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■■■ 日本語の語彙を探る [2015.3.28] ■■■
身体の倭語[続々]

古事記が語る古代人になったつもりで、身体に関する倭語の由来を推定してみた。
もちろん、「青人草」の観点で。 [→最初] [→続]

ご存知のように、辞典には、様々な語源が記載してある。しかし、網羅的という訳でもなさそうだし、評価基準も明瞭とは言い難い。そのため、どうしても、仮説を適当にピックアップしただけに映る。
実際、ピンとこないものに出くわすからだが。
もちろん、古い文献や著名な方々の説も引用されてはいるが、もともと、それ自体が恣意的なものではないかという気がしないでもない。
従って、それらを整理する気にならないのである。それよりは、自分が古代人になったつもりで、どのように考えそうか想像した方が余程面白かろう。ズブの素人だと、トンデモない間違いも有りえるが、センスが良ければ、当たらずしも遠からずの結果を導き出している可能性もあるのでは。

と言うことで、続き。
ここからは、青人草発祥ではなさそうな語彙。それよりは新しい言葉と見てよいだろう。

そうなれば、イの一番は草には無い手足だ。そこに行く前に、すでに述べた概念で齟齬を来たし易い箇所を見て置く必要がある。
それは、「背 v.s. 腹」。
現代の発想だと、これは前方と後方になるのでは。しかし、青人草概念から言えば、前方概念は胸や腹ではなくあくまでもツラ(面=顔)。後方概念は背とは言い難い。この確認が第一歩。
つまらぬ話に聞こえるだろうが、植物では前方・後方概念は使えない。人間だからこその3次元概念と言える。もちろん、獣や魚も3次元的ではあるが、大きく違う点に注意する必要があろう。

魚の場合、背は上部であって後方ではない。後方は尾と言わざるを得まい。背が後方概念でないことは、これを見てもはっきりわかる。魚では上部が背で下部が腹なのだ。魚に前後という概念は適当ではなく、それに当たるのは、サキ(先)とその反対側の尾(オ)という概念。
獣も同じ。但し、尾だけでなく、シリ(尻)も加わる。つまり、"オ+シリ"である。
おそらく、人間のオシリとは"御"尻ではなく、獣用語の「尾尻」の転用。

現代の見方では、後から見れば、背中-腰-尻となるが、前から見ると、胸-腹-腰ということになる。腰の定義は結構曖昧であることがわかる。これらをまとめると「胴」だが、訓読みは無い。「腰」は訓読みだが、漢字の翻訳語である可能性は高い。
同様に、肩もウデ[腕]が胴体に付く部位だからなんらかの翻訳言葉だろう。
わき[腋]」も同じで、脇/側/傍としたのだろう。もとからの用語ではなかろう。

ついでに、この辺りの倭の感性を解釈しておこう・・・前向きの"先"「-き」と、後ろ向きの"尻"「-り」という言葉が倭語の基本概念。
頭の回転が速い方は、何を言わんとするか即刻おわかりだろう。そう、「ひ-[膝]」や「ひ-[肘]」とは「ひ」の「」と「」なのである。

それはそれとして、植物では語れない手・足の話に入ろう。

これらは、魂と言うか、「身」には直接的に繋がらないから、機能性語彙となる。"食う"から来た、「くち[口]」同様の扱いの筈。
従って、「[手]」は、"取る"という意味から来ていると考えてよいだろう。但し、"捕らえる"の意味もあると見るのは間違いだろう。もっぱら"採る"方で、どちらかと言えば食物保持イメージが強い、純粋に"手に取る"だけの意味と思われる。
手の発展語彙は「うで[腕]」であり、これは"上の手"。さらなる上部は"2の腕"となる。カイナとも呼ぶが意味はよくわからない。
つめ[爪]」も、同様に機能で考えると"摘まむ"から来たと見るのが妥当なところか。
しかし、なんとも不思議な言葉が「ゆび[指/趾]」。濁音だから、渡来語の可能性もあろうが、類似語が見当たらない。絶滅民族の言葉なのだろうか。

あし[足肢脚]」は、"葦原中国"の青人草からすれば、真っ直ぐに立ち上がる直線的な部位はアシ[葦/蘆/葭]と同じ言葉で呼ぶのは当たり前ではないか。
そうなると、「すね[脛脚]」は、"足根"と考えるのが妥当だろう。"向う"の脛はムコウズネとなる。ただ、古くはハギと呼ばれていたようだ。スネとは異なる発祥の言葉であるのは間違いなさそう。"脹らんでいる"脛を呼ぶ言葉であるフクラハギ[脹脛]が今もって使われているから、心情的に捨て去れない類の言語文化なのだろう。コムラ[小腿]でもよい訳で。

さて、上述した「ひざ[膝]」だが、外見が襞状ということのヒだと考えられよう。手の「ひじ[肘]」のヒも同じ。
他の間接部位は、フシ[節]と見たようである。・・・「くるぶし/つぶぶし[踝]」。しかしながら「きびす/くびす[踵]」は首と同じく窪みを現す言葉のような感じがする。もっとも、普通、カカトと呼ばれており、こちらの発祥語彙は想像がつかない。
一方、脛の上部は腿であるが、それは漢語と違うか。モモと訓がついているが、それは獣の筋肉部分を指し、青人草感覚から言えば「また[股]」と呼ぶ筈である。もちろん、葦こと、足が分かれる又の意味。

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