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■■■ 今昔物語集の由来 [2020.10.7] ■■■
[附 31] 天武天皇無視
「今昔物語集」編纂者は天武天皇無視を決め込んでいる。📖本朝古代史[1]

そこで、全てが見えて来た。

簡単に言えば、この頃の4大寺の1つとされている川原寺に全く触れていない不自然さに気付いたから。それは、熊凝精舎のその後の歴史を紹介してくれたからでもある。📖→熊凝精舎

要するに、川原寺創建者は天武天皇であり、それは聖徳太子における四天王寺のようなもの、ということ。断じて、菩提供養寺なるものではない。
その廃寺跡は、聖徳太子出自地である橘寺(菩提寺)の北側に位置するので、観光目線で間違ってしまいがち。しかも川原という名称から、宮跡で菩提供養というストーリーが定着しているようだ。
しかし、この地は、百済川対岸が天武天皇の宮だから選ばれたに過ぎまい。大型水運土木事業が行われた結果、使える土地になったのであり、そこは湿地であり、田圃だった場所と思われる。

つまり、船で入寺し易い構造で建造されたということ。それに、おそらくは、南門より川側の東門が豪勢な造りだったろう。
そして、さらに重要なのは、川を下れば、元興寺(飛鳥寺)、大官大寺、百済大寺が川沿いに並ぶことになる点。川原寺とは、その総元締めの頂点に立つ別格の斬新な寺ということ。川を下って、海に出れば、そこには別宮として、難波宮が控えているという構成。
ちなみに、飛鳥川と他の河川が合流する要衝地帯が斑鳩である。

そして、なにより重要なのは、この構造は藤原宮構想の一部でもある点。極めて計画性に富んでいる。尚、この構想に組み込まれている他の有力寺院としては大官大寺と左右対称の地に創建された本薬師寺(天武天皇没後の698年完成)があげられよう。
川沿いに北から南へと上流に遡ればこんな状況。📖→[33]小治田宮
 加夜奈留美命神社/葛神社@明日香 栢森
 飛鳥坐神社@n.a.⇒[奉遷]明日香 飛鳥 神奈備 鳥形山
 飛鳥神社@明日香 真神ヶ原⇒[奉遷(元興寺)]平城京左京四条
 天の香具山@明日香 栢森・・・伽耶式土器出土
 小墾田寺
 ∴雷丘←遠飛鳥宮◆19, 小治田宮◆33/(35,36,37)/(47,48)
 豊浦寺
 甘樫丘
 飛鳥寺
 飛鳥宮←◆34/35/37/40
 川原寺
 橘寺 ミハ山@祝戸
 嶋宮←◆40-1
 石舞台

熊凝精舎の歴史ほど、本朝の風土をはっきり示すものはないと思う。正しいかは別として、上記の寺は、こう考えることもできるのである。・・・
 ○"蘇我氏"小墾田家→仏殿→仏像廃棄→小墾田寺
 ○"蘇我氏"向原家→焼滅→豊浦寺
 ○飛鳥衣縫造祖樹葉宅@真神原→"蘇我氏氏寺"飛鳥寺(法満寺)
  →法興寺(v.s. 法隆寺)
  →飛鳥大寺(通称:建初寺)
  →"本"元興寺(道昭開基)→"現存"飛鳥寺(安居院[飛鳥大仏])
  (移転)⇒"新"元興寺@平城京


さて、発掘調査によれば、川原寺は独特の伽藍構造だったとされるが、筆頭の地位にある寺にユニーク性があるのは当たり前。📖→東大寺伽藍から、斑鳩の里へ…
それに、おそらく、大型講堂があり、その周囲を最大級の収容人員の房が囲み、外周には強固な塀と堀が巡らされていたと思う。宗教施設ではあるものの、それは非常時の軍事施設にも転用可能な設計だった筈。
ともあれ、当時の本朝最大伽藍である可能性が高い。それは、外交使節を招き、一大法会を開催する、威信発揮の場でもあったからだ。礼服を身に着けた大勢の官僚が平伏する情景こそ、独裁者の求めるものだからだ。
さらには、発掘された中金堂の礎石も、この寺の出自を物語っている。寺伝では瑪瑙とされるそうだが、他に類例のない大理石とか。戦勝祈願の磐座地に産する独特な石灰岩のことだろう。進軍に当たっては、かなりの地を巡っているが、産地は調べればすぐわかる筈である。

聖徳太子の四天王寺と同じ戦勝誓願寺とはいえ、その目的は天武独裁政権樹立以上ではない。従って、遷都に伴なう移転は不要である。天武・持統尊崇は薬師寺で十分であり、敵もはっきりさせていない戦勝祈願寺をあえて支える必然性は薄かろう。しかも殲滅の供養も行っていないようだから、遅かれ早かれ、この寺は消える運命にあったと見てよさそう。しかし、そんな話をするのはタブーなのは自明。

それにしても、天武天皇の国際感覚は研ぎ澄まされている。大陸に対抗できる国家観を持っていたのは間違いなさそう。
従って、国内的にはほぼ軍事独裁体制を敷いたと言ってよかろう。
  大君は 神にし座せば 赤駒の 匍匐ふ田井戸を 都と成しつ
     大伴御行 [「万葉集」巻十九#4260]

だからこそ、「古事記」編纂を命じたのである。

「今昔物語集」編纂者は万葉集も読んでいたようだから、この頃の政治状況についてかなりわかっていたということでは。

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