 【ハンガリー】 グヤーシュ GOULASH → “Hungarian Goulash Soup” 【ブルガリア】 タラトール TARATOR → “Recipe for Tarator (Bulgarian Cucumber Soup)” ■■ 付録B ■■ 現実的なブイヨンのつくりかた(あくまでもご参考。ウエブ検索をお勧めする。) 【基本野菜】 人参、玉葱、セロリ 【基本ハーブ】 丁子[Clove] 、月桂樹の葉[LAURIER]、タイム 【チキンブイヨン】 鶏ガラ+鶏モモ肉、基本野菜、基本ハーブ 【ビーフブイヨン】 鶏ガラ+牛スネ肉、基本野菜、基本ハーブ+ニンニク、ワイン --- 参照 --- (1) French Garbure http://www.soupsong.com/rgarbure.html (2) 「鍋と煮込み」 バレンシア自治州 http://www.comunitatvalenciana.com/Valenciaweb_jp/Pages/gastro2_stews.htm (3) A.ESCOFFIER[角田明 訳]: 「エスコフィエ フランス料理」 柴田書店 1999年・・・原本初版1902年 収録:約5,000種類 [目次] http://www.shibatashoten.jp/pdf/05658.pdf ・「スープ」のカテゴリーは, “POTAGE”. -「コンソメ」のように澄んだものは, “POTAGE CLAIR”. -とろみがつくのが, “POTAGE LIE”. -上記非該当は, “POTAGE SPECIAL”. (Creusetのイラスト) (C) SweetRoom http://www.hisaz.com/sweet 「料理講座」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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