→INDEX ■■■ 「古事記」解釈 [2021.3.25] ■■■ [83] 鰐トーテム時代の追憶 古代史には珍説が多いが、それに魅せられる人が少なくないのも無理からぬこと。📖和邇は鰐で鮫ではない 「古事記」を読むと、そんな社会で生活していることを喚起させてくれる訳だ。 精神的自由を愛する人なら、それだけでも絶大な価値があろう。 「古事記」上巻神代篇では、"和邇[二字以音]"と記載されており、有名譚揃いなのでとりあげたものの、その意味するところは限定的なので、少し広げて考えてみたい。 📖神代篇は海人の縦横無尽の活躍記 📖大穴牟遅神と八上姫神の関係 ㊤ <裸菟・大穴牟遲神> 欺海和邇 <海神・天津日高之御子 虛空津日高> 和邇返らむとせし時、佩かせる紐小刀を解きて、 其の頸に著けて返したまひき。 故、其の一尋和邇は今に佐比持神と謂ふ。 <海神之女 豐玉毘賣命> 臨產時・・・八尋和邇 匍匐委蛇 この3譚を見れば、鰐トーテム族は性情は素朴で、女系神話が豊富そう。南島〜東アジア南方で、航海を得意として、広域に展開していた印象を与える。出雲にまで真珠や呪器貝を運んでいたと見るのが自然だ。(海人を十把一絡げで扱うべきでない。ワニ系はあくまでも島嶼域の遠洋航海系。目視航海族とは技量が異なるので注意したほうがよい。) ⛩海神神社@対馬峰木坂(御祭神:豊玉姫命) ⛩阿湏利神社@神門/出雲大津龍王山 (御祭神:豊玉比古神 豊玉比女神 玉依比女神 大己貴神) そのような、天孫の祖でもある一族だが、その後、どのような地位で天皇家を支えたのかについてはほとんどわからない。 ただ、和爾と称される氏族が、名前から見てその系譜に当たるのではないかと見られている。しかし、「古事記」がそれを示唆しているとは言いかねる。 と言うのは、天皇系譜が始まる中巻では、初代からしばらくは、ワニ系の話は皆無だからだ。奈良盆地では、先ずは土着勢力に依拠して権力基盤を確立ということか。5代の臣下系譜に繋げる記載で、One of themとして、多少音が近そうな牟邪臣が登場するがムザであり関係ありとするのは無理があろう。 ワニの名前はその後、"丸邇"と文字が変わって登場してくる。この辺りを整理したいが、検索すると、無方針で編纂された系譜だらけでどうにもならない。そこで適当に書いてみた。・・・ ㊥ ●[5]御眞津日子訶惠志泥命/孝昭天皇 └┬△余曽多本毘売命(尾張連先祖 奧津余曽の妹) ┼├○天押帯日子命(祖:春日臣, 大宅臣, 粟田臣, 小野臣, ┼││ 柿本臣、壹比韋臣, 大坂臣, 阿那臣, 多紀臣, 羽栗臣, 知多臣, ┼││ 牟邪臣[上総国武射/武社@山武芝山], ┼││ 都怒山臣, 伊勢 飯高君, 壹師君, 近淡海国造) ┼││ ┼│└(n.a.) ┼│┼├┐ ┼│┼△忍鹿比売命 ┼│┼│○n.a. ┼│┼│└┬△n.a. ┼│┼│┼├┐ ┼│┼│┼○日子國意祁都命…丸邇臣之祖 ┼│┼│┼│△意祁都比売命 ┼│┼│┼│└┬●[9]若倭根子日子大毘毘命/開化天皇 ┼│┼│┼│┼○日子坐王 ┼│┼│┼│ ┼│┼│┼└(n.a.) ┼│┼│┼┼├┐<[10]御眞木入日子印惠命/崇神天皇代> ┼│┼│┼┼○日子国夫玖命…丸邇臣之祖[日子國夫玖命] 丸邇坂地名譚 ┼│┼│┼┼┼△袁祁都比売 ┼│┼(n.a.) ┼│┼└┐ ┼└●[6]大倭帯日子国押人命/孝安天皇 ┼┼└┬△(忍鹿比売命) 10代でようやく統治機構が整って来たと見れば、丸邇と称する一族は、王権を掌握するため、天孫外縁者的に大活躍したということか。しかし、皇統争奪戦には距離を置いていたように映る。その手の話にはさっぱり登場してこないからだが。 鰐トーテム系とすれば、島嶼の小部族出自の可能性があり、そうなると、厳格な末子継承ルールがあるのが普通。長兄等は部族統治域外の他部族で迎えてもらう仕組みがある訳で、このお蔭で安定社会を築いていたとも言え、そのような文化の名残があったのかも。 さらに、特徴的なのは、"丸邇臣之祖"が定まっていない点。 分家とか、疎遠な縁戚が勢いを得て新たな祖先崇拝が生まれていることを示しているとしか思えない。勢力を統合して覇権を握るような体質ではないことを示唆しているのかも。 これはワニ的政治文化を意味している可能性も。小部族が自らの伝統に徹底的に拘る為、表面的にまとまって見えても、代表には実質的権力は無い体制。現代でも、山岳地帯や小さな島嶼で見られる形。 ただ、百濟國からの渡来帰化人も、一応文字は変えてはいるものの("丸⇒和")、同系扱いされている。南島系ではなく、東シナ海系だが、もともと雑多容認の体質なのだろう。 <[14]帶中日子天皇/仲哀天皇皇后息長帯日売命代> [遣者]難波根子建振熊命…丸邇臣之祖 <[15]品陀和氣命/應神天皇代> [妃]宮主矢河枝比売[丸邇の比布禮能意富美の娘] 【御製】・・・小楯ろかも 歯並みは 椎菱なす 櫟井の 和邇さの土を 初土は・・・ 百濟國賢人 和邇吉師…文首等祖 ⛩鰐神社/王仁神社@肥前国神埼志波屋 ⛩大仁八阪神社@難波/大淀大仁…伝墓地 ㊦ <[16]大雀命/仁コ天皇代>…作丸邇池[大和添上和邇@天理和爾] ⛩和爾下神社@天理櫟本宮山 ⛩和爾座赤坂比古神社@天理和爾 丸邇臣口子 <[18]水齒別命/反正天皇代> 丸邇之許碁登臣 <[21]大長谷若建命/雄略天皇代> 丸邇之佐都紀臣 <[24]意意祁命/仁賢天皇代> 丸邇日爪臣 【参考】 ⛩富士山本宮浅間大社@富士宮宮(社家:和爾部) ⛩和爾賀波神社+⛩鰐河神社@讃岐三木郡(御祭神:豊玉比売命)…丸部臣系 ⛩小野神社@近江志賀…伝和邇系祠官家 ⛩神田神社@近江大津真野(御祭神:彦國葺命 天足彦國押人命) 大春日臣@白毫寺…伝和邇本宗家 (C) 2021 RandDManagement.com →HOME |