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オジサンのための料理講座 ←イラスト (C) SweetRoom 2010.10.7 |
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和の味覚を知るためのスパゲッティ料理…スパゲティトングはレストランでは櫛型で挟む形のものが使われる。家庭では爪つきのサーバー型や爪つき大型スプーンのようなものでも十分。 ← イラストby (C) NOM's FOODS iLLUSTRATED 〜 今講座で学ぼうとしている和食の本質のご確認。 〜 くどいので辟易する人も多いだろうが、和食の本質について語っておきたい。 ご飯と味噌汁に漬物という基本メニューの意味を勝手に解釈して、世界に誇るものという人がいるがとんでもないこと。単に、ご飯が美味しいからである。それを引き立たせるように考慮したにすぎない。 この観点に立てば、具沢山の味噌汁は、ご飯の味を堪能する方向とは全く逆であり、和の伝統とは言い難い。おわかりだろうか。 こんなところを、官能でご理解いただけるように企画してみようと考えている。そのための前説がちょっと長くなる訳。 先ず、大原則。和だろうが、中華だろうが、フレンチだろうが、澱粉質の“主食”を塩で食べるのだが、塩だけではキツイのでそれを優しくしているだけ。 そうなると、東アジアと西欧の違いは大雑把に言えば以下のようになる。余りにステレオタイプな表現で恐縮だが、ここは押さえておく必要があるので致し方ない。 ■主食の澱粉質食材■ ・東アジアの基本形 「米→ご飯」 但し、寒冷乾燥地は「雑穀→麺」 ・西欧の基本形 「小麦→パン」 そして、これを塩で食べるのだが、それをどう緩和するかの技術が全く異なる。 ■塩味の緩和方法■ ・東アジアの基本形 旨味 和の鉄則: 海産物旨味成分「出汁」 中華の鉄則: 鶏スープ「湯」 ・西欧の基本形 乳脂肪「バター」 動物性脂肪の廉価代替品: 植物性油脂 これは、“副食”の都合。 ■蛋白質の食材■ ・東アジアの基本形 家で飼育する「鶏と豚」 但し、日本は漁撈の「魚介」中心 ・西欧の基本形 草原牧畜の「牛と羊」 野菜はこのつけたし。米がとれる地帯は湿潤だから、野菜は豊富だったのは間違いないが、澱粉・蛋白・脂肪がないから基本食材と見なされていなかったのではないか。 要するに、気候風土の違いからくる、「水稲農業一本槍」 v.s.「牧畜*小麦畑作農業」というだけの話の再確認。つまり、東アジアといえども、前者の経営が難しい地域は西欧的なものにならざるをえないということ。中華料理が油だらけと感じるのは、そのせいもあろう。 ここでわかることは、日本がご飯を誇るのも、あながち国粋的な心情だけとも言えきれない点。澱粉質と塩だけの食事を考えると、日本のご飯は優位性がありそうな気がするからである。パンや非ジャポニカ米のご飯の冷めたものは、ご当地の人でも食べたくない料理とされるだろうが、日本の場合、塩握り飯でも結構食べられるからだ。(もちろん、禅宗の影響で培われた粗食文化が染み付いているだけという可能性もある。) しかし、これを誇れる食生活とは言い難い。塩だけでの“ご飯喰い”は、健康的とは程遠いからである。畜肉や油脂の旨味も取り入れ、そこから脱したのは流れとしては正解だったと思う。ただ、お数とご飯を交互に食べる習慣は残しているから、“ご飯喰い”文化はさらに強化されたと言えないこともない。(現代の若者は当てはまらない。)ここら辺りの姿勢はいかにも日本的。 〜 醤油の美味しさにこだわると“和”の感覚を忘れるのではないか。 〜 上記は復習。ここからが今回のお話となる。 この塩味を緩和する方法だが、何時のことか知らぬが、一大イノベーションが発生した。塩味を他の味覚で感じさせなくするのではなく、塩でさらに旨味を増す、高度な技術が登場したのである。そう、酒から派生した醗酵技術。ここもも、東アジアと西欧はえらく違う。 ■醗酵調味料■ ・東アジアの基本形 醤油/味噌(大豆や穀類) 海産物主流地域 魚醤、塩辛 ・西欧の基本形 チーズ ■野菜の漬物■ ・東アジアの基本形 乳酸菌(単なる塩漬) ・西欧の基本形 酢(酒の醗酵品) さあ、ここである。ここから“和”とは何かを考えることをお勧めしたいのである。 例えば、米国では、醤油味の鶏ローストを結構見かけるが、それを“和”と感じるかということ。それは違うというなら、日本で小お馴染みの和風ステーキはどうか。醤油味というだけで“和”であるが。以前、和風ハンバーグで有名なレストランで食べたことがあるが、挽肉にしっかりと西欧風の味がついていた。大根おろしと醤油味が特徴ということ。尚、つけ合わせは焼きジャガイモとバター。小生はパンで食べたが、もちろんウエイトレスにライスにしますかと聞かれる。非和風ハンバーグでも、ほとんどの人はライス選定だそうである。 小生は、上質の牛薄切り肉の、塩・胡椒炒めに、微量のバター風味を加える料理に“和”を感じる。これが、伝統の“和”の官能と信じているからである。 そんな観点で、以下、3つの料理をご提案したのである。 【第1aステップ】 → 「和食の原点を考える」 (2010年9月3日) ・調味料として、味噌/醤油、油、酢、砂糖は一切使わない。 ・塩と出汁だけでご飯の味を楽しむ。 【第2aステップ】 → 「和の塩味を楽しむ」 (2010年10月6日) ・大饗の真似事。料理の品数は揃える。 ・料理といっても、素材そのものに近く、シンプル調理。 【第1bステップ】 → 「和食の味覚を知るための洋食作り」 (2010年9月14日) ・“バター+塩”の料理とパンだけの食事。 続く、【第2bステップ】が今回という訳。題材はイタリアン。といっても、誰でもできるスパゲッティ料理。 〜 和の真髄を感じさせるスパゲッティとは何か。 〜 パスタ専門店のメニューにはどういう訳か、必ず和風スパゲッティが入る。それが一番人気だったりするのだから、当然だろう。そうなれば、スーパーの棚に“和風”調のレトルトや簡単ふりかけ商品がずらりと並ぶことになる。簡単調理の割りに美味しいぜということなのだろう。 レシピとしては色々だが、明太子や椎茸を使うとか、紫蘇風味が“和”ということのようだ。 すでに述べたように、これは“和”の官能の深層から外れかねない。従って、これぞ“和”というスパゲッティ料理をお勧めしたい。 そうするとどんな料理になるか、おわかりになるだろうか。 上記でくどい位にご説明したように。“和”が追求しているのは、あくまでも主食たるお米の美味しさ。お数はそれを引き出すものでしかない。その精神で、料理に“和”のテーストを考えればよいのである。要は、スパゲッティの小麦風味がわかるかだ。明太子や紫蘇では無理だと思う。茸の具沢山も油が多すぎ、その味で食べているようなもの。パンに日本の茸風味オリーブオイルをつけて食べるのとたいしてかわらない。 ということでレシピ。というほどのものではないのだが。 ■■■最高にシンプルなスパゲッティ料理■■■ 先ず、食材だが、イタリアからの輸入スパゲッティをお勧めする。確実にセモリナ粉100%で、古典的な製法で作っていどそうだから。それに太目だし。別に、どこ製品でもよいのだが、中身や製法の判別ができないから致し方なし。 例えば、“DE CECCO”No.12(1.9mm)−茹で標準時間12分といった商品。尚、価格はお店でとんでもなく違う。大安売りしているのはたいていNo.11である。 単に茹でるだけだが、お湯に塩をしっかりと(大目に)入れること。この塩味で食べるからだ。茹で加減は好き好き。茹であがりそうになったら、湯を皿に取り、皿を暖めてから、スパゲッティを皿に盛ること。要するに、単なる塩茹で麺を食べるのである。 皿にスパゲッティをもったら、チーズを振り掛ける。工業製品のパルメザンチーズでなく、熟成したチーズの塊を購入すること。 (言うまでもないが、チーズはそれなりの価格。)この素材が肝心。 そのチーズを、グレーターでその場で振り掛ける。一皿でなく、時間がかかって麺が冷えかねないなら、茹でている最中におろして別の皿に入れておけばよい。 これだけである。 胡椒と生ハムも入れたくなるだろうが、よしておこう。 おわかりだと思うが、油分ゼロである。これは、西欧人にとってはちっとも美味しくない食べ物の筈。 しかし、上質な素材の(旬の廉価食材)家庭料理を食べてきた日本人なら、まず間違いなくこの美味しさを堪能できる。チーズの旨味で、塩味が染み込んだスパゲッティの小麦風味がわかるからである。これが喜び。 上質な出汁のお茶漬けのようなもの。 尚、つけあわせが欲しいなら、ニンジンのピクルスがよい。少量を、前日に小瓶でつくっておくととよい。ニンジンは古く商品でもよいから良質なものを購入すること。(良質とされていても、葉つきは駄目。間違いなく見栄え狙いの商品を高く売ろうと考えている店である。) 白ワインビネガーにローリエ1枚とクローブ1ケ、数粒のコショウで漬けておけばよいだけ。(量は好みだが、極薄風味をお勧めしたい。唐辛子を入れたくなっても我慢。 これなら、チーズではなく、カラスミにしたらという発想もあろう。粉末カラスミも売っているし。 しかし、それでは学べない。チーズの旨味を知り、それを和にもってくるところが肝なのである。旨味で塩味を緩和して、澱粉質の首相kを食べるということ。 茹でただけの太麺(地場小麦粉+塩)に生醤油をかけただけの、“ぶっかけ”讃岐饂飩と本質的には同じもの。ただ、小麦粉の風味は全く違う。 【追記 2010.10.7】 間違えてはこまるが、イタリア製スパゲッティで“確実にセモリナ粉100%”とは、イタリア産小麦という意味ではない。常識で考えれば、スーパーで売られている商品にそんなことはあり得ない。重要なのは、昔からの小麦粉風味が薄れないように、輸入品で伝統的なセモリナ粉の風味がでるように作っている商品である点。イタリア製なら、それが顧客の要望だろうから、外れないだとうという話。 これに対して、日本製品は高度な技術を駆使したものが結構多い。早茹でのために麺加工を施したり、押し出し機械の改良といったハード面では先を走っているのは間違いないところ。品質の安定性も多分最高レベルだろう。それに、蕎麦を作っているから、各地の小麦粉のフレンド方法、粉径分布、水質にもこだわっていそうである。技術的には、おそろく、どのような特性の麺も作れる力がありそうだ。 ただ、日本メーカーの対象顧客はあくまでも日本人。ここを忘れるべきでない。アルデンテの食感や小麦風味への関心が薄い人達と言ってよかろう。それに合わせた商品になっている筈で、輸入品とは違う可能性が高い。 「料理講座」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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