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■■■ 2015年5月12日 ■■■

里芋貝類…


手向けり
貝はお芋に
似たるとて
身無き殻々
たてまつるとて


「芋貝 or 身無貝/Cone snail/芋螺」は、翁恵比寿貝 [→]、寶貝 [→]と並ぶ、お金持ちコレクターの三羽烏。このうち、輪切り芋は古代からの倭の習慣でもある。

もちろん、南洋の貝。
"殻表面に精緻で複雑な模様を施すものがあり、大きさも手ごろ"という点が素晴らしいということらしい。
小生は、陶器がなかった時代の審美眼が今もって続いていると見るが。
ともかく、棲み分けが細かいから、それに応じて様々なデザインが生まれたということのようだ。沖縄県だけで、およそ100種類は棲息するというから、素人にはとても把握しきれるものではない。
   「食べわけ、すみわけのイモガイの話」[2008年2月22日]

日本の場合は、黒潮のお蔭で、太平洋沿岸でも棲んでいたりするらしいが、南島のイメージそのものと言ってよいだろう。ただ、美しいから安といって、安易に、採取しようと手を出せる貝とは言い難い。南島好きなら誰でも知るように、最強の貝は、ハブ並。訳のわからぬ神経毒にやられれば、解毒剤も無いからどうなるかわからぬ訳で。
  アンボイナ or 波布貝/Geography cone/地紋芋螺

ともあれ、イモガイという名称は、芋形状からついたのは歴然。ただ、現代のイモといえば、渡来の馬鈴薯(ジャガイモ)と甘藷(サツマイモ)。古くから存在した、里と山の芋は今やマイナーな存在。里芋貝と特定しないと、名前から貝が想い浮かばない時代に入ってしまったのである。
名前の付け方にも配慮が必要では。コレはこまる。
  長芋/Austral Cone/長芋螺
長里芋か尖里芋が望ましかろう。

分類学でも、里芋形状の貝だけをイモガイとして一括りにする方向にあるらしいし。

そのなかで一番著名な種、と言うか、単に高価だっただけだが、その一種だけには、御大層だが単純な名前がつけられている。
  海の栄芋/Glory of the sea cone/海之榮光芋螺

種類が多いと言うことは、門外漢にとっては、ナンダカネの名称だらけということ。しかも、文字から姿は想像はしかねるものだらけ。
しかし、コレクターは市場価格も含めてすべてご存知のご様子。その知識欲はとても真似できるものではない。Wikiを眺めると、学名で沢山の種の写真が揃っているのには驚かされる。(英語と中国語での話。)

素人は、「〇〇芋/〇〇 cone/〇〇芋螺」といった名称と写真を眺めるだけだが、名前が微妙に異なっていたりするのが面白い。
【俗称系】
焼/Magician's/僧袍,楽譜/Music,胡麻斑/芝麻,霰/Cat/猫,花環/Sponsal cone,斑/Black-and-white,紗綾[サヤガタ]/Thousand-spot/百万,筆/子弾,アネモネ,真砂/Cobweb,唐草,疣縞/Livid/晩霞,蝋燭/黄,鼬/鼬,鼈甲/Thunderbolt/玳,紅,棗/Bubble/紅棗,瑪瑙/Turtle/花瑪瑙,壺/Princely/宮廷,夢/夢中
【タイトル系】
龍王/Ichinose,船長/Captain,貴妃,王女,少女,帝王/Imperial,将軍,浦島/Urashima,乙姫/Otohime's,海王/Nielsen's,大名/Beech
【人名系】
岡本/Lischke's/李氏,木下/Kinoshita's,クラリー/Clery's,ビクトリ女王/Queen Victoria,杉本,平P,ウォールス,オルビニ,(藍氏,莫氏,欧氏,斯氏,姜氏,假欧氏)
【地名系】
天竺/Admiral,ベンガル/Bengal,モルジブ/Maldive,セイロン,モルッカ/Molucca,マラッカ,シャム,スマトラ,中華/Recluz,日本,和歌山,紀州/Kii,ハルシャ(ペルシア)/紅,バミューダ/Bermuda,カリブ,フロリダ,ジャマイカ,ナタール/Natal


芋貝でなく、身無貝と呼ばれる場合もあるので、それらの名前も追加しておこう。
かなり大型だが、本当に身は僅かなのだろうか。
  樺身無/Vexillum cone/密芋螺
  夕凪身無/Little captain cone/瑪瑙芋螺
もちろん、美しさでは引けをとらない。
  南洋黒身無/Marbled cone/大理石芋螺
難しい名前も。黒檀、紫檀、に並ぶ唐木三木の一つが使われている。日本では、知られないが、東南アジアでは珍しい樹木ではない。ただ、どうして、樹木名にしたかったのかはよくわからないが。地元で、そんな呼び方をしていたのだろうか。
ただ、有名になったのは、命名のせいではなく、アンボイナ以上の猛貝と言う人もいるから。しかも、南島だけでなく、よく見かける貝らしいのだ。殻が剥き出しで美しいから、ついつい採取してしまいがち。そんな貝は珍しい訳で、明らかに危険であることを誇示している。当然ながら、地元の人は知らん顔するから、見つけ易い。お蔭で、死亡者が出ているそうだ。
  鉄刀木身無[タガヤサンミナシ]/Textile cone/織錦芋螺
こちらも矢張り危険な輩。結構大き目。
  錦身無/Striated cone/細線芋螺

何故に「芋」とも「身無」とも呼ばぬのか、わからぬものもある。
  阿古女貝[アコメガイ]

「偽里芋貝」とするのは気が引けるが、里芋型の貝をあげておきたい。オッ、南洋から芋貝の貝殻が流されて来たと勘違いして拾うのはコレ。
分類上、袖が目立つ貝の仲間であり、毒も無い。身有で食用。貝殻より肉の方に人気がありそう。もっとも、輸入品らしいが。 [→2013年2月1日]
  籬貝[マガキガイ]/Strawberry Conch/紅嬌鳳凰螺
水族館では掃除屋として抜擢されることが多いそうだ。水槽で、結構、出会っているのかも。

 --- 参照 ---
(イモ貝の写真) [WIKIMEDIA COMMONS] Sto?ki2.jpg http://commons.wikimedia.org/wiki/Image:Sto%C5%BCki2.jpg

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