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2007.6.5 |
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脱高炉技術の商用化を眺めて…2007年5月31日、POSCO浦項製鉄所でFINEX商用設備(年産150万トン)が稼動開始。記念式典には大統領も出席し、盛大に行なわれた。(1) 韓国はコンプレックス感が強いようで、世界初を内輪だけで大騒ぎする傾向が強いが、これは“国家の計”ということだから、一寸、ニュアンスが違うかも知れない。 環境・エネルギー問題が重要な時代、エネルギー高消費型の高炉が、これから先も主流の地位を維持できるとは限らない。そこで、脱高炉に進もうと宣言したようなものだからだ。 もちろん、この先50年いう長期スパンで考えた場合の話だが。 → 「脱溶鉱炉が始まる」 (2004年9月21日) と言っても、現状は、世界鉄鋼生産の過半が高炉で、残りがほぼ電炉という状況。電炉は、鉄のスクラップを電気で溶かす方式だから、補完的なものでしかない。鉄の生産といえば、高炉方式が常識なのである。 日本の鉄鋼業界は、この体制が続くと見ているようだ。新方式の技術は開発したが、不採択としたからである。韓国とは、全く逆の見方である。 高炉のどこが問題になりそうかは素人でもわかる。 日産1万トンといった巨大生産量を実現できるから、効率が良いというだけで、恐ろしくエネルギーを消費する仕組みだ。特に問題なのは、高炉というより、その前段処理。 鉄鉱石をペレット化するとともに、高品質な石炭(粘結炭)を焼結してコークスにする必要がある。加熱し、また冷ましたものを、高炉に投入するのだから、エネルギー効率から見たら最悪だ。その上、コークス炉の建設コストは、高炉並。 できれば、こんなやり方を避けたいと思うのは自然な態度である。 しかし、思ったより、脱高炉は簡単ではない。品質を安定して生産するのは結構難しいからだ。その上、転炉、熱間圧延、冷間圧延、といった下流の工程を揃えた一貫生産の仕組みを作ってしまったから、このシステムから抜け出すのは、そう簡単ではないのである。 だからと言って、日本はこの先も高炉の操業を続けることができるのだろうか。 どうも、この辺りの議論がよくわからない。国家百年の計まではいかないが、50年の計で考える人がいないからかも知れないが。 ともあれ、狭くて非効率的な工場配置のまま、この先50年生産を続けるつもりではなかろう。 → 「Fortune500を読む(21:金属)」 (2003年8月22日) 何故、そんなことを言うかといえば、設備更新の時期が迫ってきたからである。臨海高炉建設ラッシュは1965〜1975年。当然ながら、コークス炉も作られた筈である。 補修技術が進んでいるから、(2)まだまだ設備は使えるといっても限度があろう。それに、40年も経ては、コークス炉もボロボロになる。設備更新を行わなければ、高炉の生産キャパシティに見合ったコークスの供給ができなくなる。その設備投資時期がついに到来したのである。 それに備えて次世代型のコークス炉の技術(SCOPE21(3))は完成している。後は設備投資に踏み切るだけ。 しかし、この更新を進めるということは、国内高炉も設備更新するということ。 その方向でよいのか、これからの50年を踏まえ、じっくり考えるべきだろう。 自動車産業にしても、輸出の時代ではなかろう。しかも、中国も鉄鋼輸入国から輸出国への転換を図っていく。にもかかわらず、国内に環境負荷が大きい高炉をつくる路線が成り立つだろうか。 技術的見地から、鉄鋼生産は高炉で進むべしと言うなら、石炭/鉄鉱石産地のオーストラリアに生産拠点を移していくのが自然な感じがする。 それは国内雇用を大きく失うことになるが、雇用を守ることで、競争力を失ったのでは、たまらぬ。 どうあれ、国内高炉をどうするのか、早く決断するしかあるまい。 バブル崩壊後の対応から、時間との勝負との、教訓は学んだと思うのだが。 ・・・人員、設備、負債の過剰を削減し、重点顧客を建設業から製造業へと移し、付加価値製品の売上増を狙う必要があるのは自明。しかし、鉄鋼企業の損益分岐点が下がり始めたのは、なんと21世紀に入ってから。 もっとも、ようやく一安心という訳にはいかない。 今度は、粗鋼生産量が1億トンを越す超巨大企業Arcelor-Mittalが、3200〜3400万トンの2番手グループ(新日鉄、JFE、POSCO)で企業買収を狙っており、これにどう対処すべきか大騒ぎ。そんなことは前々からわかっている話で、できることは限られており、マスコミが騒ぎたいだけの話かも知れないが。 → 「超巨大鉄鋼企業の時代へ」 (2005年3月2日)、 「変貌する鉄鋼産業」 (2005年8月30日) それはそれとして、“50年の計”の方もお願いしたいものだ。 --- 参照 --- (1) http://www.posco.co.kr/homepage/docs/kr/news/posco/s91fnews003v.jsp?menuCatId=0911&idx=151012 (2) http://www0.nsc.co.jp/kenkyusho/contenthtml/s384/38421.pdf (3) http://www.jfe-21st-cf.or.jp/jpn/chapter_6/6d_1.html 技術力検証の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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