表紙 目次 | ⏉底棲 ■■■ 2017年12月23日 ■■■ "ハッチンソン"エビ …"ハッチンソン"エビ(G.E.Hutchinson[1903-1991]:"Father of modern ecology")という呼び方が通用している訳ではない。北米大西洋岸で発見された小蝦をH.L.Sandersが1955年に発表して一躍注目を浴びるようになった「頭[カシラ]蝦」系の一群を指すのに使っている用語を片仮名的にしてみただけ。 (申し述べる必要もないと思うが、当シリーズの記載では、全体が俯瞰できるように、敢えて分類学の表示規則に従っていないし、網羅を目指しているが、学問的な網羅とは違い恣意的な取捨選択が行われている。矛盾する主張を合体させることもあるので、間違いやミスも少なくないと思われる。) 甲殻類全体ではこうなっている。 甲殻類Crustacea ■貝形虫Ostracoda (Seed shrimp) ■顎脚Maxillopoda 鞘甲Thecostraca[→] 姫宿蝦Tantulocarida[→] 鰓尾Branchiura[→] 舌形 or 舌虫Pentastomida[→] 鬚蝦Mystacocarida[→] 橈脚[カイアシ]Copepoda ■百足蝦Remipedia[→] ■頭[カシラ]蝦Cephalocarida ■軟甲Malacostraca ■鰓脚Branchiopoda 百足蝦の姉妹群らしいが、生息環境が全く違うから、外見上、さっぱり似ていない。ただ、泥中生活者のようで光を必要としない点では類似なので、体が白色系で目を欠く点では同じである。 (但し、頭蝦の場合、複眼が内部に埋まっているだけとか。) → [イラスト](C)BIODIDAC@Trea of Life web projekt Cephalocaridaという名称からすると、棲息性ではベントス(on the sea floor)で、餌の対象がデトリタス(dead organic material)ということになる。いくらでもいそうな生物タイプだ。 そのような生活に徹するなら口の構造さえ工夫すれば、餌の取り入れに蝦蟹一族が持つような手足や鋏類が必要とも思えない。まさか"新鮮な"遺骸漁りをしている訳でもあるまいし。 従って、この領域では環形動物が絶対的優位と言えそうだが、頭蝦は、どういう点がウリなのであろうか。 そんなことをつい思ってしまうのは、意外と言っては失礼ながら、特殊な場所に適応して生き残った訳ではなさそうだから。なにせ、棲んでいる底環境は泥底から綺麗な砂底まで色々。しかも、浅海から深海までと展開領域が結構広い。地理的に見ても世界各地に分布。だが、ご発展とも思えない。 ともあれ、それなりに地位を保てる理由がありそうだ。 見慣れた蝦蟹のイメージから考えると、この種の"頭"がしいて強調するほど目だっているとは思えないが、確かに幅広い。そこには板状の盾があるそうだから、蝦にとってはそれが画期的なのだろうか。 マ、潜って逃れようとする環形動物類を頭から一気に呑み込もうとする狩猟者は沢山いそうで、そやつらが喉というか口腔に詰まらせ慌てて吐き出す姿が目に浮かばない訳でもないが。 しかしながら、なんといっても一番注目されている特徴といえば、2〜4mm程度と小さくてシンプルな点だろう。これは大きさの話ではなく、見るからに構造が単純化しているから。 小生には退化という理屈とどう折り合いをつけるのか理解できぬが、生物は単純から複雑へと進化するというドグマで頭が埋まっていれば、コリャ化石時代の残存生物だろうということになる訳だ。 要するに、原始的甲殻類と見なし注目の対象になったのである。しかし、頭板もある底潜り種である上に、現生種(Lightiella, Sandersiella)が世界各地(日本、ペルー、南西アフリカ; 東太平洋, ニューカレドニア, メキシコ湾, 西大西洋 )で発見されていることを考えると、誰が考えてもピッタリの化石がどこかで見つかる筈である。ところが、現時点、百足蝦とは違って、対応する化石は同定されていない。・・・何時か必ず見つかるゾ、で納得するのは、ドグマ論者だけではなかろうか。(言うまでもないが、他の系統と同定されている化石がそれに当たるとの主張はいくらでもある。) 素人から見れば、この種が古代の姿を留めていると見るなら、甲殻類とは複眼が早くから発達していたということになりそう。そこらが、甲殻類〜昆虫の流れの奔流という気もしてくる。 一般人からしてみれば、蝦蟹類の一大特徴は異様な眼である。EWSか、はたまた餌探索ソナー的器官かはわからねど、眼の活用に血道をあげた種族としか思えないからである。昆虫になると、眼の柄よりは、早く逃げる算段に力が入った訳だが、その視覚認識の広さと速さは脊椎動物の及ぶところではない。 (蟹が懐くかはさておき、この眼で飼い主を眺めているのは明らか。結構よく観察しており、本能的行動だけでなく、頭脳プレーをしているようにも思えるのである。ただ、ヒトと違って、個体差が余りに大きいので、全体で見るとそうは言えなくなる。従って、そのような観察記録は無視される。・・・というのが小生の実感である。つまり、カンブリア大爆発のメルクマールは"目"の登場という説は筋が良いとなる。) しかしながら、何時喰われるかとビクビクしながら目を光らす暮らしが億劫になってしまった異端児がいてもおかしくはなかろう。天敵知らずの環境に知らず知らずに迷い込んだのが百足蝦君ではあるまいか。 一方、目立たないように、大勢の環形動物が棲息している状況のなかに紛れ込んで、喰われずにノウノウと生きる術を研究して磨き込んだのが頭蝦君とも思えるのだが。 ■頭[カシラ]蝦Cephalocarida ◆短脚Brachypoda -Hutchinsoniellidae ハッチンソニエラ ○Chiltonella ○Hampsonellus ○Hutchinsoniella (macracanta)…1953年発見 ○Lightiella ○Sandersiella・・・カシラエビ類 頭[カシラ]蝦(acuminata)@瀬戸内海燧灘, 天草諸島 (kikuchii)…2008年記載 → [PDF 図絵]M.Shimomura et al.:"DESCRIPTION OF A NEW SPECIES OF CEPHALOCARIDA, SANDERSIELLA KIKUCHII, AND REDESCRIPTION OF S. ACUMINATA SHIINO BASED UPON THE TYPE MATERIAL" J. CRUSTACEAN BIOLOGY 28, 2008 「動物」の目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2017 RandDManagement.com |