表紙 目次 | ⎱ ■■■ 2017年11月28日 ■■■ Worm…Worm/蠕虫とは、左右相称動物のうち足が無く柔らかく細長い種を指すと言われている。素人が分岐系統図を見る気がしなくなる理由の1つは、この類の名称が前口動物の系譜にズラズラと並ぶからである。→ 「進化と分岐の考え方[続 附録]」(2017.11.24) それでなくても、訳のわからぬラテン語を片仮名にしただけの名称で辟易するのに、知らないWormだらけとくれば見る気が失せるのは当たり前。 しかし、動物の全体像を知ろうと思うなら、Wormとされている種類をザッと見ておくことはことの他重要だと思う。ムシズが走る感を払拭するためではなない。その程度の目的なら、目黒寄生虫館に立ち寄ることをお勧めしたい。 分岐図を見れば明らかなように、Wormはヒトとは全く無関係という訳ではなく、ヒトと祖先を共有しているのであり、理屈から言えばどこかに同じ形質が存在していることになる。それは一体なにか気になるではないか。 と言うことで、見ていこう。 但し、左右相称動物のうち、"〜worm"と呼ばれていても、以下はWorm扱いを避けようと思う。 先ず、後口所属群はすべて除外。 半索動物Deuterostome worm…e.g. 擬宝虫(Acorn worm) 前口でも後口的で基底にある棒状種も除外。 毛顎動物 or 矢虫Arrowworm[→] 汎節足動物系は、葉足や節足があるので除外。 有爪動物Velvet worm 緩歩動物Water bears 節足動物 うち無間接足: 舌形 or 舌虫/Pentastoma tongue worm 疣足を持つ沙蚕[ゴカイ]の様な環形動物はWormに入れることになる。 外肛動物 or 苔虫moss animalはWorm的ではないが固着性の内肛動物(姉妹群ではない。)と共にWormと見なすことが多いので同等に扱うこととしよう。 こちらは、原則除外。 軟体動物[→Index] そうそう、貝と間違い易いこちらも除外。 腕足動物 →「しゃみせんがいの話」[2006年9月8日] 姿から、小生は除外したいが、普通はWormと見なすのが、"Reinhardt Kristensen 発見動物群"。もちろん珍種だが、どれも一番近しい類縁がWormだから同じカテゴリーと考えるのが素直。 有輪動物 固着型の特殊な寄生種。(@ロブスター口器) ○シンビオン虫類/Symbion →[PHOTO](C) Microscopy UK 微顎動物 非固着の有輪動物といきたいところ。→[図絵](C) ZMUC 0.1mm程度の淡水棲。 ・リムノグナシア Limnognathia maerski@グリーンランド ディスコ島 胴甲動物Sediment-dwelling worm 大きさ1mm以下で、海底堆積粒子の間隙棲。 よく見つけたものである。(1970年代発見) 通常の篩ではすり抜ける砂泥を丹念に洗ったのだろうか。 その後の探索で、結構様々な種がいることがわかってきた。 代表的なのは以下。 ・甲羅虫 Nanaloricus mysticus ・深海皺甲羅虫 Pliciloricus hadalis 蛸壺からモジャモジャの姿で、ナンダコリャの類。 Wormとは呼び難い。[→PHOTO] 耐無酸素環境性の種も。(ミトコンドリア非依存なのだ。) →J. Fang:"Animals thrive without oxygen at sea bottom"Nature 464 2010年 残りの前口所属動物を以下に示すが、こうすれば、一般人にとってのWorm/蠕虫イメージにほぼ合致するのではなかろうか。 よく知られている体形がすぐに頭に浮かぶだろう。・・・蚯蚓、蛆(蝿の幼虫)、寄生中のトリオ。 葉足的な足がある芋虫(節足動物 昆虫の幼虫)は除外した訳である。(一貫性は欠くが、上で述べたように、節足類の葉足的な舌型はWormとしている。) このWormだが、分類上は多伎に渡っており、動物名ゾロゾロ状態。 従って、素人からすれば、体形がたいして変わらぬ蠕虫を、細かな点の違いに拘って細分化したように思ってしまうが、実体は正反対。どう見ても、矢鱈に独自性を誇っている種だらけ。それらをまとめるなど現段階では無理筋としか言いようがない。 分類は別途掲載したが、以下のように見ると後口全体がわかり易かろう。 <基底種> 矢虫 <脱皮系> 環神経系 線形Worm(線形,類線形) 有棘Worm(鰓曳,動吻,胴甲) 節足系(節足.緩歩,有爪) <非脱皮系> 担顎Worm(顎口,微顎,輪形,鉤頭) 扁形Worm(扁形,腹毛,菱形,直泳) "純粋"冠輪(有輪,軟体,腕足,箒虫,内肛,外肛,紐形,環形) と言うことで、特徴を整理してみた。・・・ 線形動物*☻Round worm 小生はお馴染み動物と考えてしまうが、時代は変わる。 駆虫剤を知らない世代は、"耳にしたことのない名前"、と。 -回虫/Ascarididae Parasitic roundworm -蟯虫/Oxyuridae Pinworm 中間宿主の魚から感染することで知られる虫も。 -顎口虫/Gnathostomatidae 南ア金鉱地下3.6Kmに棲息種。[2011年発見] -ハリケファロブス・メフィスト Halicephalobus mephisto…悪魔の名前 類線形動物*ε 線形動物に類する種ということか。 消化器も循環器も捨て去り、寄生生活一途。 