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■■■ ジャータカを知る [2019.6.16] ■■■
[98] 鳩槃荼
鳩槃荼Kumbhaṇḍaは興福寺西金堂に祀られていた八部衆像として知れれている。像高150cm程度で、口を開いて、頭髪を逆立てた武人姿。阿修羅を除けば、すべて戦闘神ではないかと思われるが、この像だけ特徴に欠ける。
夜叉の呼称例があるそうだが、どうして別名にするのかの理由はわかっていないようだ。
  →鳩槃荼像 (C)興福寺

胎蔵界曼荼羅最外院南方に馬頭人身の"胡坐座りしている"楽奏神が描かれており、これが鳩槃荼らしいが、確定的とは言い難い。名前は、冬瓜あるいは瓢箪の形状を意味するようで入れ物に水が入っているイメージなのだろう。それは陰嚢の暗喩と見られているらしく、下半身が膨れている姿とか。そんなところから精気を貪り吸い尽くす鬼とされているようだ。経典で姿が記載されている訳ではないから、当てにはならぬが。

ジャータカに登場してくる。
[#281]真中本
王妃は"真ん中midmost"マンゴーを渇望して寝込んでしまう。そこで、王は家族としている、大きく強く賢い若き鸚鵡に頼むことに。金の檻で金の皿に甘い穀物という贅沢な生活をさせてもらっている鸚鵡は、二つ返事で、神に割り当てられているヒマラヤのゴールデンマウンテンに捜しに行くことに。
どうにか見つけたその樹木は、7つの鉄製網で囲われており、何十億もの鳩槃荼というおふざけが好きな妖精が護っていた。結局、見つかってしまうが、盗みの理由を知り、それは「義」の行為と見なされて放免される。しかし、果実は、すべての実がマークされているので警備者は渡すことができぬと。
そのかわり、この地域に住む禁欲主義者の草庵に行くようにと。
毎日4個送ってもらっているその修行者は、そのうち2個を食べ、1個は鸚鵡に食べさせ、残りの1個を持って帰れとぶら下げてくれる。
そのお蔭で王妃は満足したが、だからと言って息子ができた訳ではない。

この話からすれば、果物に甘味"汁分"を与える精霊のような気もする。比較的乾燥環境の方がジューシーな果実になるから、降雨祈願のための舞踏的祭祀で長時間太鼓を叩き続ける集団のイメージが被っているのかも。まるっきりの想像でしかないが。
素直に考えれば、マンゴー樹の精霊ということで、夜叉の類でもあるということになろう。釈尊以前はマンゴーが菩提樹であると示唆する話かも。

尚、"真ん中"マンゴーAbbhatitara-Ambaは種を指すと思われるが、ヒマラヤ産がどんな地域を意味しているのかよくわからないし、以下に示すようにインド栽培種の数が余りに多い上に、どこまでが園芸種かわからないので全く想像がつかない。(アレキサンダー大王が北インドで出会ったとか。そこらが原産地かも。)輸入業者によればケサール種Kesarが有名らしいが、それは検疫の仕組みが完備していることが大きかろう。
アルフォンスAlphonso…"King of mangoes"
Amrapali、バダミBadami、Banganapalli…果実は最大、Bangalora or Kilimooku、Black and Rose@ケララ州、Bombay、チョウサChousa、Chinnarasamu、Cherukurasamu、Chok Anan…夏冬採果、ダシェリDasheri、Dudhiya Malda、Fazli、Fajri Kalan、Gir Kesar@グジャラート、Green Willard@スリランカ、Himayat or Imam Pasand、Himsagar、Kalepad、Kothapalli Kobbari or Kobbari Mamidi、Lakshmanbhog、ラングラLangra、Mallika、Malwana@スリランカ、Manohar、Muhammad Wala@パキスタン、Mulgoba、Neelam、Panakalu、Panchadharakalasa、Peddarasamu、Raspuri…南印度の一般種、Red Willard@スリランカ、サフェーダSafeda、Sammar Bahisht@パキスタン、Shan-e-Khuda@パキスタン、Swarnarekha、トタプリTotapuri


ついでながら、興福寺の八部衆像は、他にも「法華経」で記載[→Iされていない名称があるので並べておこう。・・・
  ○五部浄(象冠 身体の大部分は欠損)=天
  ○沙羯羅(頭上蛇)=竜
  ○鳩槃荼=夜叉
  ○乾闥婆(獅子冠)
  ○阿修羅(非武装)
  ○迦楼羅(鳥頭)
  ○緊那羅(一角三眼)
  ○畢婆迦羅(髭)=摩羅伽

畢婆迦羅の意味的には近付き難いということらしいが、摩羅伽マホーラガMahoraga[偉大なる蛇:大型錦蛇/蟒蛇]に対応しているとされるが、像形からは全く想定不可能。蛇であれば、コブラの竜と遠戚ということになろう。[→Iしかし、竜王として仲間に入れてはもらえないようだ。あくまでも、非コブラ蛇[→Iなのである。尤も、コブラ型の沙羯羅もない。コブラが存在しなかった地域はこの辺りは曖昧な可能性はありそうだが。
  ・難陀竜王…海洋の主 [頭上:竜9匹 右手:剣 左手:腰]
  ・跋難陀竜王…難陀の弟 [頭上:竜7匹竜 右手:剣 左手:空中]
  ・娑羯(伽)羅竜王…@天海 雨乞本尊
  ・和修吉竜王…@水中 九頭竜
  ・徳叉迦竜王…この竜が怒って人を見るとその人は死ぬ。
  ・阿那婆達多竜王…@雪山池 五柱堂
  ・摩那斯竜王…阿修羅が海水で喜見城を攻めた時その海水を戻した
  ・優鉢羅竜王…@青蓮華池

羅伽は非コブラの蛇首蛇面人身の形象が一般的らしい。蛇冠もあると。普通は、手の持物は笙と鼓棒(撥)で、腰に花鼓を結び付けている。奏楽の役割を担っているのだろうが、どのような役割で演奏するのか解説は見当たらなかった。廟内ではないかとの印象はあるが。但し、胎蔵界曼荼羅北辺の3尊は、右尊だけが両手で横笛を吹いているにすぎない。

----- 参考 -----
上記【龍王衆】は鳩摩羅什[訳]:「妙法蓮華経」《序品第一》。
【天衆】
  ・自在天子。大自在天子。与其眷属三万天子倶。娑婆世界主。…シヴァ
  ・梵天王。尸棄大梵。光明大梵等。与其眷属万二千天子倶。…梵天
【龍王衆】有八竜王。・・・、等。各与若干百千眷属倶。
【緊那羅衆】有四緊那羅王。・・・、各与若干百千眷属倶。
【乾闥婆衆】有四乾闥婆王。・・・、各与若干百千眷属倶。
【阿修羅衆】有四阿修羅王・・・、各与若干百千眷属倶。
【迦楼羅衆】有四迦楼羅王。・・・、各与若干百千眷属倶。
【人王衆】
  ・韋提希 子 阿闍世王
    与若干百千眷属倶。各礼仏足。退坐一面。
 爾時世尊。四衆囲遶。供養恭敬。尊重讃歎。・・・

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