ウマの系譜 現存する唯一の半野生種と言われる蒙古野馬[→2013..3.26] を眺めていてつくづく感じたのだが、長期的に見れば、馬一族は絶滅の可能性が高そう。 この種族は基本的には群れて暮らさないとその本性は見えてこないことに気付いたから。たまたま、多少広い運動場ができたので、その気性の荒さと、図太い体躯が目立つ訳だが、これは馬族に共通した特徴だったのかも。家畜化されて、ヒトに懐くようになったと言うより、それなくしてはとっくに全滅していたと見て間違いなかろう。 たまたま家畜化が進んでどうやらそれを逃れたとはいえ、この先、広い草原を馬の群れのために永続的に確保するのはそう簡単なことではないだろうから、将来が危ぶまれる。 考えてみれば、もともと、そんな綱渡り的な種の維持で来たのが、馬ということもできそう。 最初の危機は「原型馬」から大型化した時に発生した模様。 下記の系図を見るとよくわかる。これらは、所謂、奇蹄類と呼ばれる動物の祖先を示したものだが、主流はもちろん「馬」である。(鉤爪が入っているので違和感を覚える系図だが、肉食獣の爪とは用途が違うということらしい。土中、あるいは樹木や崖の上部の植物性餌を採種するためということのようだ。多分、後者主体なのだろう。多少、腑に落ちぬところはあるが。) ともあれ、この時代の特徴は、気候が熱帯/亜熱帯で、森林におおわれていたらしいという点。つまり、草食性という名称にしているだけで、食の対象は草本ではなく、もっぱら木本になる。樹木の葉を食べていた訳だ。ところが、乾燥が進んで来ると、森が縮退して草原化。恐竜が去った後の世界を堪能していた、体躯が大型化していた草食獣は途端に餌不足に直面した訳である。変身できない種は絶滅の憂き目。馬とは、そのなかで、樹木葉から、硬くて不消化と見なされていた草本の葉へと食性転換に成功して生き残った訳である。そして、馬以外にどうやら生き残れたのが、限定した環境適応の種族である、獏と犀。 (系統図は素人の勝手な抜書きであるから信用しないこと。) <大型化草食系蹄系哺乳類> ┼│ ┼│┌"元祖"馬[樹木葉食]→<現生ウマ> ┼├┤ ┼│└"Y字角"ブロントテリウム樹木葉食]→大型化: 40-31mya ┼│ ┼├─"元祖"獏→<現生バク> [→2013.4.26] ┼│┼┼┼┼┼┼├【旧大陸】マレー ┼│┼┼┼┼┼┼└【新大陸】アメリカ、ヤマ、ベアード ┼│ ┼│┌"元祖"犀→<現生サイ> [→2013.4.27]、[→2013.9.21] ┼││┼┼┼┼┼├【アジア1角】インド、ジャワ・・・4-2mya ┼├┤┼┼┼┼┼├【アジア原始的2角】スマトラ・・・15mya ┼││┼┼┼┼┼└【アフリカ2角】黒、白・・・15mya ┼│├ヒラコドン: 55.8-20mya ┼│└アミノドン: 46.2-7mya ┼│ ┼└─"鉤爪"カリコテリウム[樹木葉食]→大型化: 28.4-3.6mya 素人的に面白いと思うのは、同じように危機に見舞われた異なる系統でも、森に棲もうということで、似たような変化が生まれていること。 【@アフリカ】 2角犀[黒、白] v.s. 河馬 【@旧大陸】 獏[マレー] v.s. 猪[ユーラシア、セレベス、スンダ、ヒゲ] 【@新大陸】 獏[アマリカ、ヤマ、ベアード] v.s. ペッカリー(臍猪) 上記のような話になると、成る程ダーウィン進化論的になりかねない。馬についても、そんな話をよく耳にした。 ・体躯大型化で効率向上 長い腸(消化力強化) 長い足(逃亡速度上昇) 高い視点(警戒能力向上) ・草原での逃亡力増強 5本指→4本指→3本指→1本指 (重心は中指) 指先蹄→外側と底枠蹄→頑丈化 (蹄による蹴る反発力の圧倒的向上) 足首ジョイントレス化 (2つの骨の融着で捻挫防止) ・草食体型化 首長と屈折で地表草本対応 鼻面伸張で草摂取効率向上 ・側面大口径眼による全方位警戒型化 ・歯の草食対応化 門歯揃え(3x左右x上下) 磨り減り対応の高冠歯化 前臼歯の本格臼歯化 納得感があるが、現実には、これが一直線的に進んでいたということでもなさそうで、馬の系譜とは実はゴチャゴチャと考えた方がよいようだ。とはいえ、そのような流れで捉えることが間違っているという訳ではなく、大きくみれば結果的にそうなってしまったということのようだ。 エオヒップスは指先だけに蹄があり、指歩きしたに相違ないから、これぞ奇蹄目全体の原型と言われれば、誰でも納得するだろうし。それになんといっても、化石の出土数が多いので、進化の歴史が実感できることも大きかろう。 "元祖"馬 ┼│前4後3指 25-45cmH(肩)x60cmL 44本低冠歯 52mya ┼├エオヒップス(正式名ヒラコテリウム)【北米+欧州】・・・ハイラックス的 ┼├オロヒップス(別名プロトロヒップス) 50mya・・・跳躍向きなスリム化 ┼├エピヒップス 47mya ┼│┼前後3指/中指長太 32-24mya ┼└┬メソヒップス【北米】 ┼┼└┬ミオヒップス 30mya ┼┼┼└┬メガヒップス【北米】 ┼┼┼┼│┼前後3指/中指完全依存 ┼┼┼┼└┬メリキップス ┼┼┼┼┼│ ┼┌───┘ここまでくるとほとんどウマに近い。 ┼│┼1指 12mya ┼├┬(1)プリオヒップス【北米】・・・細く長い脚 ┼││ ↑骨形状が違うので、現生ウマの系列ではなかろう。 ┼│└────<現生>シマウマ、ロバ ┼│┼┼ 10.3-3.6mya ┼└─┬(2)ディノヒップス【北米】 ┼┼┼│ ┼┼┼└─┬(3)ヒッピディオン【北米→南米】・・・ロバ的 ┼┼┼┼┼│ ┼┼┼┼┼└──┬(4)[絶滅]野馬→現代家畜馬 ┼┼┼┼┼┼┼┼└─蒙古野馬 上記でおわかりだろうか。もともと北半球に存在しており、森林減少にも適応して生きてきたし、北米とユーラシア間が切れても独自の進化が発生していた訳である。しかも、北米から南米にも進出。 しかし、ご存知のように、新大陸ではウマは一度絶滅したのである。そして、ヒトによって持ち込まれれた訳である。 新大陸に限らず、現生ウマとは、ヒトとの紐帯があってどうやら生き延びた一族と見てよいのでは。おそらく中央アジア/トルキスタン辺りで、ヒトと折り合いをつけることで、どうやら生き延びることができたという訳である。 分類の考え方−INDEX >>> HOME>>> (C) 2014 RandDManagement.com |