矢鱈に棲み分けが進んでいそう。 ◆游線虫/Nectonematoida…海洋十脚甲殻類寄生 ◆針金虫/Gordioidea…淡水棲(幼虫:水生昆虫寄生⇒捕食陸上昆虫[移住]) 鰓曳動物*Penis worm 砂泥中棲向きな円筒形。前部は胴に収納可能な口吻。 胴には消化管が伸び、後部に亀頭状付属器。 (名称の"鰓"とは何の関係もないが、そう見えたらしい。) カンブリア紀化石が豊富。 動吻動物*Mud dragon or Spiny-crown worm 大きさ1mm以下で、海底砂泥の間隙棲。 11節からなり、第1が吻、第2が頸に当たる。 収納可能な吻に冠棘が付いている。(兼運動器官) 頸には環状にクチクラ板。(吻収納時の蓋) 顎口動物Jaw worm 大きさ0.2〜3.5mmで、砂中棲。 クチクラの顎で砂表面付着物をこそげ取る。 肛門が無い。循環器や呼吸器も無い。 (寄生する線形動物の顎口虫とは違うのでご注意のほど。) 輪形動物 or 輪虫Wheel animal 大きさ1mm未満の淡水浮遊棲。(海水, 陸棲も存在) 担輪子幼生[トロコフォラ/Trochophora]に似ている姿。 頭部に輪状繊毛。 汽水産の海水稚魚養殖餌料で知られる種あり。 ・塩水壺輪虫 Branchionus plicatilis 鉤頭動物*εThorny-headed worm 鉤吻で脊椎動物の胃や腸壁に穴を開けて寄生。 口や消化器は無く体表面から栄養吸収。 (糞と一緒に放出される卵るいは胎児は中間宿主節足動物で孵化成長。) ヒト害は稀。 腹毛動物*Pseudocoelomate worm or Hairyback 大きくても0.5mmいかない。後生動物中最小とか。 一般には、こちらの名前が知られている。 ・鼬虫 Chaetonotus nodicausus ・帯虫類 Macrodasys 扁形動物☻Flat worm 扁平な体躯。楕円形か多い。 循環器・呼吸器が無く運動エネルギー源が貧弱。 出遭い易いのは笄蛭[コウガイビル]。石や落ち葉の下に棲息。 口は腹側にあり、腸管も肛門も無い。 背腹頭があるとはいえ、とてつもない単純構造。 ◆渦虫/Turbellaria (プラナリア, 並渦虫, 笄蛭, 扁虫, 等々) 大角扁虫(Planocera multitentaculata)@グアム沖…河豚毒? ◆条虫 or 真田虫/Cestoda (エキノコックス, 広節裂頭条虫, 日本海裂頭条虫, 有鉤条虫, 無鉤条虫, 等々) ◆単生/Monogenea (双子虫, 等々) ◆吸虫/Trematoda (ジストマ fluke) 楯吸虫 or 単生 二生(日本住血吸虫, 肺吸虫, 肝吸虫, 肝蛭, 横川吸虫, 等々) 菱形動物(旧中生)ε 大きさ1cm未満で、頭足類(蛸, 烏賊)の腎臓に寄生する。 組織や器官が無いシンプルな構造。 細胞数は50個以下で後生動物最少。 (円筒細胞1個に多数の繊毛上皮細胞) 直泳動物(旧中生)ε 海底棲無脊椎動物(扁形, 紐形, 環形, 棘皮, …)に寄生。 組織や器官が無いシンプルな構造。 箒虫動物Horseshoe worm 海底砂泥中棲。(棲管を造る。) 岩上棲の場合は棲管を融着させた群体化。 紫花巾着の棲管で共生する種も存在。 5〜20cm長の円筒状胴に触手冠。 赤血球が流れる閉鎖血管系あり。 内肛動物Sessile aquatic worm or Goblet Worm 大きさ5mm以下の固着棲。ゴブレット形。 触手冠による濾過摂食。U字型腸と肛門あり。 ・鈴苔虫Barentsia benedeni@汽水域 群体性 外肛動物 or 苔虫moss animal →「こけむしの話」[2009年4月24日] 大きさ0.5mm。 炭酸カルシウムの外壁で群体を造る。 触手冠。 U字型腸と肛門あり。 紐形動物 or 紐虫Ribbon worm 浅瀬・岩礁隙間・海底泥中の底棲(例外あり) 無体節菅状でm"最長動物" 無体腔だから筋肉運動はしにくいだろう。 口⇒肛門の消化器官としての腸がある。 体表には繊毛細胞と粘液分泌腺細胞。 眼点のみだが、脳や神経は完備。 先端から長い吻を放出して餌を捕獲。 環形動物*☻Segmented worm ◆多毛/Polychaeta (沙蚕[ゴカイ], 等々) →「ごかいの話」[2008年2月22日] ◆環帯/Clitellata ◇貧毛/Oligochaeta (蚯蚓, 等々) 太蚯蚓/Megascolecidaeの類には目立つ種あり。 "Giant Gippsland earthworm"(Megascolides australis)@豪州…3m以上 "Fried egg worm"(Archipheretima middletoni)@フィリピン ◇蛭[ヒル]/Hirudinea ◇蛭蚯蚓/Branchiobdellidae(Crayfish worm)…躄蟹[ザリガニ]共生 ◆螠虫/Echiura Spoon worm →「ゆむしの話」[2007年3月23日] 【KEY】 ε:所属種すべてが寄生蠕虫/parasitic worm *:偽体腔("袋形/Aschelminthes") ☻:実感できる一般常識的生物が含まれている。 「動物」の目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2017 RandDManagement.com |