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2009.4.28
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心太作り…

  一月100円で生活する方法などいう話をしても、
  全く理解できない人が大多数になってしまった。
  小生が心太を食べるようになったのは大人になってから。
  今は、スーパーに山のように積まれていることがあるが、
  子供も、喜んで食べているのだろうか。


 5月に入ると、伊豆では、天草から作った生寒天を突いた「心太」がふるまわれる。(1)おそらく全国的に類似のイベントがあるのではないか。
 “ところてん”自体はどこにでもある食べ物だが、天草から直接作ったものは珍しい部類と言ってよいだろう。

 お店の“ところてん”は凍結乾燥させた寒天を煮溶かして作るのが普通だし、場合によっては、原料価格を抑えるために、粉寒天を加えたりする。生には滅多にお目にかかれないのである。
  → 「てんぐさ」 (2008年3月14日)
 スーパーには出来合いのパック品が並ぶが、商品ラベルの原材料名には、オゴノリ、紅藻類、粉寒天が記載されているものが大半で、天草品は高級品。

 要するに、昔からの「心太」の食感を味わう機会は滅多にないのである。

 と言うことで、今回は、天草(“マグサ”)からの“ところてん”作りをお勧めしたい。
(干した天草はスーパーの定番商品ではないが、時に売っていることもあるし、漁協の直売所や、海がウリの土産物店にはたいてい置いてあるから、入手困難というほどではないと思う。)

 作り方だが、たいていは天草にレシピがついてくる。と言っても、煮溶かして、布巾で漉して冷ませば、凝固して生寒天ができあがるというだけのこと。
 ただ、酢を入れる必要がある。
[化学実験が好きだったら、pH試験紙と温度計を用意すれば、絶品も可能なようだ。(2)]
 難しいのは、水の量だが、一般的には天草50gに対し、水2,000cc。酢は大匙1杯(15ml)とされる。注意すべき点は特に無いが、しいてあげれば以下のようなものか。色々な意見があるようだから、何がよいかよくわからぬが。
 ・天草はよく洗い、水につけておく。
  (まともな商品なら、結構汚れている筈である。)
 ・沸かす水は全量使わず、蒸発した分を暫時継ぎ足す分として、2〜3割を残す。
  (面倒なら全部使ってもたいした影響はない。)
 ・沸騰したら、酢を入れ、その後に天草を入れる。
  (酢が凝固のポイントだから、量を正確に。)
 ・火加減はどうでもよいが、吹きこぼれ易いので火力を調節する。
  (どうせすることが無いから、アクをとったらよい。)
 ・時々かきまぜ、残りの水を差す。
  (温度を下げようという訳ではない。)
 ・煮溶けるまで加熱する。
  (少なくとも30分はかかる。)
 ・ドロドロになったら漉す。
  (ザルに布巾あるいは、市販の漉し紙を敷くと簡単である。)
 ・すぐに流れ落ちないから、ザルを持ち続ける必要がある。
  (忍耐が必要だから、短気な人は工夫すること。)
 ・冷めたら冷蔵庫で冷やす。
  (容器の材質と形状によるが、最低2時間は必要だろう。)

 要するに、鍋から目を離すなというだけ。
 ただ、水が蒸発しすぎると、生寒天の水分量が少なすぎ、硬すぎるものになる可能性はある。だが、こればかりは、天草の質もあるから、見極めは難しい。

 できあがったら、ところてん突き器で突くだけ。道具の価格はピンキリ。もちろん、包丁でもよいが情緒に欠ける。

 定番の食べ方は、和辛子に、醤油と酢。お店では、糸状に切った海苔か、青海苔粉がふってあるが天草の香りがわからなくなるからよそう。

 もちろん、辛子の代わりに山葵にする人もあるし、全く入れない人も。三杯酢や酢抜きという話もある。胡麻が振られることも少なくない。まあ、好き好きということ。

 甘味なら、黒蜜と黄粉という手もあろう。

 さて、ここから何を学びたいかだ。
 おわかりだと思うが、食感の嬉しさである。
 ワラビ粉、本葛粉、片栗粉、・・・といった粉モノも同様だが、ここでは以下の3種の違いが眼目。
  ・トコロテン(寒天・・・海藻)
  ・ゼリー(ゼラチン・・・動物) → “蟹肉のゼラチン固め”「身の丈に合ったX'mas料理」 (2008年12月24日)
  ・ジャム(ペクチン/砂糖/酸・・・果物) → “Marmaladeの作り方の一例”「夏蜜柑」 (2009年4月21日)
 これ位なら、多分わかると思うが、子供の頃から海外生活が長いと、硬軟程度の峻別しかできないこともある。そんな人は蒟蒻は気味悪く感じるそうだし、心太には海藻臭さを感じるという。好物どころではないのだ。結構、食とは微妙なのである。
 言うまでもないが、上記の3つの違いがすぐわかる人でないと、作りたての生寒天を突いた心太が、今まで食べてきた“ところてん”とは似て非なるものと感じられない。残念ながら、その喜びはわからないかも。

 こんなことに何故こだわるかといえば、海藻にこれほどこだわるのは日本人だけだからだ。欧米では、紅藻類の名前は“Kelp”のみらしい。お陰で、輸入する場合は学名を使うのだとか。
 日本では、天草類だけでも、“マグサ”以外に“オニクサ”や“オオブサ”がある位で、欧米から見れば、その執着ぶりは尋常ではないということになろう。

 --- 参照 ---
(1) 堂ヶ島てんぐさ祭り[2009/05/25〜28]   http://www.izunet.jp/event/wi/tengusa.htm
   初島ところてん祭り[5月1〜5日]  http://hellonavi.jp/atami/event/tokorotenmatsuri.html
(2) 松橋鐡治郎: 「寒天・ところてん読本」 農文協 2008年9月   194頁: 「家庭で作る“低温酸処理による絶品の心太作り”」


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