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2003.10.6
 
 


本物違い…

 豚肉、牛肉、鶏肉、の状況を見てきた。
  ・ 黒豚人気・・・
  ・ 短角牛肉の苦闘・・・
  ・ 地鶏だらけ・・・

 ここでわかることは、コモディティ市場沈滞現象である。安価な肉の魅力が薄れ始めたのは間違いない。
 といっても、経済性を考えれば、安価な商品から離れる訳にはいかないから、コモディティ市場は確固とした位置をしめている。この市場が萎み始めれば、コスト競争力が無い生産者の退出が進むことになろう。
 どのような施策を駆使しようと、変化を遅らせるだけで、この流れを止めることはできない。

 この状況に直面すれば、高コストな国内生産者は生き残り作戦を模索するしかない。
 そのため、今まで高級品とされてきた、「上品な」脂肪を過剰に含む商品へのシフトが進んでいる。このような商品を食べれば、濃厚感が味わえる。確かに違いがあるから、消費者もプレミアム価格を納得し易い。
 こうした差別化商品が、地物ブランドとして販売されている。この動きが目立つため、消費者の本物回帰現象が起きている、と見る人が多い。

 当然の主張に聞こえるが、正しい見方だろうか。

 第一の問題は、この流れが健康志向に逆行している点だ。消費者が脂肪リッチ品を「本物」と見なして、喜んで食べ続けるだろうか。

 第二の問題は、「本物」の中味である。店頭を見ていると「本物」化が進んでいる印象をうけるが、実態を考えると、疑問である。「本物」といっても生産者が考えてきた従来型仕様なのだ。この点を見逃すべきでない。
 地物ブランドを見ればわかるが、今まで日本で通用してきた高級品の特徴に近づようと努力した商品ばかりだ。
 消費者が考える「本物」とは、時代の流れに抗して、ほそぼそと生き延びてきた商品ではないだろうか。こちらが復活しているとは、言い難い。
 本物回帰と呼ぶべきではないと思う。

 こうした点を勘案すると、今の流れは長続きしないのではないか、と思えてくる。

 注目すべきは、次々と地物ブランドが登場しているのに、市場の活性化に繋がっていない点だ。消費者が、本当にメリットを感じれば、市場は膨張する筈だ。今のところ、そのような兆候は無い。
 ということは、おそらく、コモディティ品から地物ブランド品に「一寸」乗り換えて見ただけの可能性が高い。実際、偽者が横行するくらいだから、たいした違いは無いと見なされているかもしれない。
 これは、ジリ貧化の前兆現象かもしれない。

 消費者がコモディティに飽きてきた時は、飛躍のチャンスが転がっているものだが、この業界はチャンスを潰す方向に進んでいるように見える。

 消費者の琴線に触れればどの位のインパクトがあるかは、最近のヒット商品を見ればよくわかる。

 ・・・2003年8月のPOS販売高データによれば、5月発売の「ヘルシア緑茶」がペットボトル緑茶の1位に踊り出た。プレミアム価格にもかかわらず、2位商品の2.5倍の売上を実現したという。
 もちろん、安売合戦でシェアを奪い取ったのではない。既存市場への上乗せを実現したのである。
 「太りたくない女の子や、脂肪が気になるオジサン達の心をとらえた」のだろう。
 (http://www.nikkei.co.jp/needs/analysis/03/a030926.html)


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