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技術マネジメント論 [7]  2006年8月7日
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構想力の時代…

 前々回、“知恵を駆使して”ナンバー1の地位を確立することが、最重要課題になったとの話をした。
   →  技術マネジメント論 [5]  「ナンバー1を狙う時代」  (2006年8月8日)

 産業構造が安定したいた時代なら、同質の競争であるから、決まったやりかたで、実直に懸命に力を磨けばよかったが、新しい産業構造が登場するようになるとそうはいかなくなった訳である。

 そんな流れをを踏まえて、前回は、技術面の課題に焼きなおしてみた。まずは、“基礎力”という観点で考えてみた。直面している競争に勝ち抜くためになにが必要か、ということである。
   →  技術マネジメント論 [6]  「技術体系創出の時代」 (2006年8月17日)

 “基礎力”が弱ければ、零落間違いなしだから、この課題は重要だが、これだけでは済まない。
 “将来を目指して”動かなければ、縮小均衡に陥るからだ。

 産業構造が安定していた時は、将来伸びる産業もだいたいわかっていたし、誰が先を走りそうかも見えた。魅力ある分野に入っていけば、なんとかなるという感覚があった。  実際、その通りであった。これが、70年代。
 それが、読めなくなってきたのである。当然課題も大きく変わる。

 “将来を目指して”なにをすべきかは、時代毎に違うのである。

 ここが技術マネジメントで重要なところだと思う。

 70年代は、新分野参入のために、必要な新しい技術を準備することでほぼ足りたのである。簡単ではないが、ともかく次世代と目される要素技術をはっきりさせ、その技術に唾をつけ、社会の動きに乗って頑張るというマネジメントが行われていた。
 それで十分だったのである。

 しかし、80年代に入り、変化のスピードが速まったから、のんびり新要素技術開発などに手を染めていたのでは、投資回収もままならない状況になってしまった。
 先読みで、革新技術を早めに開発する必要がでてきた訳だ。例えば、現世代、次世代、次々世代の技術を担当する部隊をそれぞれ編成したりする必要がでてきた訳である。
 さらに、ブレークスルーが期待できそうな分野での研究にも手を染める企業が増えた。ともかく、技術で先を行けば、勝てるチャンスが増すという発想だった。

 ところが、これが裏目に出る。研究開発に注力していても、ビジネスに繋がらないものが続出したからだ。その上、既存事業も技術で優れていたからといって、収益に繋がるとは限らない状況になってきた。ビジネスの仕組みに弱点があると、そこをつかれて、ビジネス全体が不調になってしまうからである。
 優れた技術がありながら、赤字事業という状況では、とても戦えない。  従って、生き残るためには、強い技術に絞りこむしかなくなった。という訳である。自社の武器になる技術領域を定め、そこを強化して、勝てるビジネス構造を作る動きが始まった。

 当然ながら、飛躍のチャンスは、この武器となる技術領域で探すことになる。これが、上手な企業が競争力の飛躍的強化に成功することになる。

 それでは、21世紀はどう考えるべきか。

 これに対する答えは、自明だと思う。

 純技術だけで、「コア技術」の領域を定め、これを武器にするだけでは、発展性に乏しすぎるから、ここからの脱皮が必要といえよう。  現実には、「コア技術」候補を定めて、領域拡大を図る企業が多いから、見かけ上は発展するように見えるが、たいしたことはできない。今の「コア技術」での発想で、新領域を考えてしまいがちだからだ。脱皮は結構難しいのである。

 しかし、ちょっと考え方を変えると、たいして難しくないことに気付く。  「コア技術」領域で力を発揮できると言っても、その技術領域に係わる人達の知恵に依拠しているのだから、知恵を生み出す構造さえあれば、競争力強化は難しくない筈だからである。
 但し、その知恵が、技術課題解決でしか発揮できないのでは、勝てるとは思えまい。逆に、ビジネスとして、勝てる構造を案出できるなら、技術上で完勝できそうになくても、技術を生かして勝てるかもしれないではないか。  そんな知恵を生み出す組織をどう作るかが一番重要になってきた訳である。

 つまり、研究開発でいえば、技術そのものより、技術をどうビジネスに生かすのかという、構想力が重要になってきたということである。

 こんなことを言っても、ピンとこないかもしれないから例で述べよう。

 破られない暗号技術を開発して圧倒的な地位を極めるといった類の研究開発は終わりを告げたということに他ならない。
 強い暗号技術があるなら、それを用いてどのようなビジネスを展開し、どこで収益をあげるかという、構想が求められているのだ。ビジネス構想を欠くテーマは研究開発の俎上にはのらない時代なのである。

  →続く 技術マネジメント論 [8]  (2006年8月8日予定)


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