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2003.1.31 |
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小売業不振の元凶(4:「都市」の小売業態)…都会圏で小売業再興が実現できれば、小売市場の回復のきっかけがつかめる。都市圏の人口は増えており、ここで一人当りの消費が増えれば、消費拡大基調への転換が始まる可能性が生まれる。そうなれば、日本経済のボトルネック、消費減退が消滅するかもしれない。生活費が高く、将来への不安あるため、消費低迷が続いてきた。世界的な商品価格下落と共に、消費低迷が経済停滞の主要因であることは明らかだ。ところが、効果がありそうな消費拡大策が不在だ。政策案出能力に問題がありそうだ。 ・・・と主張すると、様々な施策を並べ、丁寧に解説してくれる人が多い。施策は打っているが、効果がいまひとつだ、との指摘だ。 確かに施策はあるが、「地方」と「都市」が峻別されてしない。両者一律政策では、プラスとマイナスが同居してしまう。これでは、実質的な効果は生まれまい。ここに問題があると思う。 峻別しないのは、都市に消費不況克服の原動力があると考えないからだろう。 数字で見れば、確かに都会の消費は低迷している。2002年の東京地区百貨店売上は、対前年度比3.2%減だ。(http://www.depart.or.jp/uriage/tokyo/tokyo_3.htm) 業態問題は感じても、「地方」と「都市」を峻別したところで、意味があると思えないのは当然かもしれない。 しかし、都会ではスポット的に伸張している小売業がある。例えば、青山地区のブランドショップだ。特に「旗艦店」は絶好調である。 この現象を単純に解釈すると、魅力的な店を核に集客スポットを作ろうという話が生まれる。その結果、魅力的な新型モールが作られる。業績好調の所も多いが、ほとんどが需要移転にすぎない。これでは、都会立地でも、「都市」型とは言い難い。 「都市」型商業は、当該地域に存在する昼間/夜間の住民にとって、魅力ある小売業態であることが必須条件である。青山地区の旗艦店と、都会のデパート内の出店は全く意味が違う。前者は、その地区の魅力を高めているから「都市」型だが、後者は「地方」型に近い。後者の投資はミクロでは成功しても、マクロでは投資効率を下げている。 重要なことは、地区全体の魅力を高めることで、当該住民の消費の質を高めることにある。これを、地域全体の活性化の呼び水にすることが重要なのだ。 ・・・このように教訓化すると、小売業を核とする都市再開発の重要性が理解できると思う。 現実には、このような動きは稀だ。代官山や渋谷での試みはあったが、忘れさられている。 しかし、典型例とは言い難いが、「都市」型の威力を見せつける、大きな成果が生まれた。 2002年9月に開業した「丸ビル」である。4ヶ月間で、来場者数960万人、売上122億円を記録した。 (http://www.mec.co.jp/j/group/news/release/030108_1.htm) 開店前から、集客力あるとされてはいたが、多くて年間1,500万人程度との予測が多かった。購買率と客単価を考えれば、年商150億円は固いだろうが、200億円には達しまい、と見られていた。ところが、蓋を開けた瞬間から、爆発的な人気を博し、予想は大きく外れた。 しかも、周囲の路面店の売上増にも大きく寄与している。丸の内地区が大きく変わったのである。 同様なプロジェクトがある。4月に開業予定の森ビル再開発プロジェクト「六本木ヒルズ」だ。こちらは、約2万人のオフィスと商店街に加え、約2000人の住宅/ホテル/放送センターを加えた総合地域になる。(http://www.roppongihills.com ) 1日10万人が行き交う人口密集地帯が生まれる。 いずれも、すでに文化が確立している地域で、ビジネスと商業の複合化を狙ったプロジェクトという点が重要である。これが「都市」型小売業を勃興させ、経済活性化を促す効果を生むのである。 今までの都市再開発は、港湾地帯/倉庫工場跡地/操車場での、大型プロジェクトばかりだ。(それ以外のプロジェクトは、ビジネス/住居/商業のどれかに特化した、機能リニューアル版に過ぎない。) こうしたプロジェクトは、斬新なコンセプトの近代的施設は導入できるが、所詮は人工的な街なので、顧客はバラバラだ。「地方」で採用される、大規模投資による集客施設と同じで、既存地区からの需要の移転効果しか生まれない。マクロで見れば資本効率は下がる。 一方、丸の内や六本木は、すでに文化が確立している地域だ。ここで、ビジネスと商業の一体化を図れば、既存住民の消費性向が変わる可能性が高い。 つまり、その地域独特の、新しい消費パターンが生まれるということだ。「丸ビル」消費文化や、「六本木ヒルズ」消費文化が確立できる。これにより、消費の質が高まる。換言すれば、市場拡大である。地域独特の消費文化を確立すれば、小売市場活性化の起爆剤になる訳だ。 都市化している地域を再開発して、「喝」を入れ、独自の文化発信能力を高めると、小売市場拡大につながるという理屈である。文化発信能力が備われば、地域文化を土台にした起業の波も自然に蠢き始める。地域文化を育てるための消費がさらに増える、という好循環が発生する。 こうした動きの決め手は小売業だ。 ビジネス/商業/住居等、様々な機能が同居しているから、ニーズに合わせた新業態や新サービスのチャンスが数限りなく生まれる。小売業が試行錯誤を繰り返しながら、文化を深め、固定化するのである。 こうなると、小売業は、商品販売業とは呼べなくなる。商品やサービスの販売を通じて、地域文化とその「スタイリッシュ感」を販売しているのだ。これこそ、一大業態転換といえよう。 こうした業態転換促進策が、「都市」型再開発事業になる。 但し、「丸ビル」や「六本木ヒルズ」は尖兵とは言えるが、特異例だ。 例えば、台湾で見られるような、アパート兼オフィス兼商業兼レストランといった煩雑な一体化ビルが都会に登場してもおかしくない。特定業界人にとっては住みたい地域ナンバー1になるかもしれない。都会は雑多であり、そこにエネルギーが隠されている。様々な文化が存在し、互いに競争すればよい。 このような動きを進めるためには、住宅地域、商業地域、ビジネス地域を分割した、「整然とした地域作り」のドグマを捨て去る必要がある。この考え方を守る限り、衰退する「地方」が増えるだけだ。 先ずは、経済発展の牽引車を「都市」と決めるべきだ。 そして、「都市」化の流れを主導するような小売業を徹底的に支援する。難しい政策ではない。イノベーティブな小売企業に、地域文化とその「スタイリッシュ感」を訴求させ、地域の魅力を高めるだけのことだ。この流れを一気に促進させたければ、「都市」型再開発を進めればよい。 過去記載の ・「小売業不振の元凶(1:人口問題)」へ (20030128) ・「小売業不振の元凶(2:都市化の影響)」へ (20030129) ・「小売業不振の元凶(3::「地方」の政策)」へ (20030130) 「政治経済学」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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