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魚の話  2015年2月9日

Lingの話

"Oda al Caldillo de Congrio" [Congrioチャウダーの歌]
  by Pablo Neruda パブロ・ネルーダ[1904-1973]
 En el mar  [海に]
 tormentoso  [嵐の↑]
 de Chile  [チリの↑]
 vive el rosado congrio,  [生きている"南赤髭"は]
 gigante anuila  [巨大鰻だ。]
 de nevada carne.・・・  [雪の様な肉の↑]

   (source)http://www.soupsong.com/sconger.html

リングとは日本での通称名とされるが、小生は耳にしたことはない。もともとは、ニュージランドでの呼び名のようだ。
"南赤髭"なる和名もあるようだが、インターネットで見る限り、ほとんど通用していないように見える。ちなみに、英語名はKingklip あるいはPink cusk-eelである。漁業関係者は前者を使うようで、冷凍フィレが諸外国では流通していそう。
尚、チリでは、上記のノーベル賞作家の詩でおわかりのように、"rosado congrio"[ピンク色味の穴子]だ。チリ風鱈鍋とも言えそうな煮込み料理が格別に美味しいということで、政治的な諷刺という訳ではなさそう。

そんなこともあるのか、その昔は、日本の遠洋漁船がはるばる出漁していたらしく、アマダイの切り身として流通していたと言う話もあるようだ。漁撈担当者が飛行機で出張する南アフリカ辺りだろうか。まあ、それも今は昔らしいが。

FAO[FishStat]によれば、アフリカ南端や南米南端地域、豪州南岸とNZで獲られているらしく、2012年の漁獲量は34,259t。チリに限らず、どこでも人気魚の可能性があり、安価な白身魚として日本に輸入するのは難しそうである。チリ料理の流行仕掛け人でも登場すれば別だろうが。

もちろん美味しい理由は大型の深海魚だから。以下の様にアシロの仲間に属すそうだ。この類縁状況を眺めると、素人からすれば、姿形からしてもイタチウオ系と言われた方がピンとくるが。アシロではなんだかさっぱりわからない訳で。
   「いたちうお の話」[2008年5月16日]
  ─・─../Ray-finned fish/..─・─
   <../Cusk-eels/鼬魚>
 鼬魚("黒髭鱈")/Bearded brotula/鬚鼬
 鎧鼬魚("赤髭鱈")/Snubnose brotula or Armored weasel-fish/棘鼬
 阿代[アシロ]/Drab cusk-eel/鼬
 海泥鰌/Golden cusk-eel/仙鼬
 潮鼬魚/Loach brotula/新鼬
 南赤髭("リング")/Kingklip or Pink cusk-eel/羽鼬/[西]Abadejo
 黄泉阿代//神女底鼬@プエルトリコ海溝8,370m
   <../Pearlfish/隠魚>
 隠魚/Messmate pearlfish/佐上細潛魚
   <底奥目魚/Blind cusk-eels/裸鼬魚>
 三筋奥目魚//太平洋盲鼬
   <../Brotula/深海鼬魚 or 胎鼬
 総[フサ]鼬魚//深海胎
   <偽鼬魚/False brotula/副鬚鼬魚>
 深海草魚/Hadal snailfish/鈍口擬獅子魚@日本海溝7,700m

日本海溝やマリアナ海溝からあがってくる深海魚のバラエティ豊かな日本のこと。リングと同様な種が棲んでいておかしくなかろう。どうも、それに該当するのが、鎧鼬魚のようだ。「髭(鱈)」と呼ばれており、美味とおっしゃる方もおられる。滅多に食べれないらしいが。そうそう、阿代の肝も旨いとか。
多分、味や食感では、「リング」といい勝負なのでは。
形状から見て、鼬魚も同様にイケそうだが、色が赤系ではなく黒系なので今一歩とされそう。しかし、「黒髭鱈」と呼ばれているところを見ると喜んで食されているのは間違いなさそう。と言っても、狙った漁撈を始めない限り、そうそう大型の髭鱈が獲れるものでもなかろうから、一部の愛好者の食卓に並ぶのだと思われる。

そうそう「髭」とか、「鱈」という名の深海魚は全く別な種であるソコダラ類。
確かに、外見が似ているといえばそう言えないこともないが、クサウオ系の方が骨格的にはソコダラに近そう。薄色というか、色素を失っているので気味が悪いので別途扱いなのかも。・・・

阿代/鼬魚/隠魚/Ling 類

比丘尼/阿葉茶/草魚/蒟蒻魚 類
   びくにん の話[2015年2月7日]

底鱈/唐人/髭 類
   とうじん の話[2015年2月4日]
まあ、上記3グループは"真"深海魚と見なしてよかろう。水深3,000mを越えた真っ暗なところでも生き抜いている魚なのだから。

尚、「食べられる深海魚ハンドブック」で上記の範囲で採用されているのは、煮物にしか向かない、ブヨブヨ系の阿葉茶と、軟い身の鮭比丘尼に加えて、刺身にもできる外法(唐人)である。鎧鼬魚は落選。
   魚図鑑もイロイロ [2015年2月5日]

